2004/10/17 東京新宿「新宿ミラノ座」
 「東京国際ファンタスティック映画祭2004」で上映された「機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者」を観た。
 今回の上映は、総監督:富野由悠季、声の出演:池田秀一(クワトロ・バジーナ/シャア・アズナブル)、飛田展男(カミーユ・ビダン)、古谷徹(アムロ・レイ)を迎えたワールド・プレミアだった。

 本作「機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者」は今から20年前、1985年3月から翌年2月の間にテレビ放映された「機動戦士Zガンダム」の劇場版であり、2005年5月以降、順次公開される「機動戦士Zガンダム」全三部作の第一作目、第一部にあたる。

 まず、特筆すべき点は、本作のタイトル・ロゴの「A New Translation」が示すとおり、本作「機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者」は、旧「機動戦士Zガンダム」の新解釈版である、と言う事であろう。(新訳)

 この辺りは、上映前の富野由悠季の挨拶『お互いに年をとりましたね。制作当初に比べ自分がイヤになっているほど中身が悪くないと気づきました。みんなが思っている「Zガンダム」とはちょっと違うかもしれないが,新しい解釈を取り入れた「Zガンダム」をぜひ読みとって欲しい。』=『本作は、以前の「Zガンダム」の物語と全く違うが、内容は全く同じである。こんな物語の表現方法もある』的は発言は全くその通りで、本作は従来の「Zガンダム」の物語を踏襲しながらも、異なる印象を観客に与える事に成功しそうな作品に思えた。(第一部のみで考えるとその手法は見事に成功している)

 つまり本作「機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者」は、根底に流れる物語(事実/fact)は同じでも視点を変えると違った物語(真実/truth)が見えてくると言った、黒澤明の「羅生門」をはじめとする、所謂「藪の中」的な構造を持った作品のひとつだと言えるのではないだろうか。

 そして第一部である本作「機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者」の物語は、わたしの目には、旧テレビ・シリーズの主人公だったカミーユが脇役となり、その脇に退いたカミーユの視点でシャアとアムロの物語を見ている、というような構成の物語に見えた訳である。

 特にラストのシークエンスはその傾向が非常に強く、カミーユの少年の心と視点が、われわれ観客の少年の心と共に、凄まじいほどの憧憬の、そして羨望の念に駆られる幸せな瞬間であった。

 さて気になる作画のクオリティだが、いかんせん20年前の作画と最新の作画が共存する本作は、やはり若干の違和感の存在を否めない。特にカミーユの表情のギャップが大きな違和感を醸し出しているような印象を受けた。
 個人的には、出来る事ならば、本編全てを新作のカットで構成して欲しかったと思う。逆に言うと、新作カットにはそれほど力が入っているような印象を受けた、という訳だ。

 しかし、この時代、20年前の作品の作画を残したまま、新作劇場作品を制作する、ということは凄いことだな、と思う。
 この時代に、旧作のカットを流用した新作アニメーション作品が存在することに驚きの念を禁じえない。

 まあ、2005年5月公開の作品について現時点であれこれ言っても仕方がないので、細かい話は割愛するが、少なくても大興奮の素晴らしい作品に仕上がっているのは事実なのだが、果たして旧「Zガンダム」を知らない人が見ておもしろいかどうかは残念ながら疑問である。
 旧「Zガンダム」は、30分のプログラムが50本あった訳であるから、正味23分かける50本で、トータル19時間あまりの作品を6時間に仕上げる訳であるから、物語の展開は早く、いわゆるダイジェスト版的な印象は否めないのではないだろうか。

 尤も、前述のとおり「A New Translation」的な手法は充分機能していると思うのだが、それが全ての観客に理解されるかどうかは難しいのかな、と思うわけだ。

 余談だが「機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者」のレビューが多くのサイトや、ブログで公開されている。
 比較的多くのサイトやブログが、旧「機動戦士Zガンダム」と本作との相違点をあげつらう事に終始している。
 作品の枝葉ではなく、大元の物語を見ることを考えていただきたいと思うのだ。
 重要なのは、捨てられた野菜の葉や、魚の骨ではなく、器に盛られた料理を味わうことだと思うのだ。

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「機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者」チケットにまつわるお話

 「東京国際ファンタスティック映画祭2004」チケット販売日当日、わたしは池袋東武のチケットぴあに9:00頃から並んでいた。
 10:00の開店と同時にチケットの販売が始まり、わたしの計画では、おそらく一番人気の「機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者」を早めに抑えるつもりだったのだが、どうしても見たかった『激突!! 亜細亜颱風 韓流VS.タイ道』と『ナイトメアー・ビフォア・ファンタ アトラクション劇場1』を先に押さえてしまった。
 その微妙なタイムラグのため、「機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者」は完売、仕方がなく次点の「鉄人28号 インターナショナル・ヴァージョン」を押さえた。

 さて当日券だが、「機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者」の当日券は10:00から150枚だけ販売するという情報を得たわたしは、8:20頃に会場に到着するが、既に整理券の配布は済み、150枚のチケットの購入者は決定されていた。あきらめきりないわたしは、係の人と雑談をしていたところ、一人の女性が列から出て来た。
 体調が悪くなったので帰ります。という彼女の手には一枚の整理券が・・・・。
 たまたまそこにいたわたしは、その女性からその整理券を譲り受け、列の最後尾につく事になった。世の中不思議なことはあるものですね。
 
 さて、その女性だが、係の人が救急車を呼びましょうか、とかいいながら連れて行ってしまったので、きちんとしたお礼が出来なかったわたしは残念な思いでいっぱいなのだ。
 もし、このブログを見ていただけたなら、ご連絡をいただければ幸いです。

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 ところで、当日券の最後尾だったわたしは、予定通り立ち見だった。
 立ち見といっても、舞台挨拶や、本編を見る分にはぜんぜん問題はなかった。
 わたしが選んだ立ち見の場所はスクリーンに向かって右端の通路であったのだが、本編終了後、実はゲストの皆さんが座っていた席のすぐ近くであった。
 拍手に送られたゲスト4名は、すたすたと新宿歌舞伎町を歩いていく。立ち見だったわたしは何の気なしに、彼等を尾行したわけだ。
 歌舞伎町の街を平然と歩く富野由悠季、池田秀一、飛田展男、古谷徹の4人組。なんとも不思議な光景であった。

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