「ブラインド・ホライズン」
2004年11月2日 映画2004/10/18 東京九段下「九段会館大ホール」で「ブラインド・ホライズン」の試写を観た。
メキシコ国境近くの砂漠。
ひとりの男(ヴァル・キルマー)が頭を撃たれて倒れているのが発見される。病院に運ばれたその男は意識を取り戻すが、完全に記憶を失っていた。
そこへ、男の婚約者クローイと名乗る女性(ネーヴ・キャンベル)が現われ、彼は国税庁に勤務するフランクだと告げる。
そんな中、かすかな記憶の断片が徐々にフランクの脳裏に甦り、彼はやがてその記憶の断片が、この町を舞台とした大統領暗殺計画の存在を指し示していることに気付いていく。
しかし、こんな小さな町に大統領が立ち寄る計画などなく、町の保安官ジャック(サム・シェパード)はフランクの妄想と一蹴、まるで取り合おうとしなかったのだが・・・・。
監督:マイケル・ハウスマン
出演:ヴァル・キルマー、ネーヴ・キャンベル、サム・シェパード、フェイ・ダナウェイ、ノーブル・ウィリンガム、エイミー・スマート、ギル・ベロウズ、ジャンカルロ・エスポジート、レオ・フィッツパトリック
本作「ブラインド・ホライズン」は、記憶を失った主人公が、実はなんらかの事件に絡んでいた。と言うロバート・ラドラムの小説「暗殺者」(映画「ボーン・アイデンティティー」)等を代表とする、比較的ありがちなプロットに、アメリカいや世界中にとっての大きな悲劇であり、そして政府の関与と言う大きな疑惑にも満ちているジョン・F・ケネディ大統領の暗殺事件を絡めたサスペンス作品に仕上がっている。
そしてそのサスペンス要素を高めているのは、勿論ヴァル・キルマーが演じる謎の男が、果たして「大統領を暗殺する側」だったのかそれとも「大統領暗殺を阻止する側」だったのか、そして彼は一体どうするのか、という点である。
さらに興味深いのは、ケネディ大統領暗殺事件に符合する様々な事象が、伏線なのか、暗喩なのか、ミス・デレクションなのかわからないまま着々と物語が進む点だろう。これは、実際にダラスで起きた大統領暗殺事件に対する観客の記憶を利用し、逆手に取る巧妙なプロットだと言える。
また映画的記憶と言えばデヴィッド・クローネンバーグの傑作「デッドゾーン」のラストをも髣髴とさせるのではないだろうか。
さてキャストは、何と言ってもサム・シェパードの起用だろう。
「ライト・スタッフ」で演じた実在の空軍パイロット、チャック・イェーガーをも髣髴とさせる、渋くて存在感のある保安官を好演している。抑えた演技ではあるが、下手をするとその存在感だけで、主演のヴァル・キルマーを食ってしまう勢いを感じる。
また往年の大女優フェイ・ダナウェイの起用も、役柄については説明できないが、映画に格を与えることに成功している。
また最近、従来の方向性からの脱却を図り、大人の女優として頭角を現しつつあるネーヴ・キャンベルは、今後のキャリアを考えると前作「バレエ・カンパニー」を含め、ひとつの転機を迎えていると思える。今後に期待の女優さんなのだ。
さて、主演のヴァル・キルマーだが、わたし的には彼の今までのキャリアをみると「個性が無い俳優」のような気がするのだ。しかしそれは逆説的に言うと「個性を無くせる俳優」「役柄に見事に入り込んでしまう俳優」「誰にでもなれる俳優」と言う印象を個人的に受けている。
例えば「ドアーズ」では、ジム・モリソンその人になってしまっているし、「バットマン・フォーエヴァー」では変な言い方だが、マイケル・キートンになってしまっている。
そして彼ヴァル・キルマーは、本作「ブラインド・ホライズン」において「記憶を喪失してしまった男」つまり「中身が無い男」を見事に演じている訳だ。
例えば前述の「ボーン・アイデンティティー」の中で記憶を失った男を演じたマット・デイモンは、「本当は全部知ってるくせに、知らん振りしてるんじゃねえの」という疑念のような印象を受けたのだが、本作のヴァル・キルマーからは「本当に何も知らないんじゃねえの」という印象を多くの観客は受けたのではないだろうか。
ところで、スタッフは監督にしろ脚本にしろ撮影にしろ残念ながら知らない人ばかりである。
強いて言えば脚本の一人ポール・ベンツが「ドアーズ」や「JFK」の編集助手をやっていたところが、本作のコンセプトやプロットを考え上で非常に興味深い。なるほど、と言った感じである。
結果的には、本作「ブラインド・ホライズン」は、観なければならない作品ではないし、多くの人にオススメできる作品でもない。勿論秀作ではあるが決して傑作ではないし、おそらく客はそんなに入らないだろう。
わたし的には、劇場で年間50本以上の映画を観るような人以外は、わざわざ劇場まで足を運ぶ必要が無い作品なのではないかと思う。
例えるならば、本作「ブラインド・ホライズン」は二本立て興行の二本目の作品で、一本目のキャッチーなビッグ・ネームの作品をたまたま観に行ったら、一本目は大した事無かったけど、二本目は結構面白かったね。という感じの作品なのだと思う。
とは言うものの、例によって毎年どんどん公開されている、その辺の娯楽大作なんかと比較すると、全然面白いんだけどね。
メキシコ国境近くの砂漠。
ひとりの男(ヴァル・キルマー)が頭を撃たれて倒れているのが発見される。病院に運ばれたその男は意識を取り戻すが、完全に記憶を失っていた。
そこへ、男の婚約者クローイと名乗る女性(ネーヴ・キャンベル)が現われ、彼は国税庁に勤務するフランクだと告げる。
そんな中、かすかな記憶の断片が徐々にフランクの脳裏に甦り、彼はやがてその記憶の断片が、この町を舞台とした大統領暗殺計画の存在を指し示していることに気付いていく。
しかし、こんな小さな町に大統領が立ち寄る計画などなく、町の保安官ジャック(サム・シェパード)はフランクの妄想と一蹴、まるで取り合おうとしなかったのだが・・・・。
監督:マイケル・ハウスマン
出演:ヴァル・キルマー、ネーヴ・キャンベル、サム・シェパード、フェイ・ダナウェイ、ノーブル・ウィリンガム、エイミー・スマート、ギル・ベロウズ、ジャンカルロ・エスポジート、レオ・フィッツパトリック
本作「ブラインド・ホライズン」は、記憶を失った主人公が、実はなんらかの事件に絡んでいた。と言うロバート・ラドラムの小説「暗殺者」(映画「ボーン・アイデンティティー」)等を代表とする、比較的ありがちなプロットに、アメリカいや世界中にとっての大きな悲劇であり、そして政府の関与と言う大きな疑惑にも満ちているジョン・F・ケネディ大統領の暗殺事件を絡めたサスペンス作品に仕上がっている。
そしてそのサスペンス要素を高めているのは、勿論ヴァル・キルマーが演じる謎の男が、果たして「大統領を暗殺する側」だったのかそれとも「大統領暗殺を阻止する側」だったのか、そして彼は一体どうするのか、という点である。
さらに興味深いのは、ケネディ大統領暗殺事件に符合する様々な事象が、伏線なのか、暗喩なのか、ミス・デレクションなのかわからないまま着々と物語が進む点だろう。これは、実際にダラスで起きた大統領暗殺事件に対する観客の記憶を利用し、逆手に取る巧妙なプロットだと言える。
また映画的記憶と言えばデヴィッド・クローネンバーグの傑作「デッドゾーン」のラストをも髣髴とさせるのではないだろうか。
さてキャストは、何と言ってもサム・シェパードの起用だろう。
「ライト・スタッフ」で演じた実在の空軍パイロット、チャック・イェーガーをも髣髴とさせる、渋くて存在感のある保安官を好演している。抑えた演技ではあるが、下手をするとその存在感だけで、主演のヴァル・キルマーを食ってしまう勢いを感じる。
また往年の大女優フェイ・ダナウェイの起用も、役柄については説明できないが、映画に格を与えることに成功している。
また最近、従来の方向性からの脱却を図り、大人の女優として頭角を現しつつあるネーヴ・キャンベルは、今後のキャリアを考えると前作「バレエ・カンパニー」を含め、ひとつの転機を迎えていると思える。今後に期待の女優さんなのだ。
さて、主演のヴァル・キルマーだが、わたし的には彼の今までのキャリアをみると「個性が無い俳優」のような気がするのだ。しかしそれは逆説的に言うと「個性を無くせる俳優」「役柄に見事に入り込んでしまう俳優」「誰にでもなれる俳優」と言う印象を個人的に受けている。
例えば「ドアーズ」では、ジム・モリソンその人になってしまっているし、「バットマン・フォーエヴァー」では変な言い方だが、マイケル・キートンになってしまっている。
そして彼ヴァル・キルマーは、本作「ブラインド・ホライズン」において「記憶を喪失してしまった男」つまり「中身が無い男」を見事に演じている訳だ。
例えば前述の「ボーン・アイデンティティー」の中で記憶を失った男を演じたマット・デイモンは、「本当は全部知ってるくせに、知らん振りしてるんじゃねえの」という疑念のような印象を受けたのだが、本作のヴァル・キルマーからは「本当に何も知らないんじゃねえの」という印象を多くの観客は受けたのではないだろうか。
ところで、スタッフは監督にしろ脚本にしろ撮影にしろ残念ながら知らない人ばかりである。
強いて言えば脚本の一人ポール・ベンツが「ドアーズ」や「JFK」の編集助手をやっていたところが、本作のコンセプトやプロットを考え上で非常に興味深い。なるほど、と言った感じである。
結果的には、本作「ブラインド・ホライズン」は、観なければならない作品ではないし、多くの人にオススメできる作品でもない。勿論秀作ではあるが決して傑作ではないし、おそらく客はそんなに入らないだろう。
わたし的には、劇場で年間50本以上の映画を観るような人以外は、わざわざ劇場まで足を運ぶ必要が無い作品なのではないかと思う。
例えるならば、本作「ブラインド・ホライズン」は二本立て興行の二本目の作品で、一本目のキャッチーなビッグ・ネームの作品をたまたま観に行ったら、一本目は大した事無かったけど、二本目は結構面白かったね。という感じの作品なのだと思う。
とは言うものの、例によって毎年どんどん公開されている、その辺の娯楽大作なんかと比較すると、全然面白いんだけどね。
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