2003/12/01「王の帰還」のワールド・プレミアが大々的に本「ロード・オブ・ザ・リング」三部作の監督であるピーター・ジャクソンの故郷でもあるニュージーランドの首都ウェリントンで開催されました。

このワールド・プレミア開催前に、「旅の仲間」、「二つの塔」でサルマンを演じたクリストファー・リーは、「王の帰還」における自らの出演シーンの全てをカットされた事により、「王の帰還」のワールド・プレミアを欠席する、という旨の報道がありました。

当初は、「二つの塔」の冒頭に「旅の仲間」のガンダルフVSバルログのシークエンスを導入部として挿入したように、「二つの塔」のサルマンのシーンを、「王の帰還」の冒頭に挿入する予定だった訳ですが、結果的には「新しい物語のはじまりにふさわしくない」という理由で、サルマンのシーン(7分間)がカットされた模様です。

わたしは、クリストファー・リーがワールド・プレミアに出席したかどうかの報道に接していないので、実際の状況はわかりませんが、自他認める「指輪物語」の大ファンであるクリストファー・リーが自ら出演した「ロード・オブ・ザ・リング」三部作の最終作のワールド・プレミアに出席できないような状況に置かれるなど、彼の失望は非常に大きなものだったと類推できます。


さて、表題の「二つの塔/スペシャル・エクステンデッド・エディション」国内版DVDの発売についてですが、「ロード・オブ・ザ・リング」三部作については、最早前提条件として、既成事実のように「劇場公開版」と「スペシャル・エクステンデッド・エディション」がある訳です。
また多くの作品に、「劇場公開版」と「ディレクターズ・カット」、「劇場公開版」と「完全版」が存在します。
だとすると、われわれが高い入場料を払って観た「劇場公開版」は、ある意味「不完全版」だと言うのでしょうか。


従来、「ディレクターズ・カット」や「完全版」というバージョンは、製作会社や配給会社の都合で監督の意志に関わらず削除されたカットやシーン、シークエンスをビデオソフトやDVDの発売を期に収録したり、また幸運な映画の場合は、劇場で公開されたりしています。
また、地域ごとの諸事情に応じて地域ごとに異なったバージョンが公開されるケースも多々あります。


しかしながら、これらのケースと「ロード・オブ・ザ・リング」のような「スペシャル・エクステンデッド・エディション」ありきのケースでは次元が異なるのではないでしょうか。

「ロード・オブ・ザ・リング」の場合、カットされたシーンやシークエンスが「スペシャル・エクステンデッド・エディション」に収録されるのは自明の理であり、「スペシャル・エクステンデッド・エディション」が存在する事を前提として、多くのシーンがカットされ、将来「スペシャル・エクステンデッド・エディション」に収録されるはずのシーンがカットされた状態で「劇場公開版」が公開されているのです。

一般的には、「劇場公開版」からカットされたシーンやシークエンスはほとんどの場合、観客の目に触れる事は無く、「ディレクターズ・カット」や「完全版」が制作されるような幸運な映画に限って、観客はカットされたシーンや
シークエンスを観る事が出来る訳です。


ところで、「劇場公開版」から監督の意志に関係なくシーンやシークエンスがカットされる最大の理由は興収です。

長すぎる映画は、1日あたりの上映回数が4回から3回に減り、単純計算で興収は3/4になります。

勿論、監督が意図した作品ではなく、製作者が編集を行う事によって、つまり編集次第で、監督の独りよがり的つまらない映画でも、製作が鋏を入れることにより、客を入れることが出来る可能性もあるのです。

これは逆に、つまらない映画をコケさせないために、大々的なプロモーション・キャンペーンを行ったり、北米でコケそうな映画を、北米の公開時のコケ情報が出る前に日本国内で駆け込みで日米同時公開するような事にも繋がるのではないでしょうか。

将来の映画界のことを考えると、この辺のところにも、問題点や改善点があるのかも知れません。

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tkr

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