「モナリザ・スマイル」
2004年7月26日 映画
2004/07/26 東京新宿 朝日生命ホールで「モナリザ・スマイル」を観た。
1953年秋。
カリフォルニアからニューイングランド地方にある、名門女子大ウェルズリー大学に向かう列車の中で、美術史の新任女性教師キャサリン・ワトソン(ジュリア・ロバーツ)は、夢の実現に胸を高鳴らせていた。
彼女は美術史の助教授としてウェルズリー大学に赴任し、米国一保守的という評判を持つこの大学に自分なりの変化をもたらそうと考えていたのである。
しかし到着してまもなく、彼女はこの名門校の予想以上に厳しい伝統にとらわれた環境を知る事になる。
先輩教師ナンシー・アビー(マーシャ・ゲイ・ハーデン)によると、学生たちにとって最も価値があるのは、充実した教育や高学歴、より高い志ではなく、エリートのボーイフレンドと結婚する事である、と言うのだ。
それでも彼女は期待を込めて初日の授業に臨むが、女生徒たちのリーダー的存在の優等生ベティ(キルスティン・ダンスト)ら女生徒たちの反発に翻弄されてしまう・・・・。
監督は「フォー・ウェディング」のマイク・ニューウェル。
主演はジュリア・ロバーツ。
共演の女生徒役は、キルステン・ダンスト(ベティ役)、ジュリア・スタイルズ(ジョーン役)、マギー・ギレンホール(ジゼル役)。
本作「モナリザ・スマイル」は、保守的な名門女子大学に赴任してきた進歩的な女性教師が、伝統を重んじる生徒や学校関係者との摩擦を繰り返しながらも女性の自立と自由な精神を説き続け、少しずつ学園に変化をもたらしていく、というありがちな題材である。
しかしながら、ありがちな題材であるからと言って、ありがちな展開になるかと言うと、さすがはマイク・ニューウェル(監督)である。一筋縄ではいかない、含みのある、考えさせられる作品に仕上がっている。
時として、このような題材の映画は、旧体制=悪、新しい風=善として捕らえられがちであり、物語の構成も「結局は新しい風は旧体制の前に、夢破れて去っていくが、そこには着実に新しい種が育っている」的なステレオタイプ的な物語になりがちなのである。
しかし本作「モナリザ・スマイル」は、ステレオタイプ的、または、旧体制=悪、新しい風=善というような勧善懲悪的な発想ではなく、両社を描くスタンスにおいて、平衡感覚を失わない平等な視線が、製作者の考えを観客に押し付けることなく、観客が自由な感想を持つ事が可能な、懐の深い作品に仕上がっている。
これは特に、新しい風である美術史の新任女性教師キャサリン・ワトソンの良いところだけではなく欠点を描く事により、またキャサリンの信奉者であったジョーンが選択する道を明確に描き、キャサリンとの対決を描く事により、従来の作品群と一線を画す素晴らしい作品に仕上がっているのではないだろうか。
またキャサリンのコンテンポラリー・アートの授業や、エンディング・クレジットで続々と描かれる「女性の役割」を端的に表した雑誌広告やCFが非常にシニカルでかつ悲しい。
キャストは、ジュリア・ロバーツはともかく、女生徒役が良かった。
先ず最近話題のキルスティン・ダンストであるが、彼女は女生徒たちのリーダーで、政治的にも力を持つベティを好演している。
基本的にベティは本作では悪役(勿論単純な悪役では無い)なのだが、その悪役が素晴らしいだけにラストのカタルシスも際立っている。
「スパイダーマン」でやいのやいの言われるより、こういった作品に出るべきなのかも知れない、と思うのだ。
そしてジョーン役のジュリア・スタイルズは、キャサリンの信奉者で優秀な女生徒で、イェール大に合格するも、自ら家庭に入る事を前向きに選択する役柄である。
ステレオタイプ的な作風では出てこないような役柄であり、理想と現実と理想的現実という選択肢の中で、ポリシーを持って理想的現実を選択する素晴らしい女性である。
今後が楽しみな女優のひとりである。
そしてジゼル役のマギー・ギレンホールだが、役柄的にはキャサリン以前に、既に新しい風にさらされているような役柄なのだが、懐が大きい素晴らしい役である。
物語の中では、ベティに対峙できる唯一のキャラクターとして設定されており、おそらく観客の感情移入の度合が一番高く、作品の良心的な役柄を担い、一番魅力的な役柄なのでは無いか、と思うのだ。
目と表情の演技は素晴らしいものがあり、ラスト近辺のベティ(キルスティン・ダンスト)との対決は大変素晴らしい。
こんな素晴らしい対決シーンは見たことが無い。
さて、コニー役のジニファー・グッドウィンだが、彼女も非常に素晴らしい役柄を演じている。女優としてのキャリアは、ほとんど無いようだが、キャリアのスタートとして非常に美味しい役を演じている。
因みに、結局コニーの相手役が一番良い男だったと思うのだ。
余談だが全寮制の学園もの、というジャンルを考えると、ほとんどの場合男子学生を描いたものが多いのだが、本作はその辺りでも異色作と言えるのではないだろうか。
作品の感覚としては、舞台や年代を含めて「いまを生きる」に重なる部分があるが、女生徒を題材の中心に据えた分、こちらの方が社会派的な印象が出てくるが、比較してみるのも面白いかも知れない。
結婚を間じかに控えるカップルに是非オススメの一本かもしれない。作品の感じ方により、ひと波乱あるかもしれないですが。
1953年秋。
カリフォルニアからニューイングランド地方にある、名門女子大ウェルズリー大学に向かう列車の中で、美術史の新任女性教師キャサリン・ワトソン(ジュリア・ロバーツ)は、夢の実現に胸を高鳴らせていた。
彼女は美術史の助教授としてウェルズリー大学に赴任し、米国一保守的という評判を持つこの大学に自分なりの変化をもたらそうと考えていたのである。
しかし到着してまもなく、彼女はこの名門校の予想以上に厳しい伝統にとらわれた環境を知る事になる。
先輩教師ナンシー・アビー(マーシャ・ゲイ・ハーデン)によると、学生たちにとって最も価値があるのは、充実した教育や高学歴、より高い志ではなく、エリートのボーイフレンドと結婚する事である、と言うのだ。
それでも彼女は期待を込めて初日の授業に臨むが、女生徒たちのリーダー的存在の優等生ベティ(キルスティン・ダンスト)ら女生徒たちの反発に翻弄されてしまう・・・・。
監督は「フォー・ウェディング」のマイク・ニューウェル。
主演はジュリア・ロバーツ。
共演の女生徒役は、キルステン・ダンスト(ベティ役)、ジュリア・スタイルズ(ジョーン役)、マギー・ギレンホール(ジゼル役)。
本作「モナリザ・スマイル」は、保守的な名門女子大学に赴任してきた進歩的な女性教師が、伝統を重んじる生徒や学校関係者との摩擦を繰り返しながらも女性の自立と自由な精神を説き続け、少しずつ学園に変化をもたらしていく、というありがちな題材である。
しかしながら、ありがちな題材であるからと言って、ありがちな展開になるかと言うと、さすがはマイク・ニューウェル(監督)である。一筋縄ではいかない、含みのある、考えさせられる作品に仕上がっている。
時として、このような題材の映画は、旧体制=悪、新しい風=善として捕らえられがちであり、物語の構成も「結局は新しい風は旧体制の前に、夢破れて去っていくが、そこには着実に新しい種が育っている」的なステレオタイプ的な物語になりがちなのである。
しかし本作「モナリザ・スマイル」は、ステレオタイプ的、または、旧体制=悪、新しい風=善というような勧善懲悪的な発想ではなく、両社を描くスタンスにおいて、平衡感覚を失わない平等な視線が、製作者の考えを観客に押し付けることなく、観客が自由な感想を持つ事が可能な、懐の深い作品に仕上がっている。
これは特に、新しい風である美術史の新任女性教師キャサリン・ワトソンの良いところだけではなく欠点を描く事により、またキャサリンの信奉者であったジョーンが選択する道を明確に描き、キャサリンとの対決を描く事により、従来の作品群と一線を画す素晴らしい作品に仕上がっているのではないだろうか。
またキャサリンのコンテンポラリー・アートの授業や、エンディング・クレジットで続々と描かれる「女性の役割」を端的に表した雑誌広告やCFが非常にシニカルでかつ悲しい。
キャストは、ジュリア・ロバーツはともかく、女生徒役が良かった。
先ず最近話題のキルスティン・ダンストであるが、彼女は女生徒たちのリーダーで、政治的にも力を持つベティを好演している。
基本的にベティは本作では悪役(勿論単純な悪役では無い)なのだが、その悪役が素晴らしいだけにラストのカタルシスも際立っている。
「スパイダーマン」でやいのやいの言われるより、こういった作品に出るべきなのかも知れない、と思うのだ。
そしてジョーン役のジュリア・スタイルズは、キャサリンの信奉者で優秀な女生徒で、イェール大に合格するも、自ら家庭に入る事を前向きに選択する役柄である。
ステレオタイプ的な作風では出てこないような役柄であり、理想と現実と理想的現実という選択肢の中で、ポリシーを持って理想的現実を選択する素晴らしい女性である。
今後が楽しみな女優のひとりである。
そしてジゼル役のマギー・ギレンホールだが、役柄的にはキャサリン以前に、既に新しい風にさらされているような役柄なのだが、懐が大きい素晴らしい役である。
物語の中では、ベティに対峙できる唯一のキャラクターとして設定されており、おそらく観客の感情移入の度合が一番高く、作品の良心的な役柄を担い、一番魅力的な役柄なのでは無いか、と思うのだ。
目と表情の演技は素晴らしいものがあり、ラスト近辺のベティ(キルスティン・ダンスト)との対決は大変素晴らしい。
こんな素晴らしい対決シーンは見たことが無い。
さて、コニー役のジニファー・グッドウィンだが、彼女も非常に素晴らしい役柄を演じている。女優としてのキャリアは、ほとんど無いようだが、キャリアのスタートとして非常に美味しい役を演じている。
因みに、結局コニーの相手役が一番良い男だったと思うのだ。
余談だが全寮制の学園もの、というジャンルを考えると、ほとんどの場合男子学生を描いたものが多いのだが、本作はその辺りでも異色作と言えるのではないだろうか。
作品の感覚としては、舞台や年代を含めて「いまを生きる」に重なる部分があるが、女生徒を題材の中心に据えた分、こちらの方が社会派的な印象が出てくるが、比較してみるのも面白いかも知れない。
結婚を間じかに控えるカップルに是非オススメの一本かもしれない。作品の感じ方により、ひと波乱あるかもしれないですが。
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