2005/02/09 東京新宿「テアトルタイムズスクエア」で「ベルヴィル・ランデブー」を観た。

戦後まもないフランス。
内気で友達もできない孫のシャンピオンを不憫に思ったおばあちゃんは、テレビセットやピアノ、おもちゃの列車、ブルーノという名前の子犬など、色々なものを買い与えたが、シャンピオンにとって興味を示すものはなかった。
そんなある日のこと、おばあちゃんは、偶然シャンピオンが有名な自転車選手の写真をスクラップしていることを知り、早速三輪車をプレゼントすると、シャンピオンは今までに見たこともないようないきいきとした顔で、嬉しそうに三輪車に夢中になっていった。
そんなシャンピオンのために、おばあちゃんは来る日も来る日も厳しいトレーニングを見守り、いつしか世界最高峰の自転車競技の祭典、ツール・ド・フランスに参加するまでに育て上げた。

しかし、レースの最中に思わぬ事件が起こる。
首位グループから離されたシャンピオンと他の選手2名が、救護車になりすました謎のマフィアに誘拐されてしまったのだ・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督・脚本・絵コンテ・グラフィックデザイン:シルヴァン・ショメ

本作「ベルヴィル・ランデブー」は、日本やハリウッドのアニメーション映画とは比較できないほどの強烈な個性と独自の作家性を持つ、素晴らしいアニメーション作品に仕上がっている。

本作のアニメーション・キャラクターの絵柄からの印象は「101匹わんちゃん」や初期の短編映画時代のディズニー作品を彷彿とさせるのだが、物語の方向性はシニカルで無軌道。どこに連れて行ってくれるのかわからないスリリングな展開が楽しめる。

勿論、一般の観客が物語を楽しめる程度のストーリーは付いているものの、セリフはほとんど皆無。映像と音楽だけでストーリーやキャラクターの性格や情感を物語る手腕には驚くべきものがある。
ただ単に絵が動いているだけで楽しいと言う、ある意味のアニメーションの原点を見る思いがした。

そしてそれは、全くと言って良いほどセリフがない作品だと言うのに、全く飽きが来ないのも、シルヴァン・ショメの構築した卓越した世界観と、生き生きとし、確固たる個性や自我を持ったキャラクターたちによるところが大きいと思う。
しかし、それら独創的なキャラクターは何も喋らず、行動のみで自らの情感や性格を表現している訳なのだ。

しかも、それを俳優の演技ではなく、アニメーションでやってしまっているのだから、驚きを禁じえない。
喋らないのくせに素晴らしくも魅力的に見えてしまうキャラクターの演出力に脱帽なのだ。

また演出的には、作品として考えた場合、若干のもたつきはあるものの、キャラクターの些細な行動(例えば釣りのシークエンスのような)のマニアックな理由付けとそれを描写する演出コンセプトと発想が大変素晴らしい。
正にセンス・オブ・ワンダーなのだ。

そしてそのキャラクターの造形は、前述のようにディズニーの初期の短編映画に登場する擬人化された動物たちの造形の系統を汲むようなデザインで、動きもその時代の漫画映画的な動きが楽しめる。
と同時に、CGIでモデリングされた事物が、描きこまれた背景に融和した状態で動き回るさまも楽しめるのである。

また音楽も素晴らしい。
何がどう素晴らしいのか言葉で説明するのは難しいのだが、所謂ジプシー・ジャズのテイストが楽しくも悲しい。

とにかく本作「ベルヴィル・ランデブー」は、「ハウルの動く城」と「Mr.インクレディブル」に対抗しうる、フランスの素晴らしいアニメーション映画なのだ。

☆☆☆☆ (☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

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