池袋「新文芸坐」による、「山崎豊子全集」の刊行を記念した『【シリーズ 作家と作品 Vol.1】山崎豊子全映画』という山崎豊子の原作小説の映画化作品全9作品を連続上映する企画で、「白い巨塔」と「ぼんち」を観た。
現在フジテレビ系で絶賛放映中の、『フジテレビ開局45周年記念ドラマ「白い巨塔」』の影響で、原作(新潮文庫版全5冊)を読み、噂に聞く田宮二郎主演の劇場版「白い巨塔」を観る事ができたのである。
しかし、『フジテレビ開局45周年記念ドラマ「白い巨塔」』の影響と言っても、わたしは実際2〜3回しか、唐沢寿明主演「白い巨塔」の放映を見ていない。
その乏しい経験からでも、唐沢寿明主演「白い巨塔」は、従来のテレビドラマの枠を超えた高水準のテレビドラマだと思ってはいるのだが、今回劇場版「白い巨塔」を観て感じたのは、唐沢寿明主演「白い巨塔」は、器は立派だが内容はチープだ、ということである。
派手な演出や、極端なキャラクターに惑わされてしまうが、本来ドラマに必要な「何か」がかけているような気がするのだ。
しかし、この劇場版「白い巨塔」より一般的に評価が高い、田宮二郎版テレビドラマ「白い巨塔」は、どれほど凄いのであろうか。機会があれば是非見たいものだ、といわざるを得ない。
因みに現在、田宮二郎版テレビドラマ「白い巨塔」のDVD−BOXは結構売れているらしい。
さて、劇場版「白い巨塔」であるが、当時「白い巨塔」として出版されていたのは、現在新潮文庫から出版されている第一巻〜第三巻部分で、「続・白い巨塔」として出版された部分(同新潮文庫第四巻〜第五巻)はまだ出版されておらず、この劇場版は新潮文庫で言うと第一巻〜第三巻部分の映画化、ということになる。
物語の骨子は、浪速大学第一外科教授選と誤診裁判第一審であり、ラストがそうなっていることもあり、正に田宮二郎(財前五郎)を主役としたピカレスク・ロマンの様相を呈している。
これは1970〜80年代に角川映画として製作された大藪春彦原作作品、松田優作主演作品のピカレスク・ロマンに通じるものを感じるのだ。
この劇場版「白い巨塔」の脚本の優れている点は、浪速大学第一外科教授選と誤診裁判第一審を同時進行させている点であろう。
これは劇場版の尺の問題もあるのだろうが、原作やテレビ・ドラマでは、教授選が一段落したところで、患者が死亡し誤診裁判へと続くのであるが、劇場版では教授選と誤診裁判を同時進行させることにより、物語の勢いを損なわずに、一気にエンディングまで持っていくパワーを感じる。
仮に、教授選と誤診裁判を映画の前半と後半に配置した場合、ラストまで緊張感が保てるかどうか、という不安が否めない。
今でこそ2時間超の尺を持つ映画は山ほどあるが、当時としては、観客に緊張感を持続させたまま、2時間30分という尺をこなすのは、大変な事だったのではないだろうか。
それを考えると、教授選と誤診裁判とが同時進行する脚本には、ある種敬服の念を持ってしまうのだ。
キャストとしては、田宮二郎の財前五郎は言うに及ばないが、脇を固める役者の鬼気迫る演技合戦は映画ファン冥利に尽きるのだ。
例えば石坂浩二が演じている東第一外科教授はなんと「水戸黄門」の東野英治郎があくの強い憎々しげな東教授を演じているし、江口洋介演じる里見第一内科助教授は、田村高廣が演じている、という具合に大御所役者が脇を固めているのだ。
東野英治郎は黒澤明の「用心棒」でも大きな役を演じているが、「水戸黄門」というより「用心棒」系の印象を受ける。
テレビドラマでは石坂浩二が演じる神経質で押しが弱いキャラクターであるが、東野英治郎演じる東第一外科教授は、教授選において最早黒幕というかフィクサーというか、恐ろしいほどに暗躍し、石坂浩二とは全く違った東第一外科教授を見せてくれる。
また、田村高廣演じる里見第一内科助教授はテレビドラマと比較すると役柄は小さいが、人々が実践できないが理想的名人物と考えるであろう人物を正面から演じている。現代人からすると時代錯誤的な役柄かもしれないが、本来人間が持っている正直で真面目で高邁で孤高な部分のエッセンスたる人物なのである。
更に特筆すべき印象を与えるのは、なんと言っても財前又一であろう。不勉強なもので、劇場版財前又一の役者の名前はわからないが、テレビドラマでは西田敏行がオーバーアクト気味で演じているのだが、劇場版では西田敏行の演技がかすむほどの強烈な印象を与えている。
※ 後日、財前又一を演じたのは、石山健二郎だと判明。
女優陣としては、財前五郎の愛人役の小川真由美は、テレビドラマの黒木瞳との格の違いを見せつけるし、東佐枝子役の藤村志保も矢田亜希子とは雲泥の差である。
思うに、テレビドラマ版「白い巨塔」は一部の俳優を除いて、俳優ではなくタレントであるのが問題なのではないだろうか。
まあ、わたしの言いたいのは、機会があったら是非劇場版「白い巨塔」を観てくれ、ということである。
現在フジテレビ系で絶賛放映中の、『フジテレビ開局45周年記念ドラマ「白い巨塔」』の影響で、原作(新潮文庫版全5冊)を読み、噂に聞く田宮二郎主演の劇場版「白い巨塔」を観る事ができたのである。
しかし、『フジテレビ開局45周年記念ドラマ「白い巨塔」』の影響と言っても、わたしは実際2〜3回しか、唐沢寿明主演「白い巨塔」の放映を見ていない。
その乏しい経験からでも、唐沢寿明主演「白い巨塔」は、従来のテレビドラマの枠を超えた高水準のテレビドラマだと思ってはいるのだが、今回劇場版「白い巨塔」を観て感じたのは、唐沢寿明主演「白い巨塔」は、器は立派だが内容はチープだ、ということである。
派手な演出や、極端なキャラクターに惑わされてしまうが、本来ドラマに必要な「何か」がかけているような気がするのだ。
しかし、この劇場版「白い巨塔」より一般的に評価が高い、田宮二郎版テレビドラマ「白い巨塔」は、どれほど凄いのであろうか。機会があれば是非見たいものだ、といわざるを得ない。
因みに現在、田宮二郎版テレビドラマ「白い巨塔」のDVD−BOXは結構売れているらしい。
さて、劇場版「白い巨塔」であるが、当時「白い巨塔」として出版されていたのは、現在新潮文庫から出版されている第一巻〜第三巻部分で、「続・白い巨塔」として出版された部分(同新潮文庫第四巻〜第五巻)はまだ出版されておらず、この劇場版は新潮文庫で言うと第一巻〜第三巻部分の映画化、ということになる。
物語の骨子は、浪速大学第一外科教授選と誤診裁判第一審であり、ラストがそうなっていることもあり、正に田宮二郎(財前五郎)を主役としたピカレスク・ロマンの様相を呈している。
これは1970〜80年代に角川映画として製作された大藪春彦原作作品、松田優作主演作品のピカレスク・ロマンに通じるものを感じるのだ。
この劇場版「白い巨塔」の脚本の優れている点は、浪速大学第一外科教授選と誤診裁判第一審を同時進行させている点であろう。
これは劇場版の尺の問題もあるのだろうが、原作やテレビ・ドラマでは、教授選が一段落したところで、患者が死亡し誤診裁判へと続くのであるが、劇場版では教授選と誤診裁判を同時進行させることにより、物語の勢いを損なわずに、一気にエンディングまで持っていくパワーを感じる。
仮に、教授選と誤診裁判を映画の前半と後半に配置した場合、ラストまで緊張感が保てるかどうか、という不安が否めない。
今でこそ2時間超の尺を持つ映画は山ほどあるが、当時としては、観客に緊張感を持続させたまま、2時間30分という尺をこなすのは、大変な事だったのではないだろうか。
それを考えると、教授選と誤診裁判とが同時進行する脚本には、ある種敬服の念を持ってしまうのだ。
キャストとしては、田宮二郎の財前五郎は言うに及ばないが、脇を固める役者の鬼気迫る演技合戦は映画ファン冥利に尽きるのだ。
例えば石坂浩二が演じている東第一外科教授はなんと「水戸黄門」の東野英治郎があくの強い憎々しげな東教授を演じているし、江口洋介演じる里見第一内科助教授は、田村高廣が演じている、という具合に大御所役者が脇を固めているのだ。
東野英治郎は黒澤明の「用心棒」でも大きな役を演じているが、「水戸黄門」というより「用心棒」系の印象を受ける。
テレビドラマでは石坂浩二が演じる神経質で押しが弱いキャラクターであるが、東野英治郎演じる東第一外科教授は、教授選において最早黒幕というかフィクサーというか、恐ろしいほどに暗躍し、石坂浩二とは全く違った東第一外科教授を見せてくれる。
また、田村高廣演じる里見第一内科助教授はテレビドラマと比較すると役柄は小さいが、人々が実践できないが理想的名人物と考えるであろう人物を正面から演じている。現代人からすると時代錯誤的な役柄かもしれないが、本来人間が持っている正直で真面目で高邁で孤高な部分のエッセンスたる人物なのである。
更に特筆すべき印象を与えるのは、なんと言っても財前又一であろう。不勉強なもので、劇場版財前又一の役者の名前はわからないが、テレビドラマでは西田敏行がオーバーアクト気味で演じているのだが、劇場版では西田敏行の演技がかすむほどの強烈な印象を与えている。
※ 後日、財前又一を演じたのは、石山健二郎だと判明。
女優陣としては、財前五郎の愛人役の小川真由美は、テレビドラマの黒木瞳との格の違いを見せつけるし、東佐枝子役の藤村志保も矢田亜希子とは雲泥の差である。
思うに、テレビドラマ版「白い巨塔」は一部の俳優を除いて、俳優ではなくタレントであるのが問題なのではないだろうか。
まあ、わたしの言いたいのは、機会があったら是非劇場版「白い巨塔」を観てくれ、ということである。
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