2004年9月1日に発売になった「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」の初版は290万部だそうである。(上下巻なので実際は290万セット)

8月1日付の日本の人口は「人口推計月報」によると1億2,758万人、そのうち10〜59歳までの人口は8,250万人である。
仮に「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」の購買層が10〜59歳までだとすると、10〜59歳の人100人に3.5セット分の「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」が存在することになる。

因みに2002年10月に出版された「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」(初版230万部/初版6刷までで350万部に達した)は、半年後の2003年3月の時点で、35〜70万部の捌ききれない不良在庫が全国の書店にあったらしい。
 
 
ところで、書籍や雑誌の販売は一般的に委託販売である。

簡単に言うと、出版社が書籍や雑誌を製作し、全国の一般書店の店頭に置かせてもらっている、という訳である。
従って、書店は売れ残った書籍や雑誌を出版社に返品する事が出来、書店は書籍や雑誌が売れ残る(損失が出る)というリスクを負わなくて良いシステムになっているのだ。

しかし、人気のある書籍や実績のある出版社、人気作家の書籍や話題作の中には、買取で販売される書籍や雑誌もある訳で、「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」もご多分に洩れず買取制度を利用しているのだ。

つまり「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」の売れ残りのリスクは全国の一般書店が負う、と言うシステムになっているのだ。

従って、前述のように35〜70万部もの「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」の不良在庫を抱えたのは、出版社である静山社ではなく、全国の一般書店であった、と言うことなのである。

そして、再販制度と言うしばりがある以上、書籍の販売価格を下げる事が出来ない一般書店は「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」の不良在庫を抱え、新品のまま古本屋に持ち込んだり、仕方が無いので学校の図書館に寄付したり、はたまた不良在庫として死蔵したり、と言うことが一般的に行われていたらしい。
 
 
ところで、静山社は、1979年の設立以来、地道な出版活動を続けてる小さな出版社だったのだが、1999年の「ハリー・ポッターと賢者の石」以来、静山社を取り巻く環境は一変する。
何しろ、静山社はメディアに取り上げられるような書籍など、全くと言って良いほど出版した事のない弱小出版社だったのである。

事実「ハリー・ポッターと賢者の石」以前に静山社が出版した書籍をわたしは知らなかったし、あろうことか静山社という名前すら知らなかったのである。
おそらく、大多数の人達も、このような状況だったに違いない。

そして「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」を買取で販売した際は、「無名の弱小出版社がたまたまベストセラーを出したからって、買取で書籍を販売するような殿様商売をしやがって、一体お前は何様のつもりだ!」等の感情的な反発も多々あったようである。

実際、わたしには大ベストセラー本の版権を持つ出版社が、リスクを弱小書店に負わせる買取制度を利用して、続々と大ベストセラー書籍を出版する理由がよくわからないのだ。

わたしには、たまたま強者になってしまった者(静山社)が、かつて自分がそうであったような弱者(一般書店)にリスクを負わせる、という構図が、メディアに登場する静山社の現代表者兼翻訳者の松岡佑子の言動と逆方向のベクトルを持っているように見えるのだ。

世界の子供たちに良質の書籍を提供する事を目的としている松岡佑子のスタンスと、買取制度の間に一体何が存在するのだろうか。

「ベストセラー本と図書館の死」
http://diarynote.jp/d/29346/20040628.html

《NHK「クローズアップ現代」に対する図書館の見解》
http://www.city.machida.tokyo.jp/new/03new0201_05.html

■人気blogランキング
当blog「徒然雑草」は「人気blogランキング」に登録しています。

参考になったら、クリック!(現在のランキングがわかります)
http://blog.with2.net/link.php?29604

コメント

tkr

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索