話題の「ジョゼと虎と魚たち」を観た。

雀荘でアルバイトをする大学生の恒夫は、乳母車を押す謎の老婆の噂を耳にする。その乳母車の中身を知る者は誰もいないというのだ。
そんなある朝、恒夫は雀荘の店長に頼まれ、犬の散歩に出掛けると、坂道を転がり落ちてくる例の乳母車と遭遇する。
そして、恒夫が乳母車の中を覗くと、そこには包丁を持った少女ジョゼがいた。
脚が不自由で歩けないジョゼは、老婆に乳母車を押してもらい散歩をしていたのだ。
ジョゼと老婆に朝食を振舞われた恒夫は、彼女の不思議な魅力に次第に惹かれていく・・・・。

物語は、ジョゼという存在に感化され、成長する二人の男女(ここでは恒夫と香苗)を描いている。

勿論異論はあると思うが、ジョゼという存在は、この物語では言わば触媒として作用し、ジョゼにとっては、物語の前後で何ら変わったことは無い、と言えるのだ。
ジョゼの身辺に起きた幾つかの出来事は、ジョゼに変化をもたらす、というよりは、恒夫と香苗の成長とでも言うべき変化の要因となっているのだ。
そしてジョゼは普遍的で超然的な達観した存在として描かれている。

本作の監督は犬童一心。
学生時代から自主制作映画を撮り、ぴあフィルムフェスティバルに入選、その後CM制作、脚本家を経て商業映画の監督となっている、言わば自主制作映画あがりの王道を行っている監督であり、自主制作映画を志す若者の現実的なひとつの目標と言える監督である。

出演は恒夫に妻夫木聡、ジョゼに池脇千鶴。
香苗には上野樹里、ジョゼの祖母に新屋英子。

しかしなんと言っても池脇千鶴である。
勿論弱い部分は見せるものの普遍的、超然的で達観した存在の強烈な印象を観客に与えている。
特に印象的なのは「帰れって言われて、帰るようなヤツは、はよ帰れ!」のシークエンスと、ラストの電動車椅子からエンディングにかけては大変素晴らしい。
このラストが全てなのだろう。
何があっても変わらないジョゼが素晴らしい。

見るべきところが多い作品です。
機会がありましたら、是非観て見てください。

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tkr

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