「マスター・アンド・コマンダー」
2004年8月8日 映画
1805年
大海原−それは人類に残された最後の開拓地である。
そこには人類の想像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているに違いない。
これは、フランス海軍アケロン号迎撃のため旅立ったH.M.S.サプライズ号の驚異に満ちた物語である。
各方面で絶賛の嵐の「マスター・アンド・コマンダー」を、この度DVD/DTSで視聴しまして、気になる点を何点かお話したいと思います。
1.音響効果
第76回アカデミー賞「音響効果賞」受賞も納得できる程、音場の再現度は高い。
特に波や風により船体が軋む音の5.1chでの再現は素晴らしく、その臨場感は、自らが大海原の真只中に居るかのような印象を受ける。
また特筆すべき点として、音楽があまり入っていない点も、音響効果の効果を高めている。いっその事、音楽を全く入れなくても良かったのではないか、と思う程であった。
2.撮影
アクション・シークエンスの撮影は良かったし、ガラパゴス諸島のロケーション効果も高かったのであるが、H.M.S.サプライズ号が大海原を単独で航海している描写が希薄であった。
これは、H.M.S.サプライズ号が画面上、大写しになっていることが多く、圧倒的な大自然における圧倒的な孤独感、寂寥感、そして大自然に対する畏怖があまり感じられなかった。
H.M.S.サプライズ号が大海原を孤高に航海する潔さが表現されていないのは大変惜しい、と思うのだ。
例えば「アラビアのロレンス」冒頭付近の、地平線上に現れるラクダがだんだん近づいてくるようなカットであるとか、「2001年宇宙の旅」のフランク・プール救出のシークエンス等、大自然の中の孤立無援感を感じさせて欲しかったのだ。
3.脚本
原作は20冊を超える超大作であり、本作はその1エピソードを中心に139分にまとめ、H.M.S.サプライズ号とアケロン号に物語の焦点を絞った潔さは評価できるのだが、そのためH.M.S.サプライズ号とアケロン号が置かれている背景が希薄である。
ともすれば、フランス代表としてアケロン号が、イギリス代表としてサプライズ号が戦っているような印象を観客に与えかねない。
勿論冒頭の命令書云々の件はサプライズ号の背後のイギリスの存在を描いているのだが、例えばイギリス本国の海軍作戦室を映すとか、ジャック・オーブリーがイギリス本国から命令書を手渡しされるとか、多くのイギリス軍艦が多くの海域でフランス海軍と戦っているのだ、と言う背景を描いて欲しかったのだ。
また、H.M.S.サプライズ号やアケロン号の背景が見えない点とかぶるのだが、本作の物語自体が小さく、シリーズの中の1エピソードとしか感じられない。
尤も前述のように原作は20冊を超えている訳だから、今後のシリーズ化も念頭においているのだろうが、オーブリーとマチュリンの初登場エピソードとしては物語が弱いような印象を受ける。
今後のシリーズ化の展開を考えた場合、例えば「スター・ウォーズ(エピソードIV)」や「レイダース/失われた聖櫃」のようなシリーズ第一作と本作を比較してどうか、と言う事である。
4.シリーズ化への期待
前項と被るのだが、個人的に本作は是非シリーズ化して欲しい作品である。
先ず、今回のブログの冒頭に書いた言葉をもう一度読んでいただきたい。
賢明な読者諸氏はお気づきのように、冒頭の言葉は、「宇宙大作戦/スタートレック」のオープニング・ナレーションを本作「マスター・アンド・コマンダー」に当てはめたものである。
そう「マスター・アンド・コマンダー」は「スタートレック」だったのだ。
そしてわたし達観客は、オーブリーとマチュリンの、そしてH.M.S.サプライズ号の人類未踏の海域での驚異に満ちた物語を、もっともっと知りたいのである。
今後のシリーズ化を切に願うのだ。
5.「スタートレック」を見ろ!
「マスター・アンド・コマンダー」に関心を持った方は、是非「スタートレック」シリーズも見て欲しい。
舞台や環境は勿論異なるのだが、「スタートレック」と「マスター・アンド・コマンダー」は、全くと言って良いほど同じコンセプトとベクトルを持った物語だと言えるのだ。
最後に、冒頭でアレンジ版を記載した「スタートレック」のオープニング・ナレーションを原文のままご紹介したいと思います。
宇宙−それは人類に残された最後の開拓地である。
そこには人類の想像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているに違いない。
これは、人類最初の試みとして5年間の調査飛行に飛び立った宇宙船U.S.S.エンタープライズ号の驚異に満ちた物語である。
(「宇宙大作戦/スタートレック」オープニング・ナレーションより引用)』
Space... the final frontier.
These are the voyagers of the Starship Enterprise.
It’s five year mission:
To explore strange new worlds,
To seek out new life and new civilizations,
To boldly go where no one has gone before...
大海原−それは人類に残された最後の開拓地である。
そこには人類の想像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているに違いない。
これは、フランス海軍アケロン号迎撃のため旅立ったH.M.S.サプライズ号の驚異に満ちた物語である。
各方面で絶賛の嵐の「マスター・アンド・コマンダー」を、この度DVD/DTSで視聴しまして、気になる点を何点かお話したいと思います。
1.音響効果
第76回アカデミー賞「音響効果賞」受賞も納得できる程、音場の再現度は高い。
特に波や風により船体が軋む音の5.1chでの再現は素晴らしく、その臨場感は、自らが大海原の真只中に居るかのような印象を受ける。
また特筆すべき点として、音楽があまり入っていない点も、音響効果の効果を高めている。いっその事、音楽を全く入れなくても良かったのではないか、と思う程であった。
2.撮影
アクション・シークエンスの撮影は良かったし、ガラパゴス諸島のロケーション効果も高かったのであるが、H.M.S.サプライズ号が大海原を単独で航海している描写が希薄であった。
これは、H.M.S.サプライズ号が画面上、大写しになっていることが多く、圧倒的な大自然における圧倒的な孤独感、寂寥感、そして大自然に対する畏怖があまり感じられなかった。
H.M.S.サプライズ号が大海原を孤高に航海する潔さが表現されていないのは大変惜しい、と思うのだ。
例えば「アラビアのロレンス」冒頭付近の、地平線上に現れるラクダがだんだん近づいてくるようなカットであるとか、「2001年宇宙の旅」のフランク・プール救出のシークエンス等、大自然の中の孤立無援感を感じさせて欲しかったのだ。
3.脚本
原作は20冊を超える超大作であり、本作はその1エピソードを中心に139分にまとめ、H.M.S.サプライズ号とアケロン号に物語の焦点を絞った潔さは評価できるのだが、そのためH.M.S.サプライズ号とアケロン号が置かれている背景が希薄である。
ともすれば、フランス代表としてアケロン号が、イギリス代表としてサプライズ号が戦っているような印象を観客に与えかねない。
勿論冒頭の命令書云々の件はサプライズ号の背後のイギリスの存在を描いているのだが、例えばイギリス本国の海軍作戦室を映すとか、ジャック・オーブリーがイギリス本国から命令書を手渡しされるとか、多くのイギリス軍艦が多くの海域でフランス海軍と戦っているのだ、と言う背景を描いて欲しかったのだ。
また、H.M.S.サプライズ号やアケロン号の背景が見えない点とかぶるのだが、本作の物語自体が小さく、シリーズの中の1エピソードとしか感じられない。
尤も前述のように原作は20冊を超えている訳だから、今後のシリーズ化も念頭においているのだろうが、オーブリーとマチュリンの初登場エピソードとしては物語が弱いような印象を受ける。
今後のシリーズ化の展開を考えた場合、例えば「スター・ウォーズ(エピソードIV)」や「レイダース/失われた聖櫃」のようなシリーズ第一作と本作を比較してどうか、と言う事である。
4.シリーズ化への期待
前項と被るのだが、個人的に本作は是非シリーズ化して欲しい作品である。
先ず、今回のブログの冒頭に書いた言葉をもう一度読んでいただきたい。
賢明な読者諸氏はお気づきのように、冒頭の言葉は、「宇宙大作戦/スタートレック」のオープニング・ナレーションを本作「マスター・アンド・コマンダー」に当てはめたものである。
そう「マスター・アンド・コマンダー」は「スタートレック」だったのだ。
そしてわたし達観客は、オーブリーとマチュリンの、そしてH.M.S.サプライズ号の人類未踏の海域での驚異に満ちた物語を、もっともっと知りたいのである。
今後のシリーズ化を切に願うのだ。
5.「スタートレック」を見ろ!
「マスター・アンド・コマンダー」に関心を持った方は、是非「スタートレック」シリーズも見て欲しい。
舞台や環境は勿論異なるのだが、「スタートレック」と「マスター・アンド・コマンダー」は、全くと言って良いほど同じコンセプトとベクトルを持った物語だと言えるのだ。
最後に、冒頭でアレンジ版を記載した「スタートレック」のオープニング・ナレーションを原文のままご紹介したいと思います。
宇宙−それは人類に残された最後の開拓地である。
そこには人類の想像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているに違いない。
これは、人類最初の試みとして5年間の調査飛行に飛び立った宇宙船U.S.S.エンタープライズ号の驚異に満ちた物語である。
(「宇宙大作戦/スタートレック」オープニング・ナレーションより引用)』
Space... the final frontier.
These are the voyagers of the Starship Enterprise.
It’s five year mission:
To explore strange new worlds,
To seek out new life and new civilizations,
To boldly go where no one has gone before...
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