2004/11/24 東京有楽町「東京国際フォーラムAホール」で「カンフーハッスル」の試写を観た。
舞台挨拶は監督・製作・脚本・主演のチャウ・シンチー(周星馳)。 
 
かつて香港に、世界中を沸かせたカンフー映画の一大ムーブメントがあった。
しかし、その魁であったブルース・リーは既に亡く、後継者たるジャッキー・チェンは年老いてしまい、今や世界に誇る香港カンフー映画の系譜は途絶えてしまったかに見えた。

そんな中、カンフー映画を貪欲に求める観客たちの欲求を満たすためか、かつての香港カンフー映画の系譜を継ぐ様々な作品が世に出てきた。それは「マトリックス」であり「キル・ビル」であり「マッハ!」であった。

切歯扼腕する香港映画界。
そんな中、香港カンフー映画の復権を果たすためか、一人の男が一本の映画を引っ提げ、満を持して立ち上がった。
その男の名は周星馳(チャウ・シンチー)。そしてその映画が「カンフーハッスル」なのだ。
 
 
舞台は文化革命前の中国。
強くなるために悪を目指す街の負け犬チンピラ、シン(星/チャウ・シンチー[周星馳])は、相棒(骨/ラム・チーチョン[林子聰])と共に、小さな悪事を働き糊口をしのいでいた。
ある日、シンと相棒は、貧民街「豚小屋砦」の散髪屋(半尻の床屋)で、冷酷非情なギャング団「斧頭会」の名を騙り、小金を巻き上げようとしたが、住民の団結力に負けてしまう。「斧頭会」の仲間を呼ぶぞと、脅しのつもりで投げた狼煙花火が「斧頭会」の副組長(ラム・シュー)の頭を直撃、「斧頭会」一行は狼煙花火を投げた奴を吊し上げるべく、貧民街「豚小屋砦」に乗り込んできた。

「斧頭会」の傍若無人の悪事に、業を煮やした男たちが立ち上がった。それは粥麺屋(油炸鬼/[董志華])、仕立屋(裁縫/[趙志凌])、人足(口古口厘強/[行宇])の三人の武術の達人だった。彼らは武術を極めた後、争いを嫌うが故に、在野に下り「豚小屋砦」で平和に暮らしていたのだ。

一時は、「斧頭会」を退けた「豚小屋砦」の達人たちだったが、面子を潰された「斧頭会」の組長、サム(チャン・クオックワン/[陳國坤])は、相談役(ティン・カイマン/[田啓文])等と共に、「豚小屋砦」の達人たちを倒すべく刺客を送り込む。

街の平穏な生活を願う、「豚小屋砦」の家主(女房東/[元秋])とその夫(房東/[元華])も否応無く戦いに巻き込まれていった。
かくして、「斧頭会」の面子と、「豚小屋砦」の平穏な生活をかけた戦いは、全面抗争の様相を呈してきた。
 
 
「マトリックス」「キル・ビル」「マッハ!」に対する香港の回答がここにある。「カンフーハッスル」は最高の血沸き肉踊る冒険活劇、最高の香港カンフー映画なのだ。

冒頭の「斧頭会」と「鰐革会」の抗争のシークエンスは、「キル・ビル」系のヴァイオレンス描写が続き、三人の達人と「斧頭会」との抗争は、「マッハ!」を髣髴とさせるフルコンタクト系のアクションが楽しめる。「斧頭会」の刺客との戦いはジャッキー・チェンのコミカルな道具仕立ての戦いから、「マトリックス」を超えるワイヤーアクションが炸裂する。

それと同時に、本作「カンフーハッスル」は、ブルース・リーの70年代、ジャッキー・チェンの80年代、ワイヤー・アクションが登場する90年代、CGIがアクションに導入される2000年代と、カンフー映画の歴史を一本で楽しめる構成にもなっているのだ。
アクション導演は、アクションの魔術師ユエン・ウーピン(袁和平)。脇を固めるのは、ジャッキー・チェンの盟友で、ブルース・リーの相手役も務めたサモ・ハン・キンポー。ブルース・リーのスタントマンを務めたユン・ワー等、70年代から現代までのカンフー映画の牽引者が集結している。

本作「カンフーハッスル」は、香港カンフー映画の文字通り集大成なのだ。
 
 
先ずは、コロムビア・ピクチャーズが配給を行っているのに驚いた。香港映画の日本国内の配給を日本の配給会社ではなく、ハリウッド・メジャーが行っていることに驚いたのである。しかし実際のところは、コロムビア映画が製作に名を連ねていたのである。ハリウッド資本で製作された香港映画、と言うスタンスなのだろうか。

また、映画のクオリティにも驚いた。セットにしろ、美術にしろ撮影にしろ、照明にしろ、編集にしろ、ハリウッド映画のクオリティを持っていた。最近のアジア映がでは「ブラザーフッド」のクオリティにも似た、品質を持っているのだ。

そして物語は、「少林サッカー」の系統を貫き、市井の人々が実は武術の達人である、と言う設定が素晴らしい。おじさんやおばさんが、強烈に強く、格好良いのだ。「少林サッカー」同様、おじさんやおばさんがが格好良い映画には、強烈に惹かれてしまうのだ。

気になるカンフー・シーンは、若干荒唐無稽な技が顔を出すが、はっきり言って素晴らしい。「斧頭会」と「豚小屋砦」の三人の達人の戦いのアクション・シークエンスには、あまりにも素晴らしいアクションに感涙モノなのだ。

また演出や構成も素晴らしく、例えば「斧頭会」の組長サム(チャン・クオックワン/[陳國坤])のダンス・シーンは、斧を持ち華麗に踊るメンバーが徐々に増えていくカットと、「斧頭会」が街の人々を苦しめているカットを交互に繋ぐ事により、「斧頭会」が街を支配し、構成員をどんどん増やしていく姿を見事に表現している。そんな演出の目白押しなのだ。

そして何と言っても本作は、周星馳(シャウ・シンチー)のブルース・リーやかつての香港カンフー映画に対する愛情がひしひしと感じられる素晴らしい作品に仕上がっているのだ。
その映画に対する愛が溢れるこの素晴らしい作品を是非観ていただきたいのだ。

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周星馳(シャウ・シンチー)の舞台挨拶中、「東京国際映画祭」同様、小川直也、グレート佐助らが舞台に乱入し、思いっきり観客の反感を買っていた。今回の試写はフジテレビが企画していたのだが、はっきり言って最低の演出だった。

何しろ、自分に人気があると勘違いしていた小川直也が最低だった。周星馳(シャウ・シンチー)を観に来た客の前で、周星馳(シャウ・シンチー)を罵倒する大馬鹿野郎だったのだ。勿論フジテレビにやらされているのだとは思うのだが、怒鳴れば怒鳴るほど、滑れば滑るほど、状況は悪くなっていった。
会場には5000人ほどの観客がいたのだが、確実に小川直也の株は暴落したと思われる。おそらく、あと少しで小川直也向けの「帰れ!コール」が起きそうな険悪なムードで、勿論演技かも知れないが、周星馳(シャウ・シンチー)も非常に不愉快な表情をしていた。

「ハッスル!ハッスル!」どころではないのだ。

こんな企画は日本のメディアの悪いところであり、これを機に「二度と来日しない」ことにならない事を切に願うのだ。

試写会等の映画のイベントや舞台挨拶には、スタッフとキャスト以外のゲストは不要なのだ。
 

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