2005/01/19 東京二重橋「東商ホール」で「ボーン・スプレマシー」の試写を観た。

「ボーン・アイデンティティー」事件から2年。

ベルリンでは、CIAの女性諜報員パメラ・ランディ(ジョアン・アレン)率いるチームが、組織内の不祥事の調査に当たり、チームはCIA内部の公金横領に関する資料を入手するため情報屋との取引に応じる事を決断する。
しかし、厳重な警戒にもかかわらず、何物かが取引現場を襲撃、交渉役のCIAエージェントと情報屋は殺され、取引材料である資料ともども多額の現金も奪われてしまう。犯人の手がかりは爆弾に残された指紋だけだった。

2年前の壮絶な死闘から生き延びたジェイソン・ボーン(マット・デイモン)は、その時に出会った恋人マリー(フランカ・ポテンテ)と人目を避けて暮らし、インドのゴアで新しい人生を歩んでいた。しかし、ボーンは未だ夢にまで出るほど過去の記憶に苛まれている。
そんなボーンをつけ狙う一人の男(カール・アーバン)。

同じ頃、CIA本部ではベルリンの事件で採取した指紋を照合し犯人を特定、そこにはボーンの名が浮上するのだが・・・・。
(オフィシャル・サイトより若干引用)

監督:ポール・グリーングラス
原作:ロバート・ラドラム 『殺戮のオデッセイ』(角川文庫刊)
脚本:トニー・ギルロイ、ブライアン・ヘルゲランド
キャスト:マット・デイモン(ジェイソン・ボーン)、フランカ・ポテンテ(マリー)、ジョアン・アレン(パメラ・ランディ)、ブライアン・コックス(アボット)、ジュリア・スタイルズ(ニッキー)、カール・アーバン(キリル)、クリス・クーパー(コンクリン/ノン・クレジット)
 
 
本作「ボーン・スプレマシー」は非常に良く出来たリアルなスパイ・アクションである。
スパイ・アクションと言えば勿論大御所「007」シリーズを筆頭に挙げることが出来るが、本作は「007」シリーズのような荒唐無稽で、ある意味ファンタジックなスパイ・アクションが展開する物語ではなく、わたし達の身の回りを舞台にした等身大のスパイが活躍すると言うリアリティ溢れる本格スパイ・アクションなのだ。

更に本作は、「007」シリーズのような世界を救うスパイ・アクションではなく、保身を図りつつ組織の腐敗を暴く、と言う、どこにでも転がっているようなリアルな題材が現代社会にマッチしているのではないか、と思えるのだ。

余談だが、現代の「007」シリーズは最早観客を吸引する魅力に乏しく、残念ながら観客離れが進み、シリーズとしても失速途上にあり、過去の栄光にすがりシリーズを継続している状況を見ると、最早パロディの素材としてしか機能しない状況に陥っている。

そして現在のスパイを取巻く環境は、ジョン・ル・カレやブライアン・フリーマントルが描いた「007」シリーズとは対極的で地味なスパイが活躍する物語と、トム・クランシー等が創出した新たなスパイ・アクションとして評価されるポリティカル・サスペンスという系統を産んでおり、「007」シリーズなくとも、楽しいスパイ・アクションを楽しめる環境となっている。

そんな環境において、本作「ボーン・スプレマシー」はスパイ映画のひとつのベクトルとして十二分に評価できる素晴らしい作品に仕上がっているのだ。

特にマット・デイモン演じるジェイソン・ボーンや、ジョアン・アレン演じるパメラ・ランディといった凄腕の諜報員たちのちょっとした行動と即断的判断が面白く、それらの行動は素晴らしいアクションにも繋がっているのだ。

しかし、ハリウッド特有のアクション・シークエンスになるとカメラが被写体に寄り、細かいカットと編集でごまかしつつ曖昧に格好良く見せる手法は健在で、特にクライマックス付近のトンネルでのカー・アクションは、何が起きているか観客には伝わらず、やっていることは凄いだけに非常に残念な気がする。
カメラはひきで、正々堂々とアクションを捉えて欲しいのだ。

キャストは、ジョアン・アレン(パメラ・ランディ役)が良かったのではないだろうか。本作の中では、一番の役得的役柄だと思う。CIAの凄腕エージェントと言うとジョディ・フォスターが念頭に浮かぶが、ジョディ・フォスター以上の魅力的なキャラクターの創出に成功している。

あとは、ノン・クレジットながら前作の悪役コンクリンを演じたクリス・クーパーを起用している点に好感が持てる。「スパイダーマン2」の際、クリフ・ロバートソンやウィレム・デフォーが登場した際にも言及したが、1作目で(例えば)死んだ(ような)キャラを2作目で同じキャストで新たに撮影するのは、簡単に出来そうなことなのだが、なかなか出来ないことなのだよ。特にハリウッドでは。

同様に、前作にも登場したジュリア・スタイルズや、ガブリエル・マン、ブライアン・コックス、フランカ・ポテンテの起用もシリーズ構成を考えた場合、非常に嬉しい。

マット・デイモンは頑張ってはいるのだが、まだまだ一枚看板で客を呼べるところまでは行っていないと個人的には思う。これからの活躍に期待である。

一方、アボットを演じたブライアン・コックスはいい味を出していた。こういったスパイものには、保身を図るキャラの登場は外せないと個人的には思うのだが、見事に期待に答えてくれている。「追いつめられて」のケヴィン・コスナーも吃驚なのだ。

脚本は若干気になるところがあるが、スパイ・アクションと考えた場合、概ねOKの楽しい脚本に仕上がっている。
トニー・ギルロイとブライアン・ヘルゲランドのどちらがメインなのかわからないが、折角ブライアン・ヘルゲランドが関わっているので、もう少し奥深いプロットが欲しかったと思う。

あと、特筆すべき点は、世界各国を回ったロケーション効果が素晴らしい。勿論個別のアクションは違うところで撮影しているのだろうが、要所要所で挿入される各国の特徴的建物や風景に感心する。
また、カー・アクションひとつ取っても、アメリカの広いアスファルト道路でのカー・アクションより、ヨーロッパの狭い石畳の道路を舞台としたカー・アクションの方が面白いしスリリングだと思う。

とにかく本作「ボーン・スプレマシー」は、「007」シリーズとはベクトルが異なる格好良いリアルなスパイ・アクションで、この冬、アクションを見たいのなら一番にオススメの作品なのだ。

☆☆☆☆ (☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
 
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