「THE JUON / 呪怨」
2005年2月2日 映画
2005/01/31 東京京橋「映画美学校試写室」で「THE JUON / 呪怨」の試写を観た。
東京の国際大学で福祉を学ぶカレン(サラ・ミシェル・ゲラー)は、同じ大学に通う恋人ダグ(ジェイソン・ベア)とともに、目にするものすべてが新鮮な日本での暮らしを楽しんでいた。
ビジネスマンのマシュー(ウィリアム・メイポーザー)は妻のジェニファー(クレア・デュヴァル)、軽度の痴呆がある母親エマ(グレイス・ザブリスキー)を連れて日本の企業に赴任してくる。彼らは郊外に日本建築の一軒家を借りて新生活をスタートするが、ジェニファーは右も左もわからない日本での暮らしと慣れない介護に悩みを抱えている。
ある日、カレンは授業の一環としてマシューの家にエマの状態を看に行くことになる。たった一人で介護に行く事に不安を感じたが、英語ができる人間が他にいない、と言われ、しぶしぶ承諾して地図を片手に電車に乗り込む。道に迷いながらもなんとか郊外の一軒家に辿り着いたが、声をかけても誰の返事もない。カレンが恐る恐る中に入っていくと・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督:清水崇
出演:サラ・ミシェル・ゲラー(カレン)、ジェイソン・ベア(ダグ)、ウィリアム・メイポーザー(マシュー)、クレア・デュヴァル(ジェニファー)、ケイディー・ストリックランド(スーザン)、グレイス・ザブリスキー(エマ)、ビル・プルマン(ピーター)、ローザ・ブラシ(マリア)、テッド・ライミ(アレックス)、石橋凌(中川刑事)、真木よう子(洋子)、尾関優哉(佐伯俊雄)、藤貴子(佐伯伽椰子)、松山鷹志(佐伯剛雄)、松永博史(五十嵐刑事)、おかやまはじめ(不動産屋鈴木)、森下能幸(警備員)
わたしは所謂ジャパニーズ・ホラーと呼ばれる作品をあまり熱心には観ていない。なぜかと言うとジャパニーズ・ホラーは怖いからである。ホラー映画の肝は怖い事なのだから、怖いから観ない、と言うこと自体おかしな話なのだが、実際そういう状況なのだから仕方がないのだ。
わたしはそんな状況の中、ハリウッド産ジャパニーズ・ホラー「THE JUON / 呪怨」を観た訳である。
はっきり言って「THE JUON / 呪怨」は大変興味深いホラー映画に仕上がっていた。勿論怖いし面白いのだ。
とは言うものの、本作はジャパニーズ・ホラーの文法に見事に従っているため、本作をひとつの作品として考えると、「THE JUON / 呪怨」はジャパニーズ・ホラー作品と言うよりは、メタ・ジャパニーズ・ホラー作品と言う印象を受ける。
そんなジャパニーズ・ホラー文法に従った本作は、日本人観客の想像通りに物語が運び、本来ならば観客を戦慄させるべくツボを押さえて登場する俊雄(尾関優哉)や伽椰子(藤貴子)の期待通りの登場に笑いが起きることもしばしばである。
これは感覚的に歌舞伎の見得を楽しむ感覚に近いかも知れない。
とは言っても満を持して登場する俊雄や伽椰子には戦慄を覚えるし、はっきり言って怖い。
脚本は、セリフで全てを語ってしまうような陳腐なものではなく、行間が楽しめる、いわば脳内で補完が必要な楽しい脚本に仕上がっているし、本作の特徴にもなっている時制をほぐした構成は見事だと思う。
方向性は異なるが時制がジャンプする瞬間はスタンリー・キューブリックの「現金に体を張れ」を髣髴とさせるし、その時制がジャンプしたそれぞれのシークエンスの重なり具合はクエンティン・タランティーノの「ジャッキー・ブラウン」のシークエンスの重なり具合にも似ている。
またオープニング・クレジットも黒髪をフィーチャーしたおどろおどろしいものに仕上がっており、これから起こる出来事を暗喩する素晴らしいものだった。
キャストは先ず、主人公カレンを演じたサラ・ミシェル・ゲラーだが、従来からのティーンのアイドルというスタンスからの脱却を図る上でも本作は意味がある作品だったような気がする。
彼女はキュートでセクシーなアイドル女優からの脱却を図る時期をむかえていたのにも関わらず、最近は「スクービー・ドゥー」シリーズにしか出番がない状況だったのだが、本作「THE JUON / 呪怨」を経て、アイドル女優からの脱却を図り、新たなフィールドでの活躍を期待してしまう。
また、印象的なのは、軽度の痴呆があるエマを演じたグレイス・ザブリスキーである。ホラー映画においての痴呆の描き方としては本作のエマは大変素晴らしい。ある種人間の持つ恐怖心を痴呆を持って超越した素晴らしいキャラクターと言えるだろう。
表情や仕草が大変素晴らしいのだ。
あとは中川刑事役の石橋凌も含みがあって良いキャラクターを演じている。極限状態の中で、組織ではなく自らの意志で行動を起こす孤高な存在なのだ。
あとはなんと言っても尾関優哉(俊雄)と藤貴子(伽椰子)だろう。本作の成功はこの二人の俳優の存在感や表情に由る部分が多いだろう。
美術(斎藤岩男)は日本の文化を正確に海外に発信することに成功しているし、撮影( 山本英夫、ルーカス・エトリン)も陰鬱な日本の風土を見事に表現し、ハリウッド・ホラーと一味違う雰囲気を醸し出す事に成功している。
演出はさすがに「呪怨」シリーズを5本も製作している清水崇だけに全く危なげはなく、観客の期待通りの順当な演出が行われている。
しかしジャパニーズ・ホラーの文法を解する日本人にとっては、最早手垢のついた演出スタイルであることは否めないような印象を受けるが、その辺はワールド・ワイドな戦略と考え不問としたい。
とにかく、本作「THE JUON / 呪怨」は「ザ・リング」と異なり日本人監督がメガホンを取った、記憶すべきハリウッド産ジャパニーズ・ホラーだと言えるし、作品自体も評価できるホラーの傑作と言えるのだ。
この冬、ホラーを見るならば最高にオススメの一本なのだ。
☆☆☆★ (☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
■人気blogランキング
当blog「徒然雑草」は「人気blogランキング」に登録しています。
参考になったらクリック!
http://blog.with2.net/link.php/29604
東京の国際大学で福祉を学ぶカレン(サラ・ミシェル・ゲラー)は、同じ大学に通う恋人ダグ(ジェイソン・ベア)とともに、目にするものすべてが新鮮な日本での暮らしを楽しんでいた。
ビジネスマンのマシュー(ウィリアム・メイポーザー)は妻のジェニファー(クレア・デュヴァル)、軽度の痴呆がある母親エマ(グレイス・ザブリスキー)を連れて日本の企業に赴任してくる。彼らは郊外に日本建築の一軒家を借りて新生活をスタートするが、ジェニファーは右も左もわからない日本での暮らしと慣れない介護に悩みを抱えている。
ある日、カレンは授業の一環としてマシューの家にエマの状態を看に行くことになる。たった一人で介護に行く事に不安を感じたが、英語ができる人間が他にいない、と言われ、しぶしぶ承諾して地図を片手に電車に乗り込む。道に迷いながらもなんとか郊外の一軒家に辿り着いたが、声をかけても誰の返事もない。カレンが恐る恐る中に入っていくと・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督:清水崇
出演:サラ・ミシェル・ゲラー(カレン)、ジェイソン・ベア(ダグ)、ウィリアム・メイポーザー(マシュー)、クレア・デュヴァル(ジェニファー)、ケイディー・ストリックランド(スーザン)、グレイス・ザブリスキー(エマ)、ビル・プルマン(ピーター)、ローザ・ブラシ(マリア)、テッド・ライミ(アレックス)、石橋凌(中川刑事)、真木よう子(洋子)、尾関優哉(佐伯俊雄)、藤貴子(佐伯伽椰子)、松山鷹志(佐伯剛雄)、松永博史(五十嵐刑事)、おかやまはじめ(不動産屋鈴木)、森下能幸(警備員)
わたしは所謂ジャパニーズ・ホラーと呼ばれる作品をあまり熱心には観ていない。なぜかと言うとジャパニーズ・ホラーは怖いからである。ホラー映画の肝は怖い事なのだから、怖いから観ない、と言うこと自体おかしな話なのだが、実際そういう状況なのだから仕方がないのだ。
わたしはそんな状況の中、ハリウッド産ジャパニーズ・ホラー「THE JUON / 呪怨」を観た訳である。
はっきり言って「THE JUON / 呪怨」は大変興味深いホラー映画に仕上がっていた。勿論怖いし面白いのだ。
とは言うものの、本作はジャパニーズ・ホラーの文法に見事に従っているため、本作をひとつの作品として考えると、「THE JUON / 呪怨」はジャパニーズ・ホラー作品と言うよりは、メタ・ジャパニーズ・ホラー作品と言う印象を受ける。
そんなジャパニーズ・ホラー文法に従った本作は、日本人観客の想像通りに物語が運び、本来ならば観客を戦慄させるべくツボを押さえて登場する俊雄(尾関優哉)や伽椰子(藤貴子)の期待通りの登場に笑いが起きることもしばしばである。
これは感覚的に歌舞伎の見得を楽しむ感覚に近いかも知れない。
とは言っても満を持して登場する俊雄や伽椰子には戦慄を覚えるし、はっきり言って怖い。
脚本は、セリフで全てを語ってしまうような陳腐なものではなく、行間が楽しめる、いわば脳内で補完が必要な楽しい脚本に仕上がっているし、本作の特徴にもなっている時制をほぐした構成は見事だと思う。
方向性は異なるが時制がジャンプする瞬間はスタンリー・キューブリックの「現金に体を張れ」を髣髴とさせるし、その時制がジャンプしたそれぞれのシークエンスの重なり具合はクエンティン・タランティーノの「ジャッキー・ブラウン」のシークエンスの重なり具合にも似ている。
またオープニング・クレジットも黒髪をフィーチャーしたおどろおどろしいものに仕上がっており、これから起こる出来事を暗喩する素晴らしいものだった。
キャストは先ず、主人公カレンを演じたサラ・ミシェル・ゲラーだが、従来からのティーンのアイドルというスタンスからの脱却を図る上でも本作は意味がある作品だったような気がする。
彼女はキュートでセクシーなアイドル女優からの脱却を図る時期をむかえていたのにも関わらず、最近は「スクービー・ドゥー」シリーズにしか出番がない状況だったのだが、本作「THE JUON / 呪怨」を経て、アイドル女優からの脱却を図り、新たなフィールドでの活躍を期待してしまう。
また、印象的なのは、軽度の痴呆があるエマを演じたグレイス・ザブリスキーである。ホラー映画においての痴呆の描き方としては本作のエマは大変素晴らしい。ある種人間の持つ恐怖心を痴呆を持って超越した素晴らしいキャラクターと言えるだろう。
表情や仕草が大変素晴らしいのだ。
あとは中川刑事役の石橋凌も含みがあって良いキャラクターを演じている。極限状態の中で、組織ではなく自らの意志で行動を起こす孤高な存在なのだ。
あとはなんと言っても尾関優哉(俊雄)と藤貴子(伽椰子)だろう。本作の成功はこの二人の俳優の存在感や表情に由る部分が多いだろう。
美術(斎藤岩男)は日本の文化を正確に海外に発信することに成功しているし、撮影( 山本英夫、ルーカス・エトリン)も陰鬱な日本の風土を見事に表現し、ハリウッド・ホラーと一味違う雰囲気を醸し出す事に成功している。
演出はさすがに「呪怨」シリーズを5本も製作している清水崇だけに全く危なげはなく、観客の期待通りの順当な演出が行われている。
しかしジャパニーズ・ホラーの文法を解する日本人にとっては、最早手垢のついた演出スタイルであることは否めないような印象を受けるが、その辺はワールド・ワイドな戦略と考え不問としたい。
とにかく、本作「THE JUON / 呪怨」は「ザ・リング」と異なり日本人監督がメガホンを取った、記憶すべきハリウッド産ジャパニーズ・ホラーだと言えるし、作品自体も評価できるホラーの傑作と言えるのだ。
この冬、ホラーを見るならば最高にオススメの一本なのだ。
☆☆☆★ (☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
■人気blogランキング
当blog「徒然雑草」は「人気blogランキング」に登録しています。
参考になったらクリック!
http://blog.with2.net/link.php/29604
コメント