2004/09/11 東京有楽町「日劇3」で、M・ナイト・シャマランの新作「ヴィレッジ」を観た。
年間300本以上の映画を観るわたしだが、こんなに素敵な美しい映画を観たのは本当に久しぶりのことだった。
先ず、何と言っても脚本が美しい。
そして、脚本がただ単に美しいだけではなく、プロットと伏線が的確で完成度が驚異的に高いのだ。
この殺伐とした世の中で、こんな美しい素敵な脚本が書かれ、それに出資する人たちがいて、映画化する人たちがいる。そして、そんな映画に客が入り、その映画を愛する人たちがいる。
まだまだ人間も捨てたものでは無いな、と思う瞬間である。
そして本作「ヴィレッジ」は、サスペンス・ホラーなどではなく、最もピュアなラヴ・ストーリーなのである。
そして、そのピュアでイノセンスな物語が観客に与える感動は、観客を動かし、観客に浸透する何らかの力を持っているのだ。
このカタルシスは最近では「ビッグ・フィッシュ」にも似た印象を感じる。
1897年、ペンシルヴェニア州。
その村は深い森に囲まれ、まるで絶海の孤島のように外の世界から完全に隔絶されていた。
人口60人ほどのこの小さな村で、人々は互いに助け合いながら自給自足の生活を営んでいる。それはまるで家族のような強い絆で結ばれた、理想のユートピアだった。
だが、このユートピアを守るために、村人たちは不可解な「掟」を遵守することが義務付けられていた。
監督・脚本:M・ナイト・シャマラン
出演:ブライス・ダラス・ハワード(アイヴィー・エリベザス・ウォーカー)、ホアキン・フェニックス(ルシアス・ハント)、エイドリアン・ブロディ(ノア・パーシー)、ウィリアム・ハート(エドワード・ウォーカー)、シガーニー・ウィーヴァー(アリス・ハント)、ブレンダン・グリーソン(オーガスト・ニコルソン)
M・ナイト・シャマランの作品には「サプライズ」がある。
そして凡百の観客はその「サプライズ」の成否で、作品の評価を行う訳である。
おそらくこれは、配給会社の戦略的公告の弊害だと言えると思うのだが、多くの観客は、その「サプライズ」=「オチ」しか見ていないのである。これは悲しむべきことだと思うのだ。
本作「ヴィレッジ」は、その「サプライズ」の根底にある部分を理解して欲しいし、何故彼等が「サプライズ」的な行動を取ることになったのか、その理由をしっかりと考えて欲しいのだ。
その上で、アイヴィーが取った行動を、その行動の目的を、そしてその行動を取ることになる単純なそれでいて説得力のある理由を、ピュアでイノセンスな行動原理を理解して欲しいのだ。
そして、あの最後のセリフ、エンド・クレジットが始まる寸前のカットを見て欲しいのだ。
そして感じて欲しい、あぁ、何と素晴らしいピュアでイノセンスな「ラヴ・ストーリー」だったなぁ、と。
それでいて、普遍的で童話的な素敵な物語だったなぁ、と。
前述の理由から、本作「ヴィレッジ」は、賛否両論、下手をすると多くの観客からは酷評される可能性が高いかも知れないが、サスペンス・ホラーではなく、ラヴ・ストーリーだと思って本作を楽しんで欲しいのだ。
=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=
キャストについてだが、先ずウィリアム・ハート(エドワード・ウォーカー)は「A.I.」のホビー教授に役柄がダブるが、論理的な村のリーダー役と、感情的な娘の親という複数の側面を持ったキャラクターを好演している。出番は少ないが、強烈な個性を観客に残している。
特に、過去のセリフをナレーション的に語るシークエンスが感動的である。
ホアキン・フェニックス(ルシアス・ハント)は、村の進歩的な考えを担う、木訥な好人物役を好演している。
ピュアで不器用な恋愛表現が、おかしくも悲しい。
そして、その不器用な恋愛表現は、勿論ウィリアム・ハートの論理的ではありながら不器用な恋愛表現と対比されている。
これは、逆にブライス・ダラス・ハワード(アイヴィー・エリベザス・ウォーカー)と、シガーニー・ウィーヴァー(アリス・ハント)が分析する彼等の恋愛表現も面白いのだ。
そして、ブライス・ダラス・ハワード(アイヴィー・エリベザス・ウォーカー)だが、彼女のピュアな一途さが、この映画の全てである、と言っても良いだろう。
不幸な出来事の中で、まっすぐに行動する彼女の潔さが美しくも格好良い。彼女の一途でピュアな行動が、われわれ観客にピュアな灯りを点すのだ。余談だがハワード一家の一員として今後に期待の女優なのだ。
そして、エイドリアン・ブロディ(ノア・パーシー)も素晴らしい印象を観客に与えている。前作である「戦場のピアニスト」とは異なる意欲的な役を好演している、と言えるだろう。あらたな側面の開花と言うことであろうか、今後の活躍に期待なのだ。
あと特筆すべき点は、見事な世界観を構築している美術だろう。 「サプライズ」の伏線となる様々な小さな目配せも楽しいのだ。
目配せといえば、M・ナイト・シャマランが演じた人物の組織の名称も見逃してはいけない点だろう。
☆☆☆☆(☆=1.0 ★=0.5 MAX=5.0)
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年間300本以上の映画を観るわたしだが、こんなに素敵な美しい映画を観たのは本当に久しぶりのことだった。
先ず、何と言っても脚本が美しい。
そして、脚本がただ単に美しいだけではなく、プロットと伏線が的確で完成度が驚異的に高いのだ。
この殺伐とした世の中で、こんな美しい素敵な脚本が書かれ、それに出資する人たちがいて、映画化する人たちがいる。そして、そんな映画に客が入り、その映画を愛する人たちがいる。
まだまだ人間も捨てたものでは無いな、と思う瞬間である。
そして本作「ヴィレッジ」は、サスペンス・ホラーなどではなく、最もピュアなラヴ・ストーリーなのである。
そして、そのピュアでイノセンスな物語が観客に与える感動は、観客を動かし、観客に浸透する何らかの力を持っているのだ。
このカタルシスは最近では「ビッグ・フィッシュ」にも似た印象を感じる。
1897年、ペンシルヴェニア州。
その村は深い森に囲まれ、まるで絶海の孤島のように外の世界から完全に隔絶されていた。
人口60人ほどのこの小さな村で、人々は互いに助け合いながら自給自足の生活を営んでいる。それはまるで家族のような強い絆で結ばれた、理想のユートピアだった。
だが、このユートピアを守るために、村人たちは不可解な「掟」を遵守することが義務付けられていた。
監督・脚本:M・ナイト・シャマラン
出演:ブライス・ダラス・ハワード(アイヴィー・エリベザス・ウォーカー)、ホアキン・フェニックス(ルシアス・ハント)、エイドリアン・ブロディ(ノア・パーシー)、ウィリアム・ハート(エドワード・ウォーカー)、シガーニー・ウィーヴァー(アリス・ハント)、ブレンダン・グリーソン(オーガスト・ニコルソン)
M・ナイト・シャマランの作品には「サプライズ」がある。
そして凡百の観客はその「サプライズ」の成否で、作品の評価を行う訳である。
おそらくこれは、配給会社の戦略的公告の弊害だと言えると思うのだが、多くの観客は、その「サプライズ」=「オチ」しか見ていないのである。これは悲しむべきことだと思うのだ。
本作「ヴィレッジ」は、その「サプライズ」の根底にある部分を理解して欲しいし、何故彼等が「サプライズ」的な行動を取ることになったのか、その理由をしっかりと考えて欲しいのだ。
その上で、アイヴィーが取った行動を、その行動の目的を、そしてその行動を取ることになる単純なそれでいて説得力のある理由を、ピュアでイノセンスな行動原理を理解して欲しいのだ。
そして、あの最後のセリフ、エンド・クレジットが始まる寸前のカットを見て欲しいのだ。
そして感じて欲しい、あぁ、何と素晴らしいピュアでイノセンスな「ラヴ・ストーリー」だったなぁ、と。
それでいて、普遍的で童話的な素敵な物語だったなぁ、と。
前述の理由から、本作「ヴィレッジ」は、賛否両論、下手をすると多くの観客からは酷評される可能性が高いかも知れないが、サスペンス・ホラーではなく、ラヴ・ストーリーだと思って本作を楽しんで欲しいのだ。
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キャストについてだが、先ずウィリアム・ハート(エドワード・ウォーカー)は「A.I.」のホビー教授に役柄がダブるが、論理的な村のリーダー役と、感情的な娘の親という複数の側面を持ったキャラクターを好演している。出番は少ないが、強烈な個性を観客に残している。
特に、過去のセリフをナレーション的に語るシークエンスが感動的である。
ホアキン・フェニックス(ルシアス・ハント)は、村の進歩的な考えを担う、木訥な好人物役を好演している。
ピュアで不器用な恋愛表現が、おかしくも悲しい。
そして、その不器用な恋愛表現は、勿論ウィリアム・ハートの論理的ではありながら不器用な恋愛表現と対比されている。
これは、逆にブライス・ダラス・ハワード(アイヴィー・エリベザス・ウォーカー)と、シガーニー・ウィーヴァー(アリス・ハント)が分析する彼等の恋愛表現も面白いのだ。
そして、ブライス・ダラス・ハワード(アイヴィー・エリベザス・ウォーカー)だが、彼女のピュアな一途さが、この映画の全てである、と言っても良いだろう。
不幸な出来事の中で、まっすぐに行動する彼女の潔さが美しくも格好良い。彼女の一途でピュアな行動が、われわれ観客にピュアな灯りを点すのだ。余談だがハワード一家の一員として今後に期待の女優なのだ。
そして、エイドリアン・ブロディ(ノア・パーシー)も素晴らしい印象を観客に与えている。前作である「戦場のピアニスト」とは異なる意欲的な役を好演している、と言えるだろう。あらたな側面の開花と言うことであろうか、今後の活躍に期待なのだ。
あと特筆すべき点は、見事な世界観を構築している美術だろう。 「サプライズ」の伏線となる様々な小さな目配せも楽しいのだ。
目配せといえば、M・ナイト・シャマランが演じた人物の組織の名称も見逃してはいけない点だろう。
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