2004/10/01 ワーナーマイカルシネマズ板橋で「インファナル・アフェア 無間序曲」を観た。

 1991年、香港。
 尖沙咀(チムサアチョイ)に君臨する香港黒社会(マフィア)の大ボス、ンガイ・クワンが暗殺された。
 その混乱に乗じて一派から離反をもくろむ配下のボス4人。組織犯罪課(OCTB)のウォン警部(アンソニー・ウォン)と相棒のルク警部(フー・ジュン)は、抗争勃発に備えて厳戒体制を敷く。
 だが、新参者の5人目のボス、サム(エリック・ツァン)だけは静観を決め込む。因果応報を信じるサムは、時機を待つ気でいたのだ。そのために彼はラウ(エディソン・チャン)を警察に潜入させようと考えていた。ひそかに想いを寄せていたサムの妻マ
リー(カリーナ・ラウ)の口からそのことを告げられたラウは、
危険を覚悟で引き受ける。
 
 クワンの跡を継いだ次男ハウ(フランシス・ン)は、知的で物静かな外見の下に策略家と野心家の顔を隠していた。
 4人のボス各々の弱みを握った彼は、一夜にして新たな大ボスとしての地位を固めてしまう。
 一方ウォン警部は、警察学校の優等生でありながら、クワンの私生児であることが発覚して退学処分になったヤン(ショーン・ユー)の存在を知り、秘策を思いつく。その血筋を利用してヤンをハウの組織に潜入させるのだ。無謀とも言える作戦だが、ヤンにとっては警官になれる唯一のチャンスだった。

 そして・・・・
 (オフィシャル・サイトよりほぼ引用)

監督は、アンドリュー・ラウとアラン・マック。
出演は、エディソン・チャン(若き日のラウ)、ショーン・ユー(若き日のヤン)、アンソニー・ウォン(ウォン警部)、エリック・ツァン(サム)、カリーナ・ラウ(マリー)、フランシス・ン(ハウ)、チャップマン・トウ(キョン)、フー・ジュン(ルク)。

 本作「インファナル・アフェア 無間序曲」は、現代の香港が世界に誇る「インファナル・アフェア」の続編であり、時系列的には「インファナル・アフェア」三部作の第一作目に位置する作品である。
 前作「インファナル・アフェア」は聞くところによると、脚本に3年程かけたらしいが、本作「インファナル・アフェア 無間序曲」と2005年GWに日本公開予定の「インファナル・アフェア 終極無間」の脚本はおそらく突貫工事だったのではないだろうか。事実、主要プロット上に気になる点がいくつかあった。

 本作「インファナル・アフェア 無間序曲」は、前作「インファナル・アフェア」の大ヒットを受けて、製作・公開された作品である以上、当然の如く前作と比較されてしまうのは仕方がないだろう。
 前作「インファナル・アフェア」は単純で骨太な力強いプロットに、細かなプロットと伏線が見事に絡み合った素晴らしい脚本だったのだが、本作「インファナル・アフェア 無間序曲」の基本プロットは複雑でわかりづらく、新たなファン層を獲得するのは難しい仕上がりが否めない。
 時系列的に考えた場合、三部作の一作目に当たる作品に取っては、若干の問題点を抱えている、といえるのではないだろうか。

 それに加えて、若き日のラウ(エディソン・チャン)とヤン(ショーン・ユー)のキャラクターが似ているため、余計に物語がわかりづらい印象を観客に与えている。
 どうせなら、どちらかを血気盛んな感じのキャラクターにして、もうひとりは従来通りのクールな感じで演出し、本作か次回作「インファナル・アフェア 終極無間」の物語の途中で何か大きな出来事により、血気盛んなキャラクターがクールなキャラクターに転化する、と言ったプロットが必要だったのではないだろうか。

 また、プロット上の気になった点だが、一番凄いのは何と言っても、ハウ(フランシス・ン)とヤン(ショーン・ユー)とを血縁関係にしてしまった事だろう。
 この仰天プロットでは一般的に考えてヤンをどうやってサムの部下にするのは困難だろう。
 好意的に考えて、ヤンをどうやってサム(エリック・ツァン)の配下にするのかお手並み拝見なのだ。見事な着地を期待したい。
 この辺は「ギャング・オブ・ニューヨーク」のダイエル・デイ・ルイスとレオナルド・ディカプリオの関係と比較するとおもしろいかもしれない。

 また、前作ではヤンを兄貴と呼んでいた(わたしの記憶では)キョン(チャップマン・トウ)が、サムの現在の配下の中では古株で、新参者ヤンの兄貴分にあたるのではないかと思うのだが、その辺はどうなんだろう。何か立場が逆転するエピソードでもあるのだろうか。

 キャストについては、サム(エリック・ツァン)、ハウ(フランシス・ン)、ウォン警部(アンソニー・ウォン)に尽きるだろう。
 最初に印象的な動きをするのは、インテリ黒社会(マフィア/ヤクザ)を見事に演じたハウである。冒頭付近、電話を何本かかけるだけで、抗争勃発寸前の尖沙咀(チムサアチョイ)を掌握してしまう様は、格好良すぎなのだ。あとは潜入捜査官を処刑するシークエンスや、ヤンのケーブルを見つける所など、感涙モノだと言えよう。
 そして、ハウが観客に見せてくれるのは、黒社会の中心にいながらも家族を愛する一般の家庭人の姿なのである。その辺りはおそらくフランシス・フォード・コッポラの「ゴッド・ファーザー」への言及やリスペクトなのだと思うが、わたし的には非常に良い印象を受けた。
 
 そして何と言ってもサム(エリック・ツァン)である。もう格好良すぎの美味しいキャラクターなのだ。
 冒頭のウォン警部を前にしての食事のシークエンスも、前作を髣髴とさせる良いシークエンスだし、警察の正門を出た後のドタバタも楽しい。そして前作で描写された頭の良い大ボスになる片鱗を随所で見せてくれているのは、とっても楽しいのである。

 一方ウォン警部(アンソニー・ウォン)は微妙である。
 と言うのも、本作の物語の根幹に関わるある行動を行うのだが、その辺りが前作のキャラクターと、ちと乖離しているような印象を受ける。
 勿論、演技は素晴らしいし、ルク警部(フー・ジュン)とのコンビも楽しいのだが、三部作を考えた場合、キャラクター設定に若干無理があるような気がした。それとも次回作に大きな転換があるのかな。

 脚本は前述のように若干突貫工事的な印象が拭いきれず、少し残念だが、だからと言って物語がつまらない訳ではなく、物語世界にどっぷりと浸れる非常に楽しい脚本に仕上がっている。
 また、冒頭のラウ(エディソン・チャン)の前作同様の癖や、音楽やコンポへの言及あたりが前作ファンへの心憎いサービスになっている。

 ああ、早く「インファナル・アフェア 終極無間」が観たいのだ。

☆☆☆ (☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)

「インファナル・アフェア」
http://diarynote.jp/d/29346/20040115.html
「インファナル・アフェアIII/終極無間」
http://diarynote.jp/d/29346/20050407.html

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 余談だが、英題の「Infernal affairs」は「Internal affairs」(内務)のもじりで、直訳すると「地獄の事務」(ひどい仕事)と言う事になる。
 因みに、「Internal-affairs investigation」で「内務調査」という意味である。

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