「ファム・ファタール」
2003年8月30日奇才ブライアン・デ・パルマの新作、話題の「ファム・ファタール」を観た。
前作「ミッション・トゥ・マーズ」と異なり、デ・パルマの面目躍如たる作品に仕上がっている。
はっきり言って大変素晴らしい映画である。
私見ではあるが、先日観た「HERO/英雄」が霞んでしまうほどである。
形式的なところでは、「キャリー」を髣髴とさせるスプリット・スクリーンの多用。
また、音と写真との違いはあるが「ミッドナイトクロス」のような印象も受ける。
更に「レイジング・ケイン」のショック・シーンを思わせるような、まるでセルフ・オマージュのようなショック・シーンや、物語の構成も見られる。
またアルフレッド・ヒッチコックの作品からも多くの影響が見え、本編だけではなく、様々な作品からの引用も、愉しい映画と言えるだろう。
ここでは、物語についてのお話はしませんが、非常に緻密に構成された、大人の鑑賞に堪えうるサスペンス映画に仕上がっている。
前段のシークエンスが導入でしかないのも興味深い。
撮影はティエリー・アルボガスト。リュック・ベッソン系の作品で知られる彼の切る取る画は、デ・パルマの感性と合致しているのか、背景の隅々に写っている物を、効果的に写しだしている。
また、物語のキーとなる様々なアイテムを密かに、それでいながら印象的に撮影し、それが効果的に作用している。
音楽は前々作「スネーク・アイズ」に続き坂本龍一。デ・パルマのファン的には非常に否定的な意見が多いようであるが、わたし的には「ボレロ」のような単調な動機の繰り返しが徐々に盛り上がる曲と、デ・パルマのスロー・モーション的な観客をイライラ、ジリジリとさせるある種スローモーな演出方法(静のアクション)と相まって、素晴らしい効果を与えているのではないだろうか。
編集はデ・パルマ組のビル・パンコウ。今回はアントニオ・バンテラスの登場シークエンスでスプリット・スクリーンが多用されており、またラストのアクション・シークエンスで、非常に効果的な技を披露している。
脚本は勿論ブライアン・デ・パルマ。
こんな良い脚本を書けてしまうのも凄いが、破綻無く演出し、監督してしまうのも凄いのだ。
ラストは賛否両論だが、わたし的には賛成票を投じたい。また本作は前述のアルフレッド・ヒッチコックや、デヴィッド・リンチ、スタンリー・キューブリック等が好みそうな物語であるが、完全なデ・パルマ作品として完成されている。
俳優的には、なんと言ってもレベッカ・ローミン=ステイモスに尽きる。
妖艶でセクシーで、恐ろしく、知的で、可愛い女をそれぞれの場面で演じ分けている。
髪型や髪の色が変わることにより、人格や人物が異なっていく様子は、これもまたアルフレッド・ヒッチコックの影響を感じる。
彼女はオープニング・シークエンスより、中盤から後半にかけて、死と再生のメタファーを潜り抜ける度に、だんだんと魅力的になっていくのだ。
「蛇のビスチェ」強奪犯の首領エリック・エブアニーは、冒頭のセリフは説明的でいただけないが、印象的な役者である。
また強奪犯一味のエドュアルド・モントートもほんわか超絶とした存在感で、殺伐とした中、良い雰囲気を醸し出している。
で、パパラッチであるアントニオ・バンデラスであるが、今回はいつものギラギラ・フェロモンが少し抜けた、良い役を演じている。
中盤の自分を守るべく悪戦苦闘する姿が面白い。
知的ではあるが、それほど切れ者ではない普通の青年(ヒーローではなく、普通の人間)を演じているのが脚本的に良かったのではないだろうか。
出来ることなら、こういった方向性で今後もサスペンス映画を撮っていって欲しいものだ。
デ・パルマ最高!
という感じの一本である。
前作「ミッション・トゥ・マーズ」と異なり、デ・パルマの面目躍如たる作品に仕上がっている。
はっきり言って大変素晴らしい映画である。
私見ではあるが、先日観た「HERO/英雄」が霞んでしまうほどである。
形式的なところでは、「キャリー」を髣髴とさせるスプリット・スクリーンの多用。
また、音と写真との違いはあるが「ミッドナイトクロス」のような印象も受ける。
更に「レイジング・ケイン」のショック・シーンを思わせるような、まるでセルフ・オマージュのようなショック・シーンや、物語の構成も見られる。
またアルフレッド・ヒッチコックの作品からも多くの影響が見え、本編だけではなく、様々な作品からの引用も、愉しい映画と言えるだろう。
ここでは、物語についてのお話はしませんが、非常に緻密に構成された、大人の鑑賞に堪えうるサスペンス映画に仕上がっている。
前段のシークエンスが導入でしかないのも興味深い。
撮影はティエリー・アルボガスト。リュック・ベッソン系の作品で知られる彼の切る取る画は、デ・パルマの感性と合致しているのか、背景の隅々に写っている物を、効果的に写しだしている。
また、物語のキーとなる様々なアイテムを密かに、それでいながら印象的に撮影し、それが効果的に作用している。
音楽は前々作「スネーク・アイズ」に続き坂本龍一。デ・パルマのファン的には非常に否定的な意見が多いようであるが、わたし的には「ボレロ」のような単調な動機の繰り返しが徐々に盛り上がる曲と、デ・パルマのスロー・モーション的な観客をイライラ、ジリジリとさせるある種スローモーな演出方法(静のアクション)と相まって、素晴らしい効果を与えているのではないだろうか。
編集はデ・パルマ組のビル・パンコウ。今回はアントニオ・バンテラスの登場シークエンスでスプリット・スクリーンが多用されており、またラストのアクション・シークエンスで、非常に効果的な技を披露している。
脚本は勿論ブライアン・デ・パルマ。
こんな良い脚本を書けてしまうのも凄いが、破綻無く演出し、監督してしまうのも凄いのだ。
ラストは賛否両論だが、わたし的には賛成票を投じたい。また本作は前述のアルフレッド・ヒッチコックや、デヴィッド・リンチ、スタンリー・キューブリック等が好みそうな物語であるが、完全なデ・パルマ作品として完成されている。
俳優的には、なんと言ってもレベッカ・ローミン=ステイモスに尽きる。
妖艶でセクシーで、恐ろしく、知的で、可愛い女をそれぞれの場面で演じ分けている。
髪型や髪の色が変わることにより、人格や人物が異なっていく様子は、これもまたアルフレッド・ヒッチコックの影響を感じる。
彼女はオープニング・シークエンスより、中盤から後半にかけて、死と再生のメタファーを潜り抜ける度に、だんだんと魅力的になっていくのだ。
「蛇のビスチェ」強奪犯の首領エリック・エブアニーは、冒頭のセリフは説明的でいただけないが、印象的な役者である。
また強奪犯一味のエドュアルド・モントートもほんわか超絶とした存在感で、殺伐とした中、良い雰囲気を醸し出している。
で、パパラッチであるアントニオ・バンデラスであるが、今回はいつものギラギラ・フェロモンが少し抜けた、良い役を演じている。
中盤の自分を守るべく悪戦苦闘する姿が面白い。
知的ではあるが、それほど切れ者ではない普通の青年(ヒーローではなく、普通の人間)を演じているのが脚本的に良かったのではないだろうか。
出来ることなら、こういった方向性で今後もサスペンス映画を撮っていって欲しいものだ。
デ・パルマ最高!
という感じの一本である。
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