2004/09/17 東京新宿 東京厚生年金会館で行われた「アラモ」の特別試写会に行ってきた。
トーク・ショーのゲストは演出家のテリー伊藤。
1836年春、テキサス、サン・アントニオ。
古い教会や修道院を十数門の大砲により要塞化したアラモ砦。
テキサス州議会との意見の相違からテキサス軍司令長官の位を剥奪されたサム・ヒューストン将軍(デニス・クエイド)は、サン・アントニオに赴く義勇兵のジム・ボウイ(ジェイソン・パトリック)に忠告する。
「アラモ砦には決して立て篭もるな。広く開けた戦場で戦わなければ負ける。アラモ砦を破壊して大砲を持ち帰ってくれ」
しかし今は亡きメキシコ人妻との思い出の地であるアラモ砦を破壊することはジム・ボウイには出来ない相談だった。
一方、アラモ砦の守備隊長の任に就いたウィリアム・トラヴィス中佐(パトリック・ウィルソン)もアラモ砦に到着するが、若すぎる上に規律に厳しい彼は、皆から冷笑で迎えられる。リーダーとして民兵の信頼を得ているのは明らかにジム・ボウイだった。
更に、伝説的な英雄デイヴィ・クロケット(ビリー・ボブ・ソーントン)の一団がテネシーからやって来た。伝説の英雄がテキサスに味方した事を喜ぶ兵士達。だが、クロケットには、かつてヒューストンから打ち明けられたテキサス共和国建設の夢に、政治的野心を持っていたのである。
敗退したばかりのメキシコ軍が冬山を越えて襲来することはない、との予想を裏切り、西のナポレオンを公言するサンタ・アナ将軍(エミリオ・エチェバリア)自ら率いるメキシコの大軍は、既に北進を開始し、アラモ砦に迫っていた。
監督にテキサス出身のジョン・リー・ハンコック。
出演は、デニス・クエイド、ビリー・ボブ・ソーントン、ジェイソン・パトリック、ジョルディ・モリャ、パトリック・ウィルソン、エミリオ・エチェバリア、レオン・リッピー、トム・デヴィッドソン、マーク・ブルカス、W・アール・ブラウン。
「アラモ」と言えば、ご承知のように強いアメリカの象徴であるジョン・ウェインが監督・製作・主演した「アラモ」(1960)があまりにも有名だが、911の同時多発テロ後のこの時期、テキサス出身のジョン・リー・ハンコックがメガホンを取り「アラモ」の物語を再映画化した訳である。
ところで、日本人にとって「アラモ」の物語は特に思い入れもないし、おそらくデイヴィ・クロケットが実在の人物だった事も知らない人が多いと思うのだが、アメリカ人に取って「アラモ」の物語は特別なもので、「リメンバー・パールハーバー」という言葉のモトネタである「リメンバー・ジ・アラモ」が生まれた出来事でもあり、日本で言うと例えば「忠臣蔵」や「白虎隊」のような位置にある物語だと思うのだ。
そんな中で、史実に基づいた「アラモ」を観た訳だが、私見では、娯楽作品としてはちと厳しいのではないか、客は入らないのではないか、という印象を受けた。
尤も本作「アラモ」は物語としては面白いし、個性的な俳優の演技合戦も楽しい。脚本も粋で、キャラクターの描写も的確である。美術や衣裳も素晴らしい仕事をしているし、戦闘シーンもそれなりに楽しめる。
しかし日本人にはこの物語を楽しむ背景が欠如しているのではないか、と思ったのだ。
また物語の性格上仕方がない事なのだが、女優がほとんど出てこないのである。
そして俳優は髭面で髪ボーボーでむさ苦しく、みんな砦で野宿しており、風呂など1ケ月くらいは併記で使っていない様子なのである。
個性的で演技派的な俳優を起用しているのであるが、地味で女性客の獲得にはいたらないのではないだろうか。
とは言うものの、俳優の皆さんの演技合戦は見ものである。
先ずは、独裁者サンタ・アナ将軍を演じたエミリオ・エチェバリアであるが、憎々しいキャラクターをこれでもか、と言う位憎々しげに演じており、強烈な印象を観客に与えている。
主演のサム・ヒューストン将軍を演じたデニス・クエイドは、髭面が「X−メン」のヒュー・ジャックマンにも見えてしまうのだが、最後に美味しいところを持っていってしまう良い役を演じている。
また、同じく主演のデイヴィ・クロケットを演じたビリー・ボブ・ソーントンも素晴らしかった。正に西部の英雄を実在感を込めて演じており、ここ1〜2年の作品の中では最高ではないだろうか。わたし的にはアライグマの帽子を期待していたのだが、それは果たされなかった。(ジョークのネタにはなっていたが)
余談だが、エンド・クレジットのカードで、デニス・クエイドとビリー・ボブ・ソーントンが同じカードで並んでクレジットされていたのには驚いた。
(デニス・クエイドが左で、ビリー・ボブ・ソーントンが右で、デニス・クエイドより若干上にクレジットされていた)
これは「タワーリング・インフェルノ」のスティーヴ・マックィーンとポール・ニューマンのクレジットを髣髴とさせていた。
ナイフ使いのジム・ボウイを演じたジェイソン・パトリックは良いのは良いのだが、寝ているシーンが多く残念である。ナイフの技をもっと見たかったのだ。
あとは何と言っても、ホワン・ゼギン役のジョルディ・モリャが最高である。おそらく観客の心を鷲掴みにしてしまう正義感溢れるキャラクター設定ではないだろうか。
そして、ウィリアム・トラヴィス中佐を演じたパトリック・ウィルソンだが、人望の無い司令官が成長し逞しくなっていく役柄を見事に演じている。今後に期待の俳優である。
また美術と衣裳は素晴らしい仕事をしており、世界観の構築に貢献していた。
撮影もそれに劣らず素晴らしい画を切り取っており、大西部の広さと厳しさを描写していた。
とにかく本作「アラモ」は、残念ながら客はあまり入らないと思うのだが、男臭い映画を見たければ、この秋オススメの一本である。
西部劇ファンにも勿論オススメなのだ。
=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=
余談だが、今回の特別試写会はウエスタン・ファッションで来場すると、何かプレゼントをもらえることになっていたため、ウエスタン調の人がところどころにいたのだが、前から5列目位に気合が入ったウエスタンファンがいた。
おそらく60歳前後だと思うその人は、ウエスタン・ファッションに身を固め、ガンベルトにモデルガンまでささっていたのである。
トーク・ショーのゲストは演出家のテリー伊藤。
1836年春、テキサス、サン・アントニオ。
古い教会や修道院を十数門の大砲により要塞化したアラモ砦。
テキサス州議会との意見の相違からテキサス軍司令長官の位を剥奪されたサム・ヒューストン将軍(デニス・クエイド)は、サン・アントニオに赴く義勇兵のジム・ボウイ(ジェイソン・パトリック)に忠告する。
「アラモ砦には決して立て篭もるな。広く開けた戦場で戦わなければ負ける。アラモ砦を破壊して大砲を持ち帰ってくれ」
しかし今は亡きメキシコ人妻との思い出の地であるアラモ砦を破壊することはジム・ボウイには出来ない相談だった。
一方、アラモ砦の守備隊長の任に就いたウィリアム・トラヴィス中佐(パトリック・ウィルソン)もアラモ砦に到着するが、若すぎる上に規律に厳しい彼は、皆から冷笑で迎えられる。リーダーとして民兵の信頼を得ているのは明らかにジム・ボウイだった。
更に、伝説的な英雄デイヴィ・クロケット(ビリー・ボブ・ソーントン)の一団がテネシーからやって来た。伝説の英雄がテキサスに味方した事を喜ぶ兵士達。だが、クロケットには、かつてヒューストンから打ち明けられたテキサス共和国建設の夢に、政治的野心を持っていたのである。
敗退したばかりのメキシコ軍が冬山を越えて襲来することはない、との予想を裏切り、西のナポレオンを公言するサンタ・アナ将軍(エミリオ・エチェバリア)自ら率いるメキシコの大軍は、既に北進を開始し、アラモ砦に迫っていた。
監督にテキサス出身のジョン・リー・ハンコック。
出演は、デニス・クエイド、ビリー・ボブ・ソーントン、ジェイソン・パトリック、ジョルディ・モリャ、パトリック・ウィルソン、エミリオ・エチェバリア、レオン・リッピー、トム・デヴィッドソン、マーク・ブルカス、W・アール・ブラウン。
「アラモ」と言えば、ご承知のように強いアメリカの象徴であるジョン・ウェインが監督・製作・主演した「アラモ」(1960)があまりにも有名だが、911の同時多発テロ後のこの時期、テキサス出身のジョン・リー・ハンコックがメガホンを取り「アラモ」の物語を再映画化した訳である。
ところで、日本人にとって「アラモ」の物語は特に思い入れもないし、おそらくデイヴィ・クロケットが実在の人物だった事も知らない人が多いと思うのだが、アメリカ人に取って「アラモ」の物語は特別なもので、「リメンバー・パールハーバー」という言葉のモトネタである「リメンバー・ジ・アラモ」が生まれた出来事でもあり、日本で言うと例えば「忠臣蔵」や「白虎隊」のような位置にある物語だと思うのだ。
そんな中で、史実に基づいた「アラモ」を観た訳だが、私見では、娯楽作品としてはちと厳しいのではないか、客は入らないのではないか、という印象を受けた。
尤も本作「アラモ」は物語としては面白いし、個性的な俳優の演技合戦も楽しい。脚本も粋で、キャラクターの描写も的確である。美術や衣裳も素晴らしい仕事をしているし、戦闘シーンもそれなりに楽しめる。
しかし日本人にはこの物語を楽しむ背景が欠如しているのではないか、と思ったのだ。
また物語の性格上仕方がない事なのだが、女優がほとんど出てこないのである。
そして俳優は髭面で髪ボーボーでむさ苦しく、みんな砦で野宿しており、風呂など1ケ月くらいは併記で使っていない様子なのである。
個性的で演技派的な俳優を起用しているのであるが、地味で女性客の獲得にはいたらないのではないだろうか。
とは言うものの、俳優の皆さんの演技合戦は見ものである。
先ずは、独裁者サンタ・アナ将軍を演じたエミリオ・エチェバリアであるが、憎々しいキャラクターをこれでもか、と言う位憎々しげに演じており、強烈な印象を観客に与えている。
主演のサム・ヒューストン将軍を演じたデニス・クエイドは、髭面が「X−メン」のヒュー・ジャックマンにも見えてしまうのだが、最後に美味しいところを持っていってしまう良い役を演じている。
また、同じく主演のデイヴィ・クロケットを演じたビリー・ボブ・ソーントンも素晴らしかった。正に西部の英雄を実在感を込めて演じており、ここ1〜2年の作品の中では最高ではないだろうか。わたし的にはアライグマの帽子を期待していたのだが、それは果たされなかった。(ジョークのネタにはなっていたが)
余談だが、エンド・クレジットのカードで、デニス・クエイドとビリー・ボブ・ソーントンが同じカードで並んでクレジットされていたのには驚いた。
(デニス・クエイドが左で、ビリー・ボブ・ソーントンが右で、デニス・クエイドより若干上にクレジットされていた)
これは「タワーリング・インフェルノ」のスティーヴ・マックィーンとポール・ニューマンのクレジットを髣髴とさせていた。
ナイフ使いのジム・ボウイを演じたジェイソン・パトリックは良いのは良いのだが、寝ているシーンが多く残念である。ナイフの技をもっと見たかったのだ。
あとは何と言っても、ホワン・ゼギン役のジョルディ・モリャが最高である。おそらく観客の心を鷲掴みにしてしまう正義感溢れるキャラクター設定ではないだろうか。
そして、ウィリアム・トラヴィス中佐を演じたパトリック・ウィルソンだが、人望の無い司令官が成長し逞しくなっていく役柄を見事に演じている。今後に期待の俳優である。
また美術と衣裳は素晴らしい仕事をしており、世界観の構築に貢献していた。
撮影もそれに劣らず素晴らしい画を切り取っており、大西部の広さと厳しさを描写していた。
とにかく本作「アラモ」は、残念ながら客はあまり入らないと思うのだが、男臭い映画を見たければ、この秋オススメの一本である。
西部劇ファンにも勿論オススメなのだ。
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余談だが、今回の特別試写会はウエスタン・ファッションで来場すると、何かプレゼントをもらえることになっていたため、ウエスタン調の人がところどころにいたのだが、前から5列目位に気合が入ったウエスタンファンがいた。
おそらく60歳前後だと思うその人は、ウエスタン・ファッションに身を固め、ガンベルトにモデルガンまでささっていたのである。
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