ひとりで出来る自主制作映画

その10 初心者にとって脚本とはそんなに重要なものなのか

映像作家の初心者に対する助言のうち、最もポピュラーなものは「先ず脚本を書け」でしょう。
事実インターネット上の掲示板などに「将来映画監督になりたいのですが、最初に何をやればいいでしょうか?」という書き込みをしたような場合、多くの場合、脚本を書く事を薦められると思います。

しかし、これから映像作家を目指そうとしているずぶの素人が一人前の映像作家となる過程の第一段階として、脚本を執筆させることがそんなに重要なのでしょうか。脚本の執筆はそんなに優先順位が高い工程なのでしょうか。
わたしは常々疑問に思っていました。

例えば仮に、全く経験の無い人がシンガー・ソング・ライター(表現は古いですが、自らが作詞・作曲した楽曲を演奏する人のこと)を目指す場合、その人に対し「シンガー・ソング・ライターの基本は作詞・作曲だ。先ず作詞・作曲の勉強をしなさい。」と助言すべきなのでしょうか。
それよりは表現手法の向上、例えばヴォーカルや、ギター・キーボード等の楽器演奏のテクニックを向上させる方が先決であり、最優先事項なのではないでしょうか。
そして、そのシンガー・ソング・ライターが表現したい事柄を見つけるのは、その練習過程の途中だったり、普段の生活からだったのするのではないでしょうか。
勉強だから、基本だからと言って、無理矢理作詞・作曲をさせられるより、自然発生的に表現したい事柄を発見し、作詞・作曲に取り組むほうが自然だと思います。

ですから同様に、わたしは映像作家初心者の方々に対し、はじめの一歩として、脚本を書いたり、企画を立てたり、その企画を温めたりするような事をあまりお奨めしません。
それだったら、語弊はありますが、なんでも良いから撮影・編集・録音という映像作品を制作する上で重要な工程を何度も何度も経験し、いくつも作品を完成させ、それらの工程に必要な技術やセンスを研くことを強くお奨めします。
そして、映像作品の制作や、普段の生活の中から、映像作品として実現したいビジョンやコンセプトを発見し、その上で企画や脚本を立ち上げていけば良いのではないでしょうか。

とは言うものの、既に企画や脚本を持っている方が、その企画を実現する為に自主制作映画という手段を取る。という事であるならば、それはそれで全く問題はありませんし、それもひとつの正しい方法論だと思います。

ここで、わたしが危惧しているのは、自主制作映画の基本は脚本だ、と言って、朝から晩まで脚本ばかり書き続け、脚本はどんどん完成していく一方、一向に映像作品の自主制作に入る事が出来ない、という本末転倒的な状況に陥ってしまう事なのです。

何故こんな事をくどくどお話しているかと言いますと、以前もお話しましたが世の中には、自主制作映画の団体を立ち上げたのは良いが、脚本ばかり書き続けて、一向に映像作品の自主制作がスタートできず、自分が制作したい理想の映画の話や、商業映画の批判しかしない、という状況のまま空中分解したり、自然消滅してしまう団体が残念ながら多いのです。わたしは、みなさんにそうなってもらいたくないからなのです。

という訳でわたしは、映像作家の初心者の皆さんには、すぐに実現できないような脚本を何本も何本も書き続けるくらいなら、取りあえず何でもかんでも撮影し、なんでもかんでも編集し、なんでもかんでも録音し、映像作品を何本も何本も制作していく事をお薦めします。

何しろ、あなたがなりたいのは、脚本家ではなく、監督なんですからね。

ひとりで出来る自主制作映画 その11
http://diarynote.jp/d/29346/20031007.html

ひとりで出来る自主制作映画 その1
http://diarynote.jp/d/29346/20030806.html
 
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