「RE:プレイ」

2004年4月23日 映画
「アイデンティテイー」の脚本家マイケル・クーニーが舞台劇として書いた”POINT OF DEATH”をドイツの俊英ローランド・ズゾ・リヒターが監督した「Re:プレイ」の試写会に行ってきた。

「RE:プレイ」と言うと、音で言うと、ケン・グリムウッドの小説「リプレイ」を思い出す。
おそらく配給会社としては、その辺を含めて邦題を付けていると思うのだが、その辺がディレクションやミス・ディレクションになるような邦題のつけ方はいかがなものかな、と思ってしまう。

2002年7月、交通事故により救急車で聖ユダ病院に運ばれた男サイモン・ケーブル(ライアン・フィリップ)。
サイモンはその際、2分間の心拍停止に陥るが、医師たちの懸命の処置により奇跡的に命を取り留めることになる。
しかし、昏睡から覚めたサイモンは、過去2年間の記憶を失っていた事に気付く。
記憶を失ったサイモンのもとに謎の金髪の女(サラ・ポーリー)や妻だと名乗る黒髪の女アンナ(パイパー・ペラーボ)がやって来る。
しかし記憶を失ったサイモンは何も思い出せず混乱するばかりである。
やがてサイモンは、雨の中、兄ピーター(ロバート・ショーン・レナード)のもとへ向かっていて交通事故に遭ったことを思い出す。
しかしアンナは「ピーターを殺したのはあなたよ」と告げるのであった。
そしてサイモンはMRI検査の睡眠の後目覚めると、2000年の聖ユダ病院に居たのである。
これは夢なのか、それとも・・・・。

本作「RE:プレイ」は、「アイデンティティー」の脚本家が書いた戯曲を原作としていることであるから、観客としては「絶対に騙されないぞ!」という意識で本作を観るのは、仕方が無いことだと思うのである。
事実、わたしは全てを疑い、2000年と2002年の舞台の齟齬、つまり監督からのメッセージを探すことに終始していた。

「アイデンティティー」は、嵐の中のモーテルを舞台にして、登場人物等に一体何が起きているのか、そして犯人は一体誰なのか、ということがすぐわかってしまい、映画の後半は退屈な印象を受けたのであるが、本作はひとつの謎の明確な解明があるわけではなく、複数の解釈が可能な、興味深い作品、大変面白い作品に仕上がっている。

わたし個人的には、スタンリー・キューブリックの「アイズ ワイド シャット」や、デイヴィッド・リンチの一連の夢と現実とを同レベルで描いた作品群と同じような関心を持って観ることが出来た。

本作は「メメント」や「カンパニー・マン」、「イグジステンズ」等の作品、勿論リンチの一連の作品が好きな人には、おすすめできる作品である。

そういった作品を観て、「何がなんだかわからない=理解できないからつまらない=駄作」だと考えるような観客には、残念ながらおすすめできない作品だと思うのだ。

余談だが、途中のMRIのシークエンスは、スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」のオマージュとも言える印象を受けた。
MRIのシークエンスは、「2001年宇宙の旅」のディスカバリー号の船内のようであり、広角レンズの効果的な使い方が、キューブリックを彷彿とさせるのだ。

コメント

tkr

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索