宮藤官九郎 loves ウィリアム・ゴールドマン
2004年6月10日 映画
ウィリアム・ゴールドマンという脚本家がいる。
「明日に向って撃て!(1969)」と「大統領の陰謀(1976)」で二度もアカデミー賞(脚本賞、脚色賞)を受賞した、言わずと知れた名脚本家である。
例えば、脚本を担当した主要作品をあげるだけでも、映画史に燦然と輝く多くの傑作・名作が名を連ねる。
主要な脚本担当作品は次の通り。
「動く標的(1966)」、「明日に向って撃て!(1969)」、「華麗なるヒコーキ野郎(1975)」、「マラソン マン(1976)」、「大統領の陰謀(1976)」、「遠すぎた橋(1977)」、「プリンセス・ブライド・ストーリー(1987)」、「ミザリー(1990)」、「アトランティスのこころ(2001)」、「ドリームキャッチャー(2003) 」 ・・・・。
しかしなんと言っても、前述の「明日に向って撃て!(1969)」である。
1890年代のアメリカ西部。銀行強盗のブッチとサンダンスは、南米ボリビアで一旗上げる夢をもっていた。列車強盗に成功した彼らは、サンダンスの恋人エッタとともにボリビアへ向かうが…。19世紀末に鮮烈な軌跡を残した2人のアウトローを、情感豊かに描き出したアメリカンニューシネマの代表作。
『スティング』などの名匠ジョージ・ロイ・ヒルが、ときにはユーモラスに、ときにはリリカルに描いていく。主役のブッチにはポール・ニューマン、サンダンスにはロバート・レッドフォード。そして女教師エッタに名花キャサリン・ロスが扮している。名曲「雨にぬれても」をはじめとするバート・バカラックの軽妙流麗なメロディが、全編を痛切に歌い上げる新感覚ウェスタンだ。(アルジオン北村/Amazon.co.jpのエディターズ・レビューより引用)
さて、その「明日に向って撃て!(1969)」だが、ウィリアム・ゴールドマンはその脚本中に、映画史に残る名セリフを書いているのだ。
全映画の名セリフのベストテン等を選出した場合、かなりの確率で上位に食い込む種類の名セリフであり、「明日に向って撃て!(1969)」を紹介するVTRには必ずといって良いほど、このシークエンスが含まれている。
銀行強盗ブッチ・キャシディ(ポール・ニューマン)とサンダンス・キッド(ロバート・レッドフォード)は、追ってに追われ、断崖絶壁に追いつめられてしまう。
追ってから逃げ延びるためには、遥か下方を流れる川に飛び降りるしかない。
ブッチ(ポール・ニューマン)に川に飛び込めと言われたサンダンス(ロバート・レッドフォード)は、
「オレは泳げないんだ!」("I can’t swim!")
と言うが、結局ブッチと一緒に川に飛び降りてしまう。
前述のように「明日に向って撃て!(1969)」を紹介するVTRや、ロバート・レッドフォードを紹介するVTRで、おそらく多くの人が見たことあるフッテージであろう。
(因みに、サンダンス映画祭で有名な、ロバート・レッドフォードが創出したサンダンス・インスティテュートは、この際のレッドフォードの役名:サンダンス・キッドから取られている。)
さて、わが日本にも最近特に評価されている脚本家がいる。
最新作「69 sixty nine」を仕上げたクドカンこと宮藤官九郎である。
主要な脚本担当作品は次の通り。
「池袋ウエストゲートパーク(2000/TV)」、「GO(2001)」、「木更津キャッツアイ(2002/TV)」、「ピンポン(2002)」、「ドラッグストアガール(2003)」、「ゼブラーマン(2003)」、「アイデン&ティティ(2003)」、「木更津キャッツアイ 日本シリーズ(2003)」、「69 sixty nine(2004)」・・・・。
最新作「69 sixty nine」の中にこんなシークエンスがある。
ケン(妻夫木聡)とアダマ(安藤政信)は、大学の全共闘団体に追われ、川にかかる橋の中央に追いつめられてしまう。
橋の両側からジリジリと近づいてくる全共闘。
全共闘から逃れるには、川に飛び込むしかない。
川に飛び込めというケンに対してアダマは、
「泳げないんだ。」
と言うが、結局は川に飛び込んでしまう。
そしてもう一本、宮藤官九郎が脚本を担当した作品「ピンポン」にこんなシークエンスがある。
橋の欄干に登るペコ(窪塚洋介)、後には警官が自転車で近づいてくる。警官の制止を無視し、ペコは橋の欄干から飛ぶ。
"I can fly!"
カメラはペコを中央におさえつつ、ショットガン撮影の発展形のように螺旋を描きつつ、橋の上から一気に上空へ向う。
いかがだろうか。
一度ならずも二度までも自らの脚本に同じようなシークエンスを潜ませる宮藤官九郎。
監督がこれらについて、気付いているかどうか、よくわからないが、これは誰の目にも、名脚本家ウィリアム・ゴールドマンへのオマージュに映るのではないだろうか。
と言うか、それ以外に考えられないのだ。
そして「69 sixty nine」には、「明日に向って撃て!(1969)」の映画史に残る素晴らしいラスト・シーンの直前のシーンを髣髴とさせるシークエンスがある。
南米の警官隊ならぬ工業高校の番長等不良どもにとり囲まれ、喫茶店「ブラックローズ」に閉じ込められてしまうケンとアダマ。
拳銃の弾が金に化けてるんですがね。
因みに、「明日に向って撃て!(1969)」は、1969年の作品である。
つまり、「明日に向って撃て!(1969)」は、「69 sixty nine」の出来事が起きている頃に制作され公開された作品だ、ということなのだ。
必然か偶然か、はたまた宮藤官九郎の目配せか、「69 sixty nine」は「明日に向って撃て!(1969)」へのオマージュに満ちているのだ。
「明日に向って撃て!(1969)」と「大統領の陰謀(1976)」で二度もアカデミー賞(脚本賞、脚色賞)を受賞した、言わずと知れた名脚本家である。
例えば、脚本を担当した主要作品をあげるだけでも、映画史に燦然と輝く多くの傑作・名作が名を連ねる。
主要な脚本担当作品は次の通り。
「動く標的(1966)」、「明日に向って撃て!(1969)」、「華麗なるヒコーキ野郎(1975)」、「マラソン マン(1976)」、「大統領の陰謀(1976)」、「遠すぎた橋(1977)」、「プリンセス・ブライド・ストーリー(1987)」、「ミザリー(1990)」、「アトランティスのこころ(2001)」、「ドリームキャッチャー(2003) 」 ・・・・。
しかしなんと言っても、前述の「明日に向って撃て!(1969)」である。
1890年代のアメリカ西部。銀行強盗のブッチとサンダンスは、南米ボリビアで一旗上げる夢をもっていた。列車強盗に成功した彼らは、サンダンスの恋人エッタとともにボリビアへ向かうが…。19世紀末に鮮烈な軌跡を残した2人のアウトローを、情感豊かに描き出したアメリカンニューシネマの代表作。
『スティング』などの名匠ジョージ・ロイ・ヒルが、ときにはユーモラスに、ときにはリリカルに描いていく。主役のブッチにはポール・ニューマン、サンダンスにはロバート・レッドフォード。そして女教師エッタに名花キャサリン・ロスが扮している。名曲「雨にぬれても」をはじめとするバート・バカラックの軽妙流麗なメロディが、全編を痛切に歌い上げる新感覚ウェスタンだ。(アルジオン北村/Amazon.co.jpのエディターズ・レビューより引用)
さて、その「明日に向って撃て!(1969)」だが、ウィリアム・ゴールドマンはその脚本中に、映画史に残る名セリフを書いているのだ。
全映画の名セリフのベストテン等を選出した場合、かなりの確率で上位に食い込む種類の名セリフであり、「明日に向って撃て!(1969)」を紹介するVTRには必ずといって良いほど、このシークエンスが含まれている。
銀行強盗ブッチ・キャシディ(ポール・ニューマン)とサンダンス・キッド(ロバート・レッドフォード)は、追ってに追われ、断崖絶壁に追いつめられてしまう。
追ってから逃げ延びるためには、遥か下方を流れる川に飛び降りるしかない。
ブッチ(ポール・ニューマン)に川に飛び込めと言われたサンダンス(ロバート・レッドフォード)は、
「オレは泳げないんだ!」("I can’t swim!")
と言うが、結局ブッチと一緒に川に飛び降りてしまう。
前述のように「明日に向って撃て!(1969)」を紹介するVTRや、ロバート・レッドフォードを紹介するVTRで、おそらく多くの人が見たことあるフッテージであろう。
(因みに、サンダンス映画祭で有名な、ロバート・レッドフォードが創出したサンダンス・インスティテュートは、この際のレッドフォードの役名:サンダンス・キッドから取られている。)
さて、わが日本にも最近特に評価されている脚本家がいる。
最新作「69 sixty nine」を仕上げたクドカンこと宮藤官九郎である。
主要な脚本担当作品は次の通り。
「池袋ウエストゲートパーク(2000/TV)」、「GO(2001)」、「木更津キャッツアイ(2002/TV)」、「ピンポン(2002)」、「ドラッグストアガール(2003)」、「ゼブラーマン(2003)」、「アイデン&ティティ(2003)」、「木更津キャッツアイ 日本シリーズ(2003)」、「69 sixty nine(2004)」・・・・。
最新作「69 sixty nine」の中にこんなシークエンスがある。
ケン(妻夫木聡)とアダマ(安藤政信)は、大学の全共闘団体に追われ、川にかかる橋の中央に追いつめられてしまう。
橋の両側からジリジリと近づいてくる全共闘。
全共闘から逃れるには、川に飛び込むしかない。
川に飛び込めというケンに対してアダマは、
「泳げないんだ。」
と言うが、結局は川に飛び込んでしまう。
そしてもう一本、宮藤官九郎が脚本を担当した作品「ピンポン」にこんなシークエンスがある。
橋の欄干に登るペコ(窪塚洋介)、後には警官が自転車で近づいてくる。警官の制止を無視し、ペコは橋の欄干から飛ぶ。
"I can fly!"
カメラはペコを中央におさえつつ、ショットガン撮影の発展形のように螺旋を描きつつ、橋の上から一気に上空へ向う。
いかがだろうか。
一度ならずも二度までも自らの脚本に同じようなシークエンスを潜ませる宮藤官九郎。
監督がこれらについて、気付いているかどうか、よくわからないが、これは誰の目にも、名脚本家ウィリアム・ゴールドマンへのオマージュに映るのではないだろうか。
と言うか、それ以外に考えられないのだ。
そして「69 sixty nine」には、「明日に向って撃て!(1969)」の映画史に残る素晴らしいラスト・シーンの直前のシーンを髣髴とさせるシークエンスがある。
南米の警官隊ならぬ工業高校の番長等不良どもにとり囲まれ、喫茶店「ブラックローズ」に閉じ込められてしまうケンとアダマ。
拳銃の弾が金に化けてるんですがね。
因みに、「明日に向って撃て!(1969)」は、1969年の作品である。
つまり、「明日に向って撃て!(1969)」は、「69 sixty nine」の出来事が起きている頃に制作され公開された作品だ、ということなのだ。
必然か偶然か、はたまた宮藤官九郎の目配せか、「69 sixty nine」は「明日に向って撃て!(1969)」へのオマージュに満ちているのだ。
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