いまどき、何故「転校生」なのかと言うと、賢明な読者諸氏は既にお気付きのように、東京有楽町「日劇2」で開催されている、『「キネマ旬報」創刊85周年記念 ATG映画傑作選 −日劇文化とATG映画の時代−』という企画上映会で「転校生」が上映されたのだ。
ついでに、今回は監督の大林宣彦と、製作総指揮で当時のATGの代表者佐々木史朗のトーク・ショーがあった。
当日夕刻時点で、わたしは観に行くつもりは無かったのだが、今回の上映を逃すと、今後「転校生」を劇場のスクリーンで観る機会が無いのではないかと思ったので、突然行くことにしたのだ。
わたしは基本的に大林映画が好きである。
勿論、大林映画のいくつかの作品には難点があるし、中にはふざけるな、と思う映画もある。
わたしは、何故大林映画が好きなのか、と考えながら大林宣彦と佐々木史朗のトーク・ショーを聞いていたのだが、ひとつ言える事は多くの大林映画には、陳腐な表現だが「映画というメディアに対する愛」に満ちている、ということである。
更に、大林が選択する多くの題材がノスタルジックな上に予定調和的で、わたしの個人的なひとつの嗜好と合致しているのだと思うのだ。
実は、脚本も練りに練られているし、演出の方向性も伏線を生かした良いものになっている。
そんな中でトーク・ショーに続き「転校生」を観た訳だが、一言で言うと当然ながら素晴らしい作品である。
しかし、この度見直してみると、いくつか気になる点があった。
ひとつは、脚本が急ぎすぎで、感情の機微が表現される度合いが少ないのではないか、と思った。
これはわたしの中で「転校生」のエッセンスが濃縮され、美化されていたものとのギャップがそうさせているせいかもしれない。
もうひとつは、映画の雰囲気が自主制作映画のそれに近い、ということである。
役者は勿論のこと、ATG作品と言えども、機材は35mmを使用した商業映画にカテゴライズされるのであるが、演出はストレートで、また尾道の風景を撮った場面は、語弊はあるが適当な映像に音楽を当てはめているだけ、という、ドキュメンタリーや、フィルムで撮影していた時代の「NHK特集」系のテイストを醸し出しているような印象を受けた。
その手法として成熟していない稚拙な手法が、物語の方向性と相まって、素晴らしい効果をあげているのではないだろうか。
少年時代の記憶に訴えかけるための手法なのかも知れない。
トーク・ショーの中で、「劇場のスクリーンは欠落であり、クリエイターはその欠落を埋めている」、「生物の本能が種の保存であれば、わたしは映画を通して間接的に子育てをしたい」というような発言が興味深かった。
ついでに、今回は監督の大林宣彦と、製作総指揮で当時のATGの代表者佐々木史朗のトーク・ショーがあった。
当日夕刻時点で、わたしは観に行くつもりは無かったのだが、今回の上映を逃すと、今後「転校生」を劇場のスクリーンで観る機会が無いのではないかと思ったので、突然行くことにしたのだ。
わたしは基本的に大林映画が好きである。
勿論、大林映画のいくつかの作品には難点があるし、中にはふざけるな、と思う映画もある。
わたしは、何故大林映画が好きなのか、と考えながら大林宣彦と佐々木史朗のトーク・ショーを聞いていたのだが、ひとつ言える事は多くの大林映画には、陳腐な表現だが「映画というメディアに対する愛」に満ちている、ということである。
更に、大林が選択する多くの題材がノスタルジックな上に予定調和的で、わたしの個人的なひとつの嗜好と合致しているのだと思うのだ。
実は、脚本も練りに練られているし、演出の方向性も伏線を生かした良いものになっている。
そんな中でトーク・ショーに続き「転校生」を観た訳だが、一言で言うと当然ながら素晴らしい作品である。
しかし、この度見直してみると、いくつか気になる点があった。
ひとつは、脚本が急ぎすぎで、感情の機微が表現される度合いが少ないのではないか、と思った。
これはわたしの中で「転校生」のエッセンスが濃縮され、美化されていたものとのギャップがそうさせているせいかもしれない。
もうひとつは、映画の雰囲気が自主制作映画のそれに近い、ということである。
役者は勿論のこと、ATG作品と言えども、機材は35mmを使用した商業映画にカテゴライズされるのであるが、演出はストレートで、また尾道の風景を撮った場面は、語弊はあるが適当な映像に音楽を当てはめているだけ、という、ドキュメンタリーや、フィルムで撮影していた時代の「NHK特集」系のテイストを醸し出しているような印象を受けた。
その手法として成熟していない稚拙な手法が、物語の方向性と相まって、素晴らしい効果をあげているのではないだろうか。
少年時代の記憶に訴えかけるための手法なのかも知れない。
トーク・ショーの中で、「劇場のスクリーンは欠落であり、クリエイターはその欠落を埋めている」、「生物の本能が種の保存であれば、わたしは映画を通して間接的に子育てをしたい」というような発言が興味深かった。
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