「キリクと魔女」

2003年12月20日
池袋「新文芸坐」の2003年の傑作・感動作の企画上映「シネマ カーテンコール2003」で、フランスのアニメーション映画「キリクと魔女」を観た。同時上映は「ロスト・イン・ラ・マンチャ」。

はっきり言って素晴らしい映画だった。

物語の舞台はとあるアフリカの村。
ある日、小さな男の子が母親の胎内から自力で生まれ出て、自分でへその緒を切り、自らキリクと名乗るのだった。
キリクが生まれた村は、魔女カラバの脅威に晒されていた。キリクの父親や村の男たちは、カラバに戦いを挑み、その結果みな彼女に喰われてしまった。カラバの呪いによって村の泉は枯れ、黄金も奪われてしまった。そんな中、キリクは「どうして魔女カラバは意地悪なの?」と村人に問いかける。その質問に“お山の賢者”だけが答えられると知ったキリクは、さっそく会いに向かうのだった・・・・。

まず、色彩(発色)が素晴らしい。「クルテク」やカラー創世記の少しハレーション気味のロシア映画のような色彩を感じる。
クリアーでビビットな色彩設計が凄い!!

そしてセリフだ。
冒頭のシークエンスを紹介すると、

キリクが母親の胎内から母親に話し掛ける。
キ「かあさん僕を生んで」
母「お腹の中から話し掛ける子どもは自分で生まれるの」

キリクは自ら生まれ出て、臍の緒を切り、
キ「かあさん僕を洗って」
母「自分で生まれた子どもは自分で洗うの」

キリクは自分で自分の体を洗い、
キ「かあさん僕のとうさんはどこ」
母「魔女カラバに戦いを挑みカラバに喰われたの」
キ「かあさん村の男たちはどこ」
母「魔女カラバに戦いを挑みみんなカラバに喰われたの」
キ「かあさん村の男たちはみんなカラバに喰われたの」
母「いいやおまえのおじがのこっているの。今カラバに戦いを挑みに出かけたところ」
キ「たすけなきゃ」

こんな散文的で、詩的なセリフが永遠に続くのだ。
わたしは日本語吹替版を観たのだが、原語もおそらく、散文的なセリフなのだろうと思われるが、翻訳も素晴らしいのだ。

物語は、魔女が村を脅かし、小さな子キリクが魔女の謎を解き、村に平和をもたらす。という神話的、普遍的物語。
従って全ての民族にアピールする力を持っている映画なのだ。

そして音楽。
これは以前、「しりとり界に革命を起こした」と言われたユッスー・ンドゥール。
素朴で打楽器を中心としたソウルフルな音楽は力を持っており、特にキリクを称える一連の唄が素晴らしい。

因みにこのユッスー・ンドゥール、日本ではホンダ「ステップ・ワゴン」のCFでビートルズの「オブラディ、オブラダ」をカバーしたことで有名ですね。

この「キリクと魔女」は、全ての民族にオススメできる一本なのだ。

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tkr

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