2004/08/24 東京銀座 銀座ガスホールで行われた「CODE46」の試写会に行ってきた。
法規46
第1条
同じ核遺伝子を持つ者は遺伝子学的に同一でありすべて血縁と見なす。
体外受精・人工受精・クローン技術に際して同じ遺伝子間の生殖はいかなる場合も避けること。従って
1.子作りの前に遺伝子検査を義務つける。遺伝子が100%、50%、25%同一の場合、受胎は許されない。
2.計画外の妊娠は胎児を検査すること。100%、50%、25%同一の両親の場合は即中絶せねばならない。
3.両親が遺伝子の同一性を知らない場合法規46違反を避けるべく医療介入する。
4.同一性を知りながらの妊娠は法規46に違反する重大な犯罪行為である。
環境破壊と砂漠化が進む近未来。
徹底した管理社会であるこの世界は、安全が保障されている都市部(内の世界)と果てしない砂漠が続く無法地帯(外の世界)を厳格に区別している。
その世界では、一部の認められた人にのみ都市間の移動を許可するパペル(滞在許可証/現在のパスポートとビザの機能を持つカード)が発行されていた。
シアトル在住の調査員ウィリアム・ゲルド(ティム・ロビンス)は、パペルを審査・発行するスフィンクス社の依頼で、頻発する違法パペル偽造犯を突き止めるため上海のスフィンクス社を訪問した。
その世界では、人類の機能を高める各種ウィルスの服用が認可されている。
ウィリアムは短い会話を交わすだけで相手の嘘を見破る事が出来る共鳴ウィルスを服用しているため、即座に偽造パペルの犯人はマリア・ゴンザレス(サマンサ・モートン)である事を知ってしまうが・・・・。
監督はマイケル・ウィンターボトム。
出演はサマンサ・モートン、ティム・ロビンス、ジャンヌ・バリバール、オム・プリ、エシー・デイヴィス他。
私見だが、
はっきり言って最高である。
おそらく、わたしの今年のベスト5くらいには確実に顔を出す程、素晴らしい作品に思える。
何と言っても、世界観が素晴らしいのだ。
そして、脚本も(若干気に入らない部分はあるが)素晴らしいし、撮影も照明も素晴らしい、美術も素晴らしいし、そして何よりもキャストが素晴らしいのだ。
先ず世界観だが、われわれの現在の世界の延長線上に確実に存在し得るだろうと誰もが思えるほどのリアリティが感じられる世界が構築されている。
そして、この世界観は洗練されていると同時に雑多で多様化し、混沌とした社会をそして、貧富の二極分化を明確に描写している。
これは、実在のサイバー都市とも言える「上海」と、摩天楼とバラック街が共存する街「ドバイ」で行ったロケーションの効果が高いと思われる。
一言で言うなれば「ブレードランナー」で構築されたような素晴らしい世界観を、セットではなくロケーションで実現している、と言う事なのだ。
実際の構造物が醸し出すリアリティ溢れる世界観は何よりであり、ロケで実際の構造物を使用することにより、照明がより自然光に近づき、一層のリアリティの付与に成功している。
このリアリティと質感は、セットではおそらく出せないだろう。
「ブレードランナー」は勿論素晴らしい作品であり、その世界観も素晴らしいのだが、残念ながらセット撮影であるため、実在の世界と比較すると若干の違和感があり、観客を取り込む「魔法の力」が、ロケで撮影された本作と比較すると弱い、という事である。
そして、様々な新技術やギミックを「どうだ!凄いだろ!」という感じではなく、あくまでもさりげなく、あたり前のように画面に登場させる上品さが心地よい。
またこれは脚本にも関係するのだが、そういった新技術やギミックを説明しない(説明的なセリフがない)のも好感が持てる。
例えば、最近流行のCGIによる圧倒的で情報量の多いヴィジュアルで近未来を描いている「フィフス・エレメント」や「マイノリティ・リポート」のような作品の、ゴリ押しで、リアリティの無いカメラ移動や、製作者サイドの「どうだ!凄いだろ!」的描写が感じられる下品な近未来のヴィジュアルと比較すると、本作「CODE46」の、近未来のあたり前の世界の日常をあたり前に表現し、控えめだが堅牢な世界観の構築に感服してしまうのだ。
物語の骨格は、ウィリアム(ティム・ロビンス)が違法パペル偽造犯を突き止める、という所謂デテクティブ・ストーリーなのだが、決して一筋縄ではいかない、物語に仕上がっている。
先ほど世界観の構築について「ブレードランナー」を比較対象として例に挙げたが、本作「CODE46」は21世紀の新しい世代向けの「ブレードランナー」なのかも知れない。
また脚本は、所謂デテクティブ・ストーリーにタイトルでもある「法規46」というSFテイストを絡め、一般のテクノロジーとバイオ・テクノロジーが進化した社会の問題点を鋭く抉っている。
更にマリアの夢のコンセプトが秀逸で、物語にスピードとタイム・リミットから派生する危機感を与えている。
また極度の管理社会を表現する事により、貧富や身分の差が二極分化した恐ろしい世界をわかりやすく、危機感をあまり煽らない程度の描写で語っている。
次いでキャストについてだが、本作はティム・ロビンスとサマンサ・モートンの二人芝居と言っても良いほど、二人は出ずっぱりである。
ティム・ロビンスはハード・ボイルド的寡黙な探偵役を見事に演じているし、ヒロインであり、物語の語り部でもあるサマンサ・モートンも体当たりの演技を見せている。
サマンサ・モートン演じるマリアが語り部として機能しているあたりが、脚本的には、実は凄いところなのである。
とにかく、わたしが思うには本作「CODE46」は、勿論観客は選ぶと思うが、この秋注目の大穴作品だと思うのだ。
大化けするかコケるか微妙だが、本作にご関心がある方は、早めに観ることを個人的にはオススメする。
法規46
第1条
同じ核遺伝子を持つ者は遺伝子学的に同一でありすべて血縁と見なす。
体外受精・人工受精・クローン技術に際して同じ遺伝子間の生殖はいかなる場合も避けること。従って
1.子作りの前に遺伝子検査を義務つける。遺伝子が100%、50%、25%同一の場合、受胎は許されない。
2.計画外の妊娠は胎児を検査すること。100%、50%、25%同一の両親の場合は即中絶せねばならない。
3.両親が遺伝子の同一性を知らない場合法規46違反を避けるべく医療介入する。
4.同一性を知りながらの妊娠は法規46に違反する重大な犯罪行為である。
環境破壊と砂漠化が進む近未来。
徹底した管理社会であるこの世界は、安全が保障されている都市部(内の世界)と果てしない砂漠が続く無法地帯(外の世界)を厳格に区別している。
その世界では、一部の認められた人にのみ都市間の移動を許可するパペル(滞在許可証/現在のパスポートとビザの機能を持つカード)が発行されていた。
シアトル在住の調査員ウィリアム・ゲルド(ティム・ロビンス)は、パペルを審査・発行するスフィンクス社の依頼で、頻発する違法パペル偽造犯を突き止めるため上海のスフィンクス社を訪問した。
その世界では、人類の機能を高める各種ウィルスの服用が認可されている。
ウィリアムは短い会話を交わすだけで相手の嘘を見破る事が出来る共鳴ウィルスを服用しているため、即座に偽造パペルの犯人はマリア・ゴンザレス(サマンサ・モートン)である事を知ってしまうが・・・・。
監督はマイケル・ウィンターボトム。
出演はサマンサ・モートン、ティム・ロビンス、ジャンヌ・バリバール、オム・プリ、エシー・デイヴィス他。
私見だが、
はっきり言って最高である。
おそらく、わたしの今年のベスト5くらいには確実に顔を出す程、素晴らしい作品に思える。
何と言っても、世界観が素晴らしいのだ。
そして、脚本も(若干気に入らない部分はあるが)素晴らしいし、撮影も照明も素晴らしい、美術も素晴らしいし、そして何よりもキャストが素晴らしいのだ。
先ず世界観だが、われわれの現在の世界の延長線上に確実に存在し得るだろうと誰もが思えるほどのリアリティが感じられる世界が構築されている。
そして、この世界観は洗練されていると同時に雑多で多様化し、混沌とした社会をそして、貧富の二極分化を明確に描写している。
これは、実在のサイバー都市とも言える「上海」と、摩天楼とバラック街が共存する街「ドバイ」で行ったロケーションの効果が高いと思われる。
一言で言うなれば「ブレードランナー」で構築されたような素晴らしい世界観を、セットではなくロケーションで実現している、と言う事なのだ。
実際の構造物が醸し出すリアリティ溢れる世界観は何よりであり、ロケで実際の構造物を使用することにより、照明がより自然光に近づき、一層のリアリティの付与に成功している。
このリアリティと質感は、セットではおそらく出せないだろう。
「ブレードランナー」は勿論素晴らしい作品であり、その世界観も素晴らしいのだが、残念ながらセット撮影であるため、実在の世界と比較すると若干の違和感があり、観客を取り込む「魔法の力」が、ロケで撮影された本作と比較すると弱い、という事である。
そして、様々な新技術やギミックを「どうだ!凄いだろ!」という感じではなく、あくまでもさりげなく、あたり前のように画面に登場させる上品さが心地よい。
またこれは脚本にも関係するのだが、そういった新技術やギミックを説明しない(説明的なセリフがない)のも好感が持てる。
例えば、最近流行のCGIによる圧倒的で情報量の多いヴィジュアルで近未来を描いている「フィフス・エレメント」や「マイノリティ・リポート」のような作品の、ゴリ押しで、リアリティの無いカメラ移動や、製作者サイドの「どうだ!凄いだろ!」的描写が感じられる下品な近未来のヴィジュアルと比較すると、本作「CODE46」の、近未来のあたり前の世界の日常をあたり前に表現し、控えめだが堅牢な世界観の構築に感服してしまうのだ。
物語の骨格は、ウィリアム(ティム・ロビンス)が違法パペル偽造犯を突き止める、という所謂デテクティブ・ストーリーなのだが、決して一筋縄ではいかない、物語に仕上がっている。
先ほど世界観の構築について「ブレードランナー」を比較対象として例に挙げたが、本作「CODE46」は21世紀の新しい世代向けの「ブレードランナー」なのかも知れない。
また脚本は、所謂デテクティブ・ストーリーにタイトルでもある「法規46」というSFテイストを絡め、一般のテクノロジーとバイオ・テクノロジーが進化した社会の問題点を鋭く抉っている。
更にマリアの夢のコンセプトが秀逸で、物語にスピードとタイム・リミットから派生する危機感を与えている。
また極度の管理社会を表現する事により、貧富や身分の差が二極分化した恐ろしい世界をわかりやすく、危機感をあまり煽らない程度の描写で語っている。
次いでキャストについてだが、本作はティム・ロビンスとサマンサ・モートンの二人芝居と言っても良いほど、二人は出ずっぱりである。
ティム・ロビンスはハード・ボイルド的寡黙な探偵役を見事に演じているし、ヒロインであり、物語の語り部でもあるサマンサ・モートンも体当たりの演技を見せている。
サマンサ・モートン演じるマリアが語り部として機能しているあたりが、脚本的には、実は凄いところなのである。
とにかく、わたしが思うには本作「CODE46」は、勿論観客は選ぶと思うが、この秋注目の大穴作品だと思うのだ。
大化けするかコケるか微妙だが、本作にご関心がある方は、早めに観ることを個人的にはオススメする。
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