「トゥー・ブラザーズ」
2004年8月31日 映画
2004/08/31 東京内幸町(霞ヶ関)イイノホールで開催されている「GTF2004 トーキョーシネマショー」でジャン=ジャック・アノーの新作「トゥー・ブラザーズ」の試写を観た。
1920年代のカンボジア/アンコール遺跡。
ジャングルの奥地、荒れ果てた寺院跡で2頭のトラが生まれた。兄のクマルは元気な暴れん坊で、弟のサンガはおとなしい性格だった。仲のいい2頭は一緒にすくすくと育ってゆく。
そんなある日、著名なイギリス人冒険家エイダン・マクロリー(ガイ・ピアース)が仏像盗掘のためアンコール遺跡を訪れた。
マクロリーは、仏像盗掘の最中、突然姿を現わし人を襲った親トラ1頭を撃ち殺してしまう。
これが原因となり、やんちゃなクマルはマクロリーに、おとなしいサンガは行政長官ユージン・ノルマンダン(ジャン=クロード・ドレフュス)の息子ラウール(フレディー・ハイモア)の遊び相手として引き取られて行くのだったが・・・・。
監督:ジャン=ジャック・アノー
出演:ガイ・ピアース、ジャン=クロード・ドレフュス、フィリピーヌ・ルロワ=ボリュー、フレディー・ハイモア、マイ・アン・レー、ムーサ・マースクリ、ヴァンサン・スカリート
本作「トゥー・ブラザーズ」は、わたしがジャン=ジャック・アノーに期待したような作品ではなく、子供たちにも安心して見せられる良質なファミリー・ムービーだった。
いわば、ディズニー映画のようなテイストを持った作品である。
しかし、わたしが予告編を観て本作に期待していたのは、厳しい弱肉強食の大自然界の中、人間のエゴで飼い馴らされてしまう二頭のトラに降りかかる悲劇を、エイダン・マクロリー(ガイ・ピアース)とラウール(フレディー・ハイモア)の二つの視点で描き、それがラストで交差する。と言うもので、ともすれば、「子鹿物語」(1947)や「二十日鼠と人間」的な終焉を迎える悲劇的な映画を期待していた訳である。
しかし、だからと言って作品自体がつまらないか、と言うとそうでもなく、(尤もシーンの転換が唐突で、長大な作品のダイジェスト版のような印象を受ける事は否定できないが、)前述のように楽しいファミリー・ムービーに仕上がっている。
特筆すべき点はトラの演技である。部分的にフレームの外で強制的に演技させている部分や「にせもののトラ(アニマトロニクス)」が見え隠れするが、トラの演技は自然で、どうやってこんなシークエンスを破綻なく撮ったんだ、と思えるシーンの続出である。
聞くところによると、これはトラが、シーンに合った動きをするまで気長に待ち続ける、と言う手法だった、と言う事であるから、気の遠くなるような撮影作業である。
セットではなく、ほとんどがロケの作品で、こういった手法で撮影するとは、驚きを禁じえないのである。
脚本は、ファミリー・ムービーと言うことで、自然界の弱肉強食的残酷描写もなく、かわいいトラと楽しい物語、というものだが、唯一「人間のエゴの責任をとらなければならない」とマクロリーがラウールを諭す場面が秀逸である。
いわばマクロリーとラウールの演技合戦になっているのだ。
そして、このシーンを突き詰めていくと「子鹿物語」(1947)的結末に至る訳である。
またトラの親子を地元の知事(=土候の息子/貴族?)親子のメタファーとして絡めたあたりも良い印象を受けた。
キャストは、ガイ・ピアースにしろ、フレディー・ハイモアにしろ、完全にトラに食われているような印象を受ける。
勿論、ラウール少年を演じたフレディー・ハイモアには感心させられるし、ガイ・ピアースら大人のキャストもそれぞれ自分の仕事をきちんとこなしている。
しかし、やはりトラなのだ。
音楽は、若干オーバー・スコアで、トラのかわいさを前面に押し出しすぎているような印象を受けた。
本作「トゥー・ブラザーズ」は、大自然の厳しさ、弱肉強食、食物連鎖、人間のエゴ、環境破壊等のハードな部分を期待する方には、残念ながら期待はずれといわざるを得ないが、この秋家族団欒で映画体験をするには、ちょうど良い良質なファミリー・ムービーなのだ。
しかし、ファミリー・ムービーであり、子供向けの作品であるからこそ、自然界ではトラがどうやって獲物を取るのか、人間のエゴで飼いならされてしまった猛獣はどうなるのか、そういったところを描いて欲しかったのである。
ジャン=ジャック・アノーは一体、どこを目指しているのであろうか。
余談だが「メメント」のガイ・ピアースへのセルフ・オマージュも楽しいものだった。
また「ジュラシック・パーク」へのオマージュもあった。
1920年代のカンボジア/アンコール遺跡。
ジャングルの奥地、荒れ果てた寺院跡で2頭のトラが生まれた。兄のクマルは元気な暴れん坊で、弟のサンガはおとなしい性格だった。仲のいい2頭は一緒にすくすくと育ってゆく。
そんなある日、著名なイギリス人冒険家エイダン・マクロリー(ガイ・ピアース)が仏像盗掘のためアンコール遺跡を訪れた。
マクロリーは、仏像盗掘の最中、突然姿を現わし人を襲った親トラ1頭を撃ち殺してしまう。
これが原因となり、やんちゃなクマルはマクロリーに、おとなしいサンガは行政長官ユージン・ノルマンダン(ジャン=クロード・ドレフュス)の息子ラウール(フレディー・ハイモア)の遊び相手として引き取られて行くのだったが・・・・。
監督:ジャン=ジャック・アノー
出演:ガイ・ピアース、ジャン=クロード・ドレフュス、フィリピーヌ・ルロワ=ボリュー、フレディー・ハイモア、マイ・アン・レー、ムーサ・マースクリ、ヴァンサン・スカリート
本作「トゥー・ブラザーズ」は、わたしがジャン=ジャック・アノーに期待したような作品ではなく、子供たちにも安心して見せられる良質なファミリー・ムービーだった。
いわば、ディズニー映画のようなテイストを持った作品である。
しかし、わたしが予告編を観て本作に期待していたのは、厳しい弱肉強食の大自然界の中、人間のエゴで飼い馴らされてしまう二頭のトラに降りかかる悲劇を、エイダン・マクロリー(ガイ・ピアース)とラウール(フレディー・ハイモア)の二つの視点で描き、それがラストで交差する。と言うもので、ともすれば、「子鹿物語」(1947)や「二十日鼠と人間」的な終焉を迎える悲劇的な映画を期待していた訳である。
しかし、だからと言って作品自体がつまらないか、と言うとそうでもなく、(尤もシーンの転換が唐突で、長大な作品のダイジェスト版のような印象を受ける事は否定できないが、)前述のように楽しいファミリー・ムービーに仕上がっている。
特筆すべき点はトラの演技である。部分的にフレームの外で強制的に演技させている部分や「にせもののトラ(アニマトロニクス)」が見え隠れするが、トラの演技は自然で、どうやってこんなシークエンスを破綻なく撮ったんだ、と思えるシーンの続出である。
聞くところによると、これはトラが、シーンに合った動きをするまで気長に待ち続ける、と言う手法だった、と言う事であるから、気の遠くなるような撮影作業である。
セットではなく、ほとんどがロケの作品で、こういった手法で撮影するとは、驚きを禁じえないのである。
脚本は、ファミリー・ムービーと言うことで、自然界の弱肉強食的残酷描写もなく、かわいいトラと楽しい物語、というものだが、唯一「人間のエゴの責任をとらなければならない」とマクロリーがラウールを諭す場面が秀逸である。
いわばマクロリーとラウールの演技合戦になっているのだ。
そして、このシーンを突き詰めていくと「子鹿物語」(1947)的結末に至る訳である。
またトラの親子を地元の知事(=土候の息子/貴族?)親子のメタファーとして絡めたあたりも良い印象を受けた。
キャストは、ガイ・ピアースにしろ、フレディー・ハイモアにしろ、完全にトラに食われているような印象を受ける。
勿論、ラウール少年を演じたフレディー・ハイモアには感心させられるし、ガイ・ピアースら大人のキャストもそれぞれ自分の仕事をきちんとこなしている。
しかし、やはりトラなのだ。
音楽は、若干オーバー・スコアで、トラのかわいさを前面に押し出しすぎているような印象を受けた。
本作「トゥー・ブラザーズ」は、大自然の厳しさ、弱肉強食、食物連鎖、人間のエゴ、環境破壊等のハードな部分を期待する方には、残念ながら期待はずれといわざるを得ないが、この秋家族団欒で映画体験をするには、ちょうど良い良質なファミリー・ムービーなのだ。
しかし、ファミリー・ムービーであり、子供向けの作品であるからこそ、自然界ではトラがどうやって獲物を取るのか、人間のエゴで飼いならされてしまった猛獣はどうなるのか、そういったところを描いて欲しかったのである。
ジャン=ジャック・アノーは一体、どこを目指しているのであろうか。
余談だが「メメント」のガイ・ピアースへのセルフ・オマージュも楽しいものだった。
また「ジュラシック・パーク」へのオマージュもあった。
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