とある掲示板で、最近スタンリー・キューブリック監督作品「時計じかけのオレンジ」について様々な議論を交わしている訳であるが、思うに「時計じかけのオレンジ」という映画は、わたしが(勿論劇場で)観た回数が一番多い映画の一本であるのだ。

ここではそんな「時計じかけのオレンジ」が如何に素晴らしい作品であるとか、こんな解釈が出来る、とかいうことを一切書かず、わたしと「時計じかけのオレンジ」の関わりを簡単に紹介したいな。というコンセプトで書いてみたいのだ。
多分に自慢話的な話になってしまう危惧はあるのだが、その辺はご容赦願いたい。


わたしの記憶では、初めて「時計じかけのオレンジ」を観たのは高校生の頃だったと思う。
それ以来、リバイバルがある度に、劇場に足を運び、時間に余裕のある大学時代には、毎日劇場に足を運び、1日3回位ずつ「時計じかけのオレンジ」を観たりしていた。

フィルムを追っかけるように、いろいろな劇場のリバイバル上映を追っかけていくと、フィルムの個々の違いに目がいく様になり、フィルムの切れた箇所で、コマが飛んだり、音声が途切れるところ、巻が換わる際にフィルムに登場する緑の物体(スクラッチ)の出現位置を覚えたりも出来るのだ。
勿論セリフやカット割、音楽なんかも覚えたりするのだがね。

そんなことをやっていると、どうしても家庭で「時計じかけのオレンジ」が観たくなるのは人情であるが、この「時計じかけのオレンジ」は、1980年代、「アメリカン・グラフィティ」、「ブルース・ブラザース」と並び、永らく国内版ビデオ・ソフトが版権やヘア該当シーンの関係で出ないベスト3作品と言われていたのである。

しかしながら、北米国内版のビデオ・ソフトは存在する訳で、それをなんとか国内に持ち込もう、という動きが広まっていた。
ビデオを購入する為に、海外旅行をするのもおかしな話だが、日本国内持込不可の作品として税関で止められてしまう「時計じかけのオレンジ」を国内に持込むため、誰もが涙ぐましい努力を重ね、多くのソフトが税関で没収されてしまっているのだ。

海外旅行をする友人には欠かさず「時計じかけ」と「ブルース・ブラザース」のビデオを買って来い。と言うのは、当時では最早合言葉のようなものなだったのだ。

1980年代後期、それでもなんとか日本国内に「時計じかけのオレンジ」のビデオ・ソフトをいわば密輸し、日本国内市場でも、あるところにはある。という状態だったし、どうすれば税関を突破できるか、という情報すら口コミで実しやかに流れたりしていたのである。

で、わたしは渋谷のとある輸入映像ソフト屋で「時計じかけのオレンジ」のビデオ・ソフトを購入する訳だが、当時日本国内販売しているソフトはヘアの該当シーンがなんと消去されているのだ。冒頭付近の劇場のシークエンスと作家の家のシークエンスで消去されたビデオ・ソフトは砂嵐状態なのだ。
消去されていないソフトはアンダー・グラウンド・マーケットで5万円とか10万円で売買されていたらしい。
消去されているものは、当時5千円から1万円程度だった。

で、ビデオ・ソフトを入手したからには、こんどはLDが欲しくなる。というのは人情で、LDなら、物理的に部分的に消去する事はできないので、国内に入ったものを入手すれば、これは完全にノーカット無修正版なのだ。

で、わたしはやはり渋谷のとある輸入映像ソフト屋で購入するわけだが、店のバックヤードから30センチ×30センチのサイズの「時計じかけのオレンジ」のLDソフトが出てきた日にゃあ、これは感涙ものだったのだ。苦節10年、やっとわがもとに来たか。という具合だ。
多分これは、1989年頃の話だったと思う。

確か1991年には、ヘア描写の芸術的解禁を受けてノーカット無修正版の「時計じかけのオレンジ」日本国内版が発売されることになったのであるが、何故だかわたしは購入しなかったのである。
DVDと違って字幕が消せないLDの字幕は最早邪魔な存在となっているのであった。

現在では、「時計じかけのオレンジ」の無修正版国内版DVDソフトがどこでも購入できる訳だが、1980年代から、現代までの「時計じかけのオレンジ」のソフトは、ヘア描写の自由との、戦いに打ち勝ってきた記憶とともに、語り継がれるのだよ。諸君!

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tkr

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