「ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方」
2005年1月28日 映画
2004/10/24 東京六本木「VIRGIN TOHO CINEMAS 六本木ヒルズ SCREEN 7」
「第17回東京国際映画祭」特別招待作品「ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方」を観た。
1950年代初頭のロンドン。BBCラジオのコメディ番組「グーン・ショー」は世相を風刺する過激なスタイルで人気を集めていた。番組を支える役者のピーター・セラーズ(ジェフリー・ラッシュ)は現状に満足せず映画界への進出を考えているが、オーディションでは「ハンサムじゃない」「ラジオに専念すべき」と言われ続ける毎日。私生活では妻アン(エミリー・ワトソン)と二人の子供、父ビル(ピーター・ヴォーン)、そしてピーターを溺愛する母ペグ(ミリアム・マーゴリーズ)とささやかに暮らしている。自分も舞台芸人だったペグは「チャンスは自分の手でもぎ取るのよ」と励まし、ピーターは老人に扮装して映画のオーディションに望むが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督:スティーヴン・ホプキンス
出演:ジェフリー・ラッシュ(ピーター・セラーズ)、シャーリーズ・セロン(ブリット・エクランド)、エミリー・ワトソン(アン・セラーズ)、ジョン・リスゴー(ブレイク・エドワーズ)、ミリアム・マーゴリーズ(ペグ・セラーズ)、スティーヴン・フライ(モーリス・ウッドラフ/占い師)、スタンリー・トゥッチ(スタンリー・キューブリック)、ピーター・ヴォーン(ビル・セラーズ)、ソニア・アキーノ(ソフィア・ローレン)
本作「ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方」は、イギリスの天才的喜劇俳優ピーター・セラーズの波乱に満ちた生涯を描いた伝記映画である。
先ずはピーター・セラーズを演じたジェフリー・ラッシュの芸達者振りに驚愕である。
先日レビューした「Ray/レイ」のジェイミー・フォックスにも驚かされたが、ジェフリー・ラッシュは確実にその上を行っているのではないだろうか。
と言うのも、ジェフリー・ラッシュはピーター・セラーズを演じるだけではなく、ピーター・セラーズが演じた映画史に残る様々な役柄をも演じているのである。
例えば「ピンクパンサー」シリーズのジャック・クルーゾー警部をはじめとして、「博士の異常な愛情」の3+1役(驚いた事に、本作には本編でスリム・ピケンズが演じたコング大佐の姿でも登場する)や、「007/カジノ・ロワイヤル」のイヴリン・トレンブル、「チャンス」のチャンスまで、様々な役柄をそれぞれの映画そっくりに演じきっている。
また、作品の演出上構成上の理由で、他のキャストが演じたいくつもの役柄の演技まで披露するサービス振りには、本当に驚かされる。それを含めると本作でジェフリー・ラッシュは都合15役以上の役柄を演じていてるのだ。
本作の演出上の構成は、
1.ピーター・セラーズ本人の家族との生活の描写
2.ピーター・セラーズが映画で演じた役柄の再現
3.ピーター・セラーズが演じた役柄と家族との生活の描写
4.家族らの心の声を家族らの姿で演じるジェフリー・ラッシュ
これらの部分の積み重ねによる。
3と4を描く事が本作の意欲的な部分だと理解は出来るのだが、この手法は映画の持つ魔法の力を減衰させ、また楽屋オチ的な印象をも観客に与えてしまうきらいが否定できない。
勿論、この部分がピーター・セラーズの俳優としての百面相振りを描きつつ、実際のところは「百の顔を持ってはいるが、実際は自分の顔がない男」を描写している訳だが、前述のような問題点が感じられ、手法としては釈然としない気分である。
脚本としては、邦題に「ピーター・セラーズの愛し方」と銘打っているにも関わらず、家庭をかえりみず芸に打ち込む人物としてピーター・セラーズが描かれている。
ピーター・セラーズの良い部分も悪い部分も平等に描く、と言うスタンスは評価できるのだが、邦題から得られる印象とベクトルが異なる内容には、釈然としない部分を感じる。
他のキャストとしては、話題性から言うと シャーリーズ・セロン(ブリット・エクランド)がなのだが、エミリー・ワトソン(アン・セラーズ)やジョン・リスゴー(ブレイク・エドワーズ)、ミリアム・マーゴリーズ(ペグ・セラーズ)等が良い味を出していた。
特に私生活ではエミリー・ワトソンとの、俳優としての生活ではジョン・リスゴーとのからみが、本作の根底をなしている関係で、エミリー・ワトソンにしろジョン・リスゴーにしろ、美味しい役柄だったのではないか、と思える。
またミリアム・マーゴリーズは観客に強烈な印象を与える事に成功している。
本作自体は、コンセプトはともかく、演出手法において意欲的な作品だとは思うのだが、その手法がコメディとシリアスなドラマとの微妙なバランスを保っているのだが、ともすれば悪ふざけが過ぎる印象を観客に与えてしまう可能性を否定できない。
とにかく、本作は天才喜劇俳優ピーター・セラーズが乗り移ったようなジェフリー・ラッシュの怪演が十二分に楽しめる上に、ピーター・セラーズの波乱に満ちた人生を追体験出来、更にかつてのピーター・セラーズ作品への郷愁と新たな観客層の獲得を約束できる素晴らしい作品に仕上がっている。
本作「ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方」は、この冬「Ray/レイ」と共に俳優の名人芸を楽しめる伝映画なのだ。
☆☆☆ (☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
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「第17回東京国際映画祭」特別招待作品「ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方」を観た。
1950年代初頭のロンドン。BBCラジオのコメディ番組「グーン・ショー」は世相を風刺する過激なスタイルで人気を集めていた。番組を支える役者のピーター・セラーズ(ジェフリー・ラッシュ)は現状に満足せず映画界への進出を考えているが、オーディションでは「ハンサムじゃない」「ラジオに専念すべき」と言われ続ける毎日。私生活では妻アン(エミリー・ワトソン)と二人の子供、父ビル(ピーター・ヴォーン)、そしてピーターを溺愛する母ペグ(ミリアム・マーゴリーズ)とささやかに暮らしている。自分も舞台芸人だったペグは「チャンスは自分の手でもぎ取るのよ」と励まし、ピーターは老人に扮装して映画のオーディションに望むが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
監督:スティーヴン・ホプキンス
出演:ジェフリー・ラッシュ(ピーター・セラーズ)、シャーリーズ・セロン(ブリット・エクランド)、エミリー・ワトソン(アン・セラーズ)、ジョン・リスゴー(ブレイク・エドワーズ)、ミリアム・マーゴリーズ(ペグ・セラーズ)、スティーヴン・フライ(モーリス・ウッドラフ/占い師)、スタンリー・トゥッチ(スタンリー・キューブリック)、ピーター・ヴォーン(ビル・セラーズ)、ソニア・アキーノ(ソフィア・ローレン)
本作「ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方」は、イギリスの天才的喜劇俳優ピーター・セラーズの波乱に満ちた生涯を描いた伝記映画である。
先ずはピーター・セラーズを演じたジェフリー・ラッシュの芸達者振りに驚愕である。
先日レビューした「Ray/レイ」のジェイミー・フォックスにも驚かされたが、ジェフリー・ラッシュは確実にその上を行っているのではないだろうか。
と言うのも、ジェフリー・ラッシュはピーター・セラーズを演じるだけではなく、ピーター・セラーズが演じた映画史に残る様々な役柄をも演じているのである。
例えば「ピンクパンサー」シリーズのジャック・クルーゾー警部をはじめとして、「博士の異常な愛情」の3+1役(驚いた事に、本作には本編でスリム・ピケンズが演じたコング大佐の姿でも登場する)や、「007/カジノ・ロワイヤル」のイヴリン・トレンブル、「チャンス」のチャンスまで、様々な役柄をそれぞれの映画そっくりに演じきっている。
また、作品の演出上構成上の理由で、他のキャストが演じたいくつもの役柄の演技まで披露するサービス振りには、本当に驚かされる。それを含めると本作でジェフリー・ラッシュは都合15役以上の役柄を演じていてるのだ。
本作の演出上の構成は、
1.ピーター・セラーズ本人の家族との生活の描写
2.ピーター・セラーズが映画で演じた役柄の再現
3.ピーター・セラーズが演じた役柄と家族との生活の描写
4.家族らの心の声を家族らの姿で演じるジェフリー・ラッシュ
これらの部分の積み重ねによる。
3と4を描く事が本作の意欲的な部分だと理解は出来るのだが、この手法は映画の持つ魔法の力を減衰させ、また楽屋オチ的な印象をも観客に与えてしまうきらいが否定できない。
勿論、この部分がピーター・セラーズの俳優としての百面相振りを描きつつ、実際のところは「百の顔を持ってはいるが、実際は自分の顔がない男」を描写している訳だが、前述のような問題点が感じられ、手法としては釈然としない気分である。
脚本としては、邦題に「ピーター・セラーズの愛し方」と銘打っているにも関わらず、家庭をかえりみず芸に打ち込む人物としてピーター・セラーズが描かれている。
ピーター・セラーズの良い部分も悪い部分も平等に描く、と言うスタンスは評価できるのだが、邦題から得られる印象とベクトルが異なる内容には、釈然としない部分を感じる。
他のキャストとしては、話題性から言うと シャーリーズ・セロン(ブリット・エクランド)がなのだが、エミリー・ワトソン(アン・セラーズ)やジョン・リスゴー(ブレイク・エドワーズ)、ミリアム・マーゴリーズ(ペグ・セラーズ)等が良い味を出していた。
特に私生活ではエミリー・ワトソンとの、俳優としての生活ではジョン・リスゴーとのからみが、本作の根底をなしている関係で、エミリー・ワトソンにしろジョン・リスゴーにしろ、美味しい役柄だったのではないか、と思える。
またミリアム・マーゴリーズは観客に強烈な印象を与える事に成功している。
本作自体は、コンセプトはともかく、演出手法において意欲的な作品だとは思うのだが、その手法がコメディとシリアスなドラマとの微妙なバランスを保っているのだが、ともすれば悪ふざけが過ぎる印象を観客に与えてしまう可能性を否定できない。
とにかく、本作は天才喜劇俳優ピーター・セラーズが乗り移ったようなジェフリー・ラッシュの怪演が十二分に楽しめる上に、ピーター・セラーズの波乱に満ちた人生を追体験出来、更にかつてのピーター・セラーズ作品への郷愁と新たな観客層の獲得を約束できる素晴らしい作品に仕上がっている。
本作「ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方」は、この冬「Ray/レイ」と共に俳優の名人芸を楽しめる伝映画なのだ。
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