マイケル・ムーア監督作品「ボウリング・フォー・コロンバイン」を観た。

本作は東京では「恵比寿ガーデンシネマ」でしばらくの間ロングラン上映されていたのであるが、わたしは結果的に見逃してしまい、非常に残念な思いをしていた。

で、わたし的「見逃してしまった映画の最後の砦」とも言える池袋「新文芸坐」のしかも最終日でなんとか観ることが出来たのだ。


はっきり言って、素晴らしい作品だった。

こういった作品の前では、わたしは語る言葉を持たないし、この作品は既にDVD国内版も発売されており、今後も目にする機会が多いと思うが、是非観て欲しい素晴らしいドキュメンタリー映画なのだ。

しかも泣けるのである。
わたし的泣けるポイントは二箇所。
ルイ・アームストロングの "What a Wonderful World" をバックにかつてのアメリカが行なってきた政治的事象を紹介する場面。
そして、ジョーイ・ラモーンがカバーした "What a Wonderful World" のエンド・クレジットである。
この曲の使い方が、常軌を逸しているほどシニカルで、強烈に強烈な印象を与える。
ああ、なんて素晴らしい世界に、愚かな人類なのだろうか。

このへんは誤解を恐れずわたしの感性で言わせて貰えば、スタンリー・キューブリックの「博士の異常な愛情」のエンディングと同じような感動をおぼえた。
ああ、なんて人類は愚かなんだろうか。

また、キューブリック繋がりでは、途中のボウリングのシークエンスで「第九」をつかうあたり、またエンド・クレジット直前のマイケル・ムーア本人のボウリングの「神は天にいまし、世は全てことも無し」的感覚は「時計じかけのオレンジ」的な感慨すら与えるだろう。
と考えると、音楽の使い方はキューブリックの影響があるのではないだろうか。

マイケル・ムーアの視線は、ユーモアと愛情に溢れつつ、非常な皮肉に満ちている。
本来ならば、悲惨で直視できないような構成になるような題材であるが、彼の容姿がそうさせるのか、彼のスタンスがそうさせるのか、とっつきはシニカルなコメディ・タッチで観客の心を鷲掴みにし、結果的には、観客にアメリカの銃社会について大いに考えさせ、もしかしたら、もしかしたらだが、観客の人生観や思想を変えさせる程の可能性を秘めた作品かも知れない。

コメント

tkr

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索