2004/11/22 東京有楽町「朝日ホール」
「第5回東京フィルメックス」特別招待作品「柔道龍虎榜」を観た。
パブのマスターでバンドのギタリストも兼ねる司徒寶(ツェト/ルイス・クー)は、かつては偉大な柔道家だったが、ある時突然、柔道界から引退。現在はアルコールとギャンブルにまみれた生活を送っていた。
ある日、トニー(アーロン・ウォック)という名の若者がツェトのもとを訪れ、柔道の試合を申し込む。時を同じくして、歌手を目指す台湾出身の小夢(チェリー・イン)もパブに転がり込む。更に、ツェトの現役時代のライバル、阿岡(コン/レオン・カーファイ)が現われ、かつて行われなかった試合の決着をつけたいと申し出てくる。さらにツェトの師匠チェンが、自分の息子・阿正を助けて潰れかけている道場を立て直してほしいと頼んでくる。
かくしてツェトのパブは柔道家たちが技を競う場と化すのだが・・・・。
(「第5回東京フィルメックス」公式カタログよりほぼ引用)
監督:ジョニー・トー
出演:ルイス・クー(古天楽)、アーロン・クォック(郭富城)、チェリー・イン(應采兒)、レオン・カーファイ(梁家輝)
本作「柔道龍虎榜」は黒澤明に捧げられた作品であり、物語のモチーフはモロに黒澤明の「姿三四郎」。舞台背景を現代香港に置き換え、様々なオマージュを散りばめ、様々な柔道家の生き様を見事に描いている。
驚いたのはアーロン・クォックが「姿三四郎」の藤田進にそっくりなところである。
興味深いのは、主要登場人物全てが何故か柔道の達人として描かれているところである。この物語世界では誰もが柔道を習得しているのだ。そして本作は、そんな不思議な世界を舞台にした、(別に残酷描写や下品なトークは無いが)、言わば柔道版「キル・ビル」といった印象を受ける。
更に、ツェトの師匠チェンの息子・阿正が日本語で3度ほど歌う「姿三四郎」のテーマ(?)も、「キル・ビル」的な印象を強めている。また映像や演出の雰囲気は、黒澤明のそれや、かつての日活や東映のプログラム・ピクチャーの雰囲気を醸し出している。特にパブの雰囲気は「なんとかガイ」が出てきそうな気がする。
その辺りを考えると本作「柔道龍虎榜」は、日本人的には微妙な笑いに満ちた、突っ込み所満載の「映画秘宝」的な楽しみ方も出来る作品に仕上がっている、とも言えるのだ。
香港の高層ビル群をバックにススキの野原をつくっちゃうのも驚きなのだ。
とは言うものの、本作は決して「お笑い」だけに特化した作品ではなく、構図が一々格好良く、柔道シーンも迫力満点で、夜のシーンの撮影も非常に美しく、音場設計も力が入っており、作品としてのクオリティは高いものがある。特に夜のシーンが素晴らしい。凄く綺麗に撮れているのだ。
また、演出も素晴らしく、木の枝に引っかかっている赤い風船を小夢が逃がしてあげるシークエンスが大変素晴らしく、その赤い風船が何を暗喩しているかを考えると滂沱状況である。
小夢が赤い風船を取るのではなく、夜の空に逃がしてあげるところが素晴らしい。拍手ものなのだ。
更に、ツェトの師匠チェンと息子・阿正との絡みが、司徒寶(ツェト)と阿正に引き継がれるあたりもベタでお約束だが素晴らしい。また道場のチラシにこだわる阿正も泣かせるぜ。
また、「姿三四郎」の草履の鼻緒を挿げ替えるシークエンスに相当するのだが、2度登場する靴が脱げてしまうシークエンスも印象的であるし、柔道家たちが組み合い、相手の力量を測り、思わず笑みがこぼれてしまう所が素晴らしい。
そして何と言っても本作「柔道龍虎榜」は熱いのだ。
本作は、熱い柔道家たちが繰り広げる熱いドラマなのだ。
とにかく、日本人にはとっては微妙に面白い作品に仕上がっていると思うし、「キル・ビル」的「映画秘宝」的な突っ込み所満載の作品にも仕上がっている。それでいて熱くてホロリとさせられてしまう感動作品でもあるのだ。
機会があったら是非観て欲しい一本なのだ。
=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=
上映前に別室でジョニー・トーの公開インタビュー(40分位)が行われ、上映後にはQ&A(ティーチ・イン)が行われた。
今回のティーチ・インは、本編上映で充分温まった観客による好意的なものだった。
ジョニー・トーの話も非常に面白く、興味深いものだった。
☆☆☆★(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
■人気blogランキング
当blog「徒然雑草」は「人気blogランキング」に登録しています。
参考になったら、クリック!(現在のランキングがわかります)
http://blog.with2.net/link.php?29604
「第5回東京フィルメックス」特別招待作品「柔道龍虎榜」を観た。
パブのマスターでバンドのギタリストも兼ねる司徒寶(ツェト/ルイス・クー)は、かつては偉大な柔道家だったが、ある時突然、柔道界から引退。現在はアルコールとギャンブルにまみれた生活を送っていた。
ある日、トニー(アーロン・ウォック)という名の若者がツェトのもとを訪れ、柔道の試合を申し込む。時を同じくして、歌手を目指す台湾出身の小夢(チェリー・イン)もパブに転がり込む。更に、ツェトの現役時代のライバル、阿岡(コン/レオン・カーファイ)が現われ、かつて行われなかった試合の決着をつけたいと申し出てくる。さらにツェトの師匠チェンが、自分の息子・阿正を助けて潰れかけている道場を立て直してほしいと頼んでくる。
かくしてツェトのパブは柔道家たちが技を競う場と化すのだが・・・・。
(「第5回東京フィルメックス」公式カタログよりほぼ引用)
監督:ジョニー・トー
出演:ルイス・クー(古天楽)、アーロン・クォック(郭富城)、チェリー・イン(應采兒)、レオン・カーファイ(梁家輝)
本作「柔道龍虎榜」は黒澤明に捧げられた作品であり、物語のモチーフはモロに黒澤明の「姿三四郎」。舞台背景を現代香港に置き換え、様々なオマージュを散りばめ、様々な柔道家の生き様を見事に描いている。
驚いたのはアーロン・クォックが「姿三四郎」の藤田進にそっくりなところである。
興味深いのは、主要登場人物全てが何故か柔道の達人として描かれているところである。この物語世界では誰もが柔道を習得しているのだ。そして本作は、そんな不思議な世界を舞台にした、(別に残酷描写や下品なトークは無いが)、言わば柔道版「キル・ビル」といった印象を受ける。
更に、ツェトの師匠チェンの息子・阿正が日本語で3度ほど歌う「姿三四郎」のテーマ(?)も、「キル・ビル」的な印象を強めている。また映像や演出の雰囲気は、黒澤明のそれや、かつての日活や東映のプログラム・ピクチャーの雰囲気を醸し出している。特にパブの雰囲気は「なんとかガイ」が出てきそうな気がする。
その辺りを考えると本作「柔道龍虎榜」は、日本人的には微妙な笑いに満ちた、突っ込み所満載の「映画秘宝」的な楽しみ方も出来る作品に仕上がっている、とも言えるのだ。
香港の高層ビル群をバックにススキの野原をつくっちゃうのも驚きなのだ。
とは言うものの、本作は決して「お笑い」だけに特化した作品ではなく、構図が一々格好良く、柔道シーンも迫力満点で、夜のシーンの撮影も非常に美しく、音場設計も力が入っており、作品としてのクオリティは高いものがある。特に夜のシーンが素晴らしい。凄く綺麗に撮れているのだ。
また、演出も素晴らしく、木の枝に引っかかっている赤い風船を小夢が逃がしてあげるシークエンスが大変素晴らしく、その赤い風船が何を暗喩しているかを考えると滂沱状況である。
小夢が赤い風船を取るのではなく、夜の空に逃がしてあげるところが素晴らしい。拍手ものなのだ。
更に、ツェトの師匠チェンと息子・阿正との絡みが、司徒寶(ツェト)と阿正に引き継がれるあたりもベタでお約束だが素晴らしい。また道場のチラシにこだわる阿正も泣かせるぜ。
また、「姿三四郎」の草履の鼻緒を挿げ替えるシークエンスに相当するのだが、2度登場する靴が脱げてしまうシークエンスも印象的であるし、柔道家たちが組み合い、相手の力量を測り、思わず笑みがこぼれてしまう所が素晴らしい。
そして何と言っても本作「柔道龍虎榜」は熱いのだ。
本作は、熱い柔道家たちが繰り広げる熱いドラマなのだ。
とにかく、日本人にはとっては微妙に面白い作品に仕上がっていると思うし、「キル・ビル」的「映画秘宝」的な突っ込み所満載の作品にも仕上がっている。それでいて熱くてホロリとさせられてしまう感動作品でもあるのだ。
機会があったら是非観て欲しい一本なのだ。
=+=+=+=+=+=+=+=+=+=+=
上映前に別室でジョニー・トーの公開インタビュー(40分位)が行われ、上映後にはQ&A(ティーチ・イン)が行われた。
今回のティーチ・インは、本編上映で充分温まった観客による好意的なものだった。
ジョニー・トーの話も非常に面白く、興味深いものだった。
☆☆☆★(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
■人気blogランキング
当blog「徒然雑草」は「人気blogランキング」に登録しています。
参考になったら、クリック!(現在のランキングがわかります)
http://blog.with2.net/link.php?29604
コメント