2004/11/29 東京九段下「九段会館大ホール」で「僕の彼女を紹介します」の試写を観た。

本作「僕の彼女を紹介します」は、クァク・ジェヨン監督待望の新作で、大ヒット作「猟奇的な彼女」のヒロイン役チョン・ジヒョンとクァク・ジェヨン監督が再び組んだという、超期待の作品なのだ。
わたし的には「猟奇的な彼女」で感涙、次の「ラブストーリー」で号泣、クァク・ジェヨンの作風は、わたしのツボだったため、本作にも、号泣させてくれよと、多大なる期待を込めて「僕カノ」こと「僕の彼女を紹介します」の試写に臨んだ訳だ。
 
 
激しい思い込みと誰よりも強い正義感に燃えて、日夜奮闘を続ける熱血巡査ヨ・ギョンジン(チョン・ジヒョン)。しかし、彼女が自信満々で捕まえたのは、犯人逮捕に協力しようとしていた善意な市民、女子高で物理を教えるまじめな新米教師コ・ミョンウ(チャン・ヒョク)だった。

とんだ災難に遭ったミョンウだったが、後日、青少年の非行防止の見回りのため訪れた交番で、ふたたびギョンジンと遭遇する。見回り中、事件に巻き込まれ逃げ出そうとする彼をすばやく手錠で捕まえる彼女。ミョンウは、あらゆる事件や揉め事に首を突っ込むギョンジンのせいで、麻薬密売組織による銃撃戦にまで巻き込まれ、命がけの一夜を過ごす。

そんな出会いにもかかわらず、二人が恋に落ちるのに時間は要らなかった。そして、彼は心に決める。この勇敢すぎるほど勇敢で、無謀なまでにまっすぐな、愛すべき彼女を、たとえ何があっても守り抜こう、と。
しかし、そんな彼らを待ち受けていたのは・・・・。
(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督・脚本:クァク・ジェヨン
出演: チョン・ジヒョン(ヨ・ギョンジン巡査)、チャン・ヒョク(コ・ミョンウ)、キム・テウク、チャ・テヒョン
 
 
本作「僕の彼女を紹介します」のプロモーションは「泣ける」と言う事を前面に出しているのだが、わたし的には残念ながらあまり泣けなかった。前述のように、わたしは「猟奇的な彼女」で感涙、続く「ラブストーリー」で号泣してしまっているだけに、三作目の本作に当然の如く号泣を期待していたのだ。ついでに、本作の「号泣必須プロモーション」にも踊らされていた訳だ。

余談だが、泣きたいのなら前作「ラブストーリー」がオススメである。悲しいから泣く、かわいそうだから泣くのではなく、運命的なプロットの巧みさに泣くのである。

ところで、本作を観て再確認したのだが、監督のクァク・ジェヨンの嗜好なのか、アメリカを中心とした西洋文化への憧憬が色濃く出ているようだ。特にサントラの選曲について顕著だと思う。
日本映画にもアメリカ文化への憧れが見え隠れする作品はあるのだが、現代日本映画にはほとんどそういった描写が無い。そこから考えるとかつて日本文化がそうであったように、韓国文化は現在、進行形で西洋化しつつあるのではないかと、思ってしまう。

ところで本作の根本には「猟奇的な彼女」で描かれた、自己中心的な女性に男性が振り回されつつ恋に落ちる、というメインのプロットと、「ラブストーリー」で語られたような、過去のある出来事が現代に影響を与える伏線となっている運命的なプロットが導入されている。

また本作の特徴として、「猟奇的な彼女」のイメージや演出、カットが繰り返し登場し、同作内で描かれていた、ヒロインが語る「挿話」(今回は「ロミオとジュリエット」がモチーフ)も登場している。また本作のヒロインの部屋は「ラブストーリー」のヒロインの部屋と酷似しており、鳩が来るし風の演出も踏襲されている。
また「猟奇的な彼女」でヒロインが唯一心情を吐露するシーンで強烈な印象を与える「ごめん」というセリフも本作でも重要な意味を持っている。
更にラストのシークエンスでは、正に運命的で誰もが納得できる素晴らしい印象を観客に与えると同時に、素晴らしいファン・サービス精神が感じられる。
あのエンディングは、クァク・ジェヨン監督ファンにとっては予定調和的な唯一で最高のエンディングなのだ。

従って本作は、好意的に取ればクァク・ジェヨンの三作目にして早くも集大成的な作品を製作した技量を評価できるのだが、逆に考えると監督としての底が見えた感が否定できない。
これは「猟奇的な彼女」と「ラブストーリー」の脚本がトリッキーでいながら普遍的で素晴らしい脚本に仕上がっていたのだが、それらの脚本と比較すると本作の脚本が凡庸で独自性が足りない印象を受ける。

余談だが本編に挿入される「ロミオとジュリエット」をモチーフとした「挿話」を前提にすると冒頭の空撮は勿論「ウエスト・サイド物語」の引用だし、「雨に唄えば」の引用と思われるシーンもある。校庭でヒロインの周りを自動車が走るシーンでは「サウンド・オブ・ミュージック」のジュリー・アンドリュースを回るカメラ・ワークが再現されている。このようなクラシックな作品からの引用が興味深い。
これは前述の、西洋文化への憧憬ととらえるか、古き良き時代への回顧ととらえるのかわからないが、監督の嗜好が垣間見える瞬間だと言える。

キャストは何と言ってもチョン・ジヒョンの魅力爆発である。相手役のチャン・ヒョクははっきり言って、そこそこ演技が出来れば誰でも良かったのではないか、とさえ思えてしまう程、チョン・ジヒョンのためだけに、チョン・ジヒョンを魅力的に見せるためだけに製作されたような作品なのだ。

その観点からは、脚本はまあ及第点は与えられるのだが、やはり詰めが甘く、もっと号泣させて欲しかったのだ。

とにかく、本作「僕の彼女を紹介します」は号泣指数は前作「ラブストーリー」に及ばないが、チョン・ジヒョンとクァク・ジェヨン監督のファンならば最大限に楽しめる、監督の集大成的な作品であると同時に、ファンならずとも楽しめる素晴らしい作品に仕上がっている。この冬オススメのラブ・ストーリーなのだ。

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余談だけど、最近、韓国映画にしろ香港・中国映画にしろ、生きの良いアジア映画をハリウッド・メジャーが本気で配給しているのが気になる。
従来、アジア映画の日本国内配給は、ほとんど日本の配給会社が担当していたのだが、最近のアジア映画の隆盛を受けて、ハリウッド・メジャーがアジア映画の製作・配給に関わってきたのだ。
製作時点でハリウッド・メジャーによる全世界配給が決まっているような作品が増加すると、従来良質のアジア映画を買い付け、日本公開して来た日本の配給会社は、どんどん厳しい状況に追い込まれていくのではないか。
おそるべし貪欲なハリウッド・メジャーなのだ。

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更に余談だが、2004/12/01に東京有楽町「東京国際フォーラム」で、クァク・ジェヨン監督とチョン・ジヒョンの舞台挨拶付きの試写があるのだ。
チョン・ジヒョン好きのわたしとしては、何が何でも行きたい気持ちで一杯なのだがチケットが手に入らないのだ。
ついでに当日、崔洋一のトークショー付き「血と骨」のチケットを押さえてしまった。チョン・ジヒョンを思い浮かべながら、崔洋一と語るぞ。
 
 
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