「銀のエンゼル」

2004年12月15日 映画
2004/12/15 東京半蔵門「TOKYO FMホール」で行われた「銀のエンゼル」の「新潟中越地震チャリティ試写会」に行ってきた。
上映前に行われた「募金のお願い」と「トーク・ショー」のゲストは浅田美代子と佐藤めぐみ。
 
 
北海道の田舎町。
国道沿いのコンビニエンスストア。
オーナーの北島昇一(小日向文世)は、妻で店長の佐和子(浅田美代子)に店を任せて、気ままな毎日を送っていた。だがそんなある日のこと、佐和子が突然の交通事故で入院。妻の代わりに深夜の勤務に就く羽目になった昇一の毎日はガラリと変わり始める。おまけに会話が途絶えがちな娘の由希(佐藤めぐみ)と向き合わなくてはならないのだ。

頼りになるがどこか訳ありの店員・佐藤(西島秀俊)。
配送の六月(ロッキー/大泉洋)は由希に恋していた。
コンピニの灯りを頼りにダンスの練習に励む高校生・中川(辻本祐樹)。
毎晩チョコボールを一箱買って帰るバツイチ子持ちの美女・明美(山口もえ)。
夜のコンビニに広がる未知の世界に翻弄される昇一だったが・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督:鈴井貴之
脚本:木田紀生
出演:小日向文世(北島昇一)、佐藤めぐみ(北島由希)、浅田美代子(北島佐和子)、西島秀俊(佐藤耕輔)、大泉洋(ロッキー/六月)、山口もえ(小林明美)、嶋田久作(白下巡査)、辻本祐樹(中川武)、安田顕(担任)、佐藤重幸(バナナの客)、森崎博之(スナックの若い男)、村上ショージ(杉山登)、輪島功一(小暮達也)、小橋亜樹(看護婦)、有安杏果(小林かおり)
 
 
本作「銀のエンゼル」は、陳腐な表現だが、心の琴線に触れる素晴らしくノスタルジックな作品である。

地元の高校卒業後の進路の悩み。
町を捨て都会に出て行くのか、それとも夢をあきらめてその町に埋没していくのか。
現代、フリーターやニートと呼ばれる人々が増加する時代に、そのフリーターやニートとして生きていく若者の悩みを本作は代弁している。

そして、町から出たは良いが、夢破れて町に帰ってくる人々、町に埋没せざるを得ない環境、親子の断絶、恋の悩み等々、他から見れば些細な問題かもしれないが、当人にとっては重大な問題を抱えた人々が、町のオアシス・コンビニエンスストアに集っている。そして彼らは、そのコンビニを起点として、悩み、そして解決策を見出していく訳なのだ。

先ず、現代社会の中、深夜のオアシスとして機能しているコンビニを舞台に、様々な人間模様を織りなすという、物語の根本となるプロットは良い発想だと思う。

脚本を見てみると、登場人物のセリフでは多くを語らない脚本になっているのだが、画面を通じて登場人物の過去と現在、そして未来を雄弁に描写する形態を持つ脚本に仕上がっている。

そして、脚本に驚かされたのは、物語に本当に必要な部分は描かれてはいるのだが、物語の焦点をぼかすと思われる周辺のエピソードの描写を著しく割愛しているのである。
そのため、本作は見方によっては、本筋ではない周辺のエピソードはあまりにも説明不足であり、周りの登場人物が一体何をしていたのかが想像力がない観客には、理解できない構造を持っているのだ。
しかし、その割愛された部分が逆に物語に素晴らしい余韻と観客が自由に遊ぶ空間(行間)を与えているのも事実なのである。

本作の割愛されたエヒソードは、想像という翼により、観客それぞれの人生経験から物語をつむぎだす事が可能な構造を持つ、ある意味余裕が感じられる作品に仕上がっている、とも取れるのである。

演出は北海道に似つかわしい、ゆったりとした時間が流れるものでありながらも、確実で素晴らしい演出がされている。
例えば、冒頭、深夜放送をバックに配送トラックが道路を走っているだけでも泣けてくるし、エピローグなど号泣ものである。

またロケーション効果や舞台設定も素晴らしく、由希(佐藤めぐみ)と中川(辻本祐樹)の会話シークエンスの舞台となる雪に覆われたテニスコートや、由希がスケッチをする鉄骨の骨組み、昇一(小日向文世)と杉山(村上ショージ)が話をするガソリンスタンドの屋根等、印象的な舞台設定が楽しい。

キャストは、小日向文世(北島昇一)、佐藤めぐみ(北島由希)、西島秀俊(佐藤耕輔)、大泉洋(ロッキー/六月)、山口もえ(小林明美)あたりが印象的であった。

先ず、小日向文世だが、彼の表情と微妙な仕草、自信なさげなセリフが素晴らしい。本作はおそらく「非・バランス」に次ぐ彼の代表作として記憶されるのではないか、と思うのだ。

また、西島秀俊は非常に良い味を出している。物語のオブザーバー敵存在にも取れ、観客と一体化する外部の視点を体現している。彼のキャラクターは、来年公開の「カナリア」で西島秀俊が演じたキャラクターと比較すると興味深い。

そして、大泉洋は想像通りと言うか期待通りのキャラクターであった。泣きに笑いに大活躍である。
冒頭の配送トラックのシークエンスは感動的であり、中盤の見せ場も楽しい。

更に山口もえだが、彼女が演じたキャラクターは、実は本作の大きなテーマを体現している非常に重要なものであり、彼女の生き様がひとつの田舎町の生活の例なのだ。

そして、佐藤めぐみだが、彼女は本作の主演とも言えるキャラクターとも言える高校三年生の葛藤を体現した複雑な役柄を見事に演じきっていた。将来に期待である。
 
ちよっと褒めすぎかも知れないが、関心と機会があるのなら、是非観ておいて欲しい作品である。
展開はスローモーで、娯楽大作が好きな人には退屈かもしれないが、北海道のローカル深夜番組「水曜どうでしょう」で大ブレイクしたコンビを見る、と言う話題性だけではない、何か(something)が確かに存在する映画なのだ。

=+=+=+=+=+=+=

余談だが、本作は自主制作映画的なキャスティングも楽しめる作品とも言えるのだ。
とある大学の演劇研究会出身の役者たちが何人か出演しているのだ。
更に余談だが、わたしは大学時代、彼らが所属していた演劇研究会の隣に部室があった映画研究会に属していた。

更に余談だが、北国ではコンビニのおにぎりをレンジで温めるのだが、この冬おにぎりを温める事が全国で流行るに違いないのだ。

=+=+=+=+=+=+=

☆☆☆ (☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

参考になったらクリック!(人気blogランキング)
http://blog.with2.net/link.php/29604

コメント

tkr

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索