「LOVERS」

2004年7月28日 映画
2004/07/28 東京原宿 NHKホールで行われた『「LOVERS」ジャパン・プレミア』に行ってきた。

舞台挨拶は登場順で、監督:チャン・イーモウ、アクション監督:チン・シウトン、アンディ・ラウ、チャン・ツィイー、金城武、衣裳デザイン:ワダ・エミ、音楽:梅林茂、製作:ビル・コン。司会は襟川クロ。

西暦859年、唐代の中国。
朝廷は反乱勢力最大の一派で、民衆の支持をも集めている「飛刀門」撲滅を画策、一時は首領の暗殺に成功する。
しかし「飛刀門」は新しい首領をたて勢力の拡大を図っていた。

そんな中、朝廷は捕吏の瀏(リウ/アンディ・ラウ)と金(ジン/金城武)に「飛刀門」の新しい首領を10日以内に捕らえるよう厳命。
瀏は「飛刀門」の元首領の娘が盲目であることから、最近遊郭「牡丹坊」で評判を呼ぶ盲目の踊り子小妹(シャオメイ/チャン・ツィイー)が「飛刀門」の元首領の娘ではないかと疑い、「牡丹坊」に酔客になりすました金を潜入させる。

一時は目論見通り小妹を捕えるが、小妹の口が堅いと知った瀏は、金に小妹の脱獄を手助けさせる。
小妹に金を反乱戦士と信じ込ませ、「飛刀門」の新首領の元へ案内させるよう謀るのだったが・・・・。

本作「LOVERS」は、「HERO/英雄」に続くチャン・イーモウの中国歴史絵巻である。
「HERO/英雄」同様、悲劇をワイヤーアクションと美しい美術・衣裳で描く作風となっている。
「HERO/英雄」は秦の時代を舞台とした始皇帝の苦悩を描いていたが、本作「LOVERS」は唐の時代を舞台に、朝廷と朝廷に対峙する反乱一派「飛刀門」と言う大きなうねりに翻弄される三者三様の愛を描いている。

物語の最大のモチーフは「傾城・傾国の美女※」。
本作は、チャン・ツィイー演じる小妹を取り巻く、瀏(リウ/アンディ・ラウ)と金(ジン/金城武)の愚かさを見事に描いている。

しかしながら、「傾城・傾国の美女」を理解しないと、本作の脚本は一見つまらなく、前半から中盤はともかく後半からラストは退屈な映画に思えてしまうきらいがあるのだ。
事実、今回の『「LOVERS」ジャパン・プレミア』において、多くの観客が本作について否定的な感想を持っていたようである。

これの多くは、冒頭から中盤にかけては、脚本もアクションも大変素晴らしいのであるが、後半からラストにかけての瀏(リウ/アンディ・ラウ)と金(ジン/金城武)の莫迦さ加減はあきれてしまう、というところだろう。

勿論、それはチャン・イーモウの狙いなのだから仕方が無いのだが、一般の観客はそこまで読み取れずに、映画の表層を見て「LOVERS」は駄作だ、というレッテルを貼ってしまう可能性がある、と言えるのだ。

ところで美術や衣裳は大変良い仕事をしている。
「HERO/英雄」では物語の性格上、美術や衣裳はファンタジックで美しい反面、残念ながらリアリティが欠如していた。
しかし本作の美術は落ち着いた色彩で、しかも使い込まれた風情でしっかりとまとめられており、また衣裳については、色彩を含めてリアリティのある、重厚でかつ繊細なデザインにまとめられている。

音楽は、若干日本的なテイストが顔を出すが、概ね良かったのではないだろうか。

また撮影はスコープサイズを意識したレイアウトに、良い印象を受けた。
最近はビデオやDVD化を目論んだテレビサイズで見映えの良い画面レイアウトを撮る作家がいる中、劇場公開を大前提としたレイアウトには感激なのだ。

このスコープサイズを意識した点は、例えば「理由なき反抗」の冒頭シーンにも匹敵するような、金と瀏の冒頭のカットからして凄かった。勿論、小妹の舞のシークエンスも然りである。

チン・シウトン指導のアクション・シークエンスは、小妹の舞の部分、前半から中盤にかけて、金と小妹の逃亡のシークエンスでの追手との戦いが良かった反面、ラストの戦いはイマイチだった。

前作「HERO/英雄」はジェット・リーという素材が良かったせいか、本作のアクション・シークエンスは「HERO/英雄」レベルまでは達していない、というのが実情だろう。

また、アクション・シークエンスにおいて時々リアリティの欠如が垣間見えたのは残念である。一歩間違えば失笑寸前のシークエンスに肝を冷やした。

脚本は、前述のように「傾城・傾国の美女」というモチーフを実現する為に、一般の観客には受け入れられないようなものになってしまっているようだ。

勿論、チャン・イーモウとしては、確信犯的な脚本だと思うのだが、下手をすると一般の観客に「LOVERS」は駄作だ、というレッテルを貼られてしまう可能性があるだけに、また前半から中盤にかけての脚本もアクションも描写も素晴らしいので、非常に残念な思いがする。
もう少し、一般の観客に迎合した娯楽作品的な脚本でもよかったのでは無いだろうか。

言うならば本作「LOVERS」は、朝廷と「飛刀門」との対峙、という大きな、スケール感に富んだ舞台背景の中、三者が三様に織りなす小さなドラマにしか過ぎない、と思われがちな作品なのである。

また、「HERO/英雄」同様、「藪の中」的な脚本は本作にも生きているのだが、「藪の中」にまた「藪の中」がある脚本の構成はいかがなものだろうか。と思った。

キャストは、三者三様に素晴らしかった。
一度目は、金城武とチャン・ツィイーに目が行きがちだが、二度目はアンディ・ラウとチャン・ツィイーに焦点を絞って観ると、違った印象を受けるのではないか、と思った。

「LOVERS」の映画としての評価は分かれるところだが、アジアの才能が結集した本作は、是非劇場で観て欲しいのだ。

※ 「傾城・傾国の美女」
中国の故事「一顧傾人城、再顧傾人城」による、一度会えば城が傾き、再び会えば国が傾く程の美女のこと。
冒頭「牡丹坊」で小妹が舞を見せつつ唄った曲は「一顧傾人城、再顧傾人城」そのものである。

因みに、今回の『「LOVERS」ジャパン・プレミア』のチケットは、抽選で招待客に配付されたものなのだが、オークションでは(わたしが知る限り)最高24万円(2名分)で落札されていた。(次は15万6千円)

唐大中十三年,皇帝昏庸,朝廷腐敗,民間湧現不少反官府的組織,其中以飛刀門的勢力最大。飛刀門旗下高手如雲,
以「殺富濟貧、推翻朝廷」為旗號,甚得百姓擁戴。飛刀門總部設在靠近都城長安的奉天縣境?,因而直接威脅長安的安全。
朝廷深以為患,逐嚴令奉天縣加以剿滅。飛刀門?主柳雲飛雖在與奉天縣官兵的戰鬥中犧牲,但在新任?主領導之下,
飛刀門的勢頭不減反?。奉天縣兩大捕頭:劉捕頭(劉?華飾)、金捕頭(金城武飾)奉命於十日之?,
將飛刀門新任?主緝拿歸案。劉捕頭懷疑新店牡丹坊的舞伎小妹(章子怡飾)是飛刀門前?主柳雲飛的女兒,
逐用計將?拿下,押入天牢。二人並再度設下圈套:由金捕頭化名隨風大?,乘夜劫獄,救出小妹;藉此騙取小妹的信任,
?出飛刀門的?穴,以便一舉剿滅。

隨風依計救走小妹。逃亡路上,隨風對小妹呵護備致,小?不禁對他漸生情?;而隨風與小妹朝夕相對,
亦被?的出塵氣質深深吸引。星月之夜,二人終究按捺不住,狂烈戀火,眼看一發不可收拾…

林外,?風凜冽,隱隱殺機正悄悄地向他們進逼…

隨風、小妹,這對不應相愛、卻愛得熾熱的戀人,將面臨怎樣的命運?明明有愛,為何?心深處,總埋伏著深不可測的陰謀?
與及看不見的顫抖…

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