トマス・ハリス原作、レクター三部作の第一作目となる「レッド・ドラゴン」を観た。

ところでこの「レッド・ドラゴン」ですが、実は一度映画化されてまして、タイトルは「刑事グラハム/凍りついた殺意」でした。勿論「羊たちの沈黙」が大ヒットする前の話ですけど。「羊たちの沈黙」のヒット後、ビデオで再販された際タイトルが「レッド・ドラゴン/レクター博士の沈黙」と改題されたと思いますが・・・・。

余談ですが、わたしは読書好きでして、トマス・ハリスの作品は出版時に全て読んでいまして、と言ってもトマス・ハリスの作品は「ブラック・サンデー」とレクター三部作の4作品しかありませんが・・・・。
で、本作の原作はレクター三部作の中でも非常に面白い小説でした。

さて本作「レッド・ドラゴン」ですが、その原作をほぼ忠実に映画化していました。
勿論時代的な問題(メディアの発達)から、ダラハイドの職業が微妙に変わってますけどね。
また、本作に続く「羊たちの沈黙」に向けて、クロフォード部長を除き、残念ながらスコット・グレンがハーヴェイ・カイテルになってしまっていますが、チルトン博士やバーニー等、「羊たちの沈黙」と同じキャストをそろえているのが非常にうれしいです。
ところで、スコット・グレンのクロフォード部長は「羊たちの沈黙」で右手に腕時計をしていたのですが、ハーヴェイ・カイテルは左手に腕時計をしていて、ちよっとがっかりです。体型も随分違いますしね。ただの部長刑事という感じですね。

あと映画のフォーマットとしては、三部作で初めてのシネスコですね。
広い画面を非常に効果的に使っていました。
監督は「ラッシュ・アワー」シリーズのブレッド・ラトナーだったんで、わたし的には非常に不安があったのですが、原作に忠実に、監督独自の変な解釈を入れず素直に作っている関係で問題は無かったですね。ソツなく演出されているので安心しました。
また、オープニングでのレクターとグレアムのコラボレーションの結末をプロローグとしてつけたのは、非常に評価できます。
ラストのクラリス・スターリングの訪問を思わせるチルトン博士のセリフは蛇足だと思いますがね。

ただ、最大の問題点としては、ダラハイドのキャラクター設定が、よくあるサイコ・キラーの類型的な犯人像にかぶってしまっています。半分くらいはノーマン・ベイツが入っているし、部屋の感じやスクラップ・ブックの描写は、昨今のサイコ・キラー作品で既に手垢がついてしまった感が否めません。
勿論、原作が1981年の出版ということもありますが、描写の古臭さは、なにを今更、という印象がぬぐいきれません。
そう考えると、アルフレッド・ヒッチコックの「サイコ」は偉大だったなと感じます。
アンソニー・パーキンス演じるノーマン・ベイツのキャラクターは、映画史に多大なる影響を与えているのです。

ところで、オープニングの演奏会シーンですが、指揮棒を振ってるのはなんとラロ・シフリンだそうです。(わたしの映画バカ友人情報)多分クレジットされていないと思います。

音楽はダニー・エルフマンで、神経を逆なでするようなスコアは賛否両論です。

キャストは、アンソニー・ホプキンスについては、特に言うこと無いです。期待通りの安心できるレクター像でした。
わたしは気がつきませんでしたが、レクターは指が6本ありましたかね?

エドワード・ノートンは、裸になると腹が少し出ているのがなんとなくリアリティがあってよかったです。

レイフ・ファインズはやはりノーマン・ベイツの亡霊を見ているような役作りで、ちょっと残念です。ただ、マッチョな感じや全裸のシーン等での頑張りは評価できるでしょう。
また、母親からの虐待の描写は映画では難しいと思いますが、サラッと流しつつ上手く描写してますね。ラストのグレアムとの対決に流れていく感じは良かったです。
あと、予告編で流れている「パパの友達だ」のシークエンスはカットして正解ですね。

ハーヴェイ・カイテルはちと残念です。前述のように、ただのたたき上げの部長刑事のような役柄です。FBIの行動科学課をまとめていく器とは思えないです。

チルトン博士のアンソニー・ヒールドの特殊メイクのような顔立ちでしたが、例によって良い感じの悪役振りでした。

エミリー・ワトソンも良かったですね。
盲目の人の普段の生活の描写が新鮮でした。
爪楊枝とか、カップに指を入れ、コーヒーを注ぐとことか。

あとは、この盲目のリーバとダラハイドの恋愛が所謂異形の恋(フランケンシュタインの恋的な)を切なく描写しているのが良かったです。

フィリップ・シーモア・ホフマンもまあ良かったのですが、もう少しいやらしいブンヤが見たかったです。ちょっと優しい真面目な新聞記者っぽかったですよね。もっともっと、特ダネのためなら、どんなえげつないこともやるような役柄を期待してました。

あと気になったのは「咬み付き魔」ですけど原語では、"tooth fairy"でしたね。
大衆紙タトラーにしてはちと可愛い名前ですね。
"tooth fairy"って、抜けた歯を枕の下に置いておくと、コインと取り替えてくれる妖精ですよね。


「レッド・ドラゴン」
"RED DRAGON"
監督:ブレッド・ラトナー
出演:アンソニー・ホプキンス、エドワード・ノートン、レイフ・ファインズ、ハーヴェイ・カイテル、エミリー・ワトソン、メアリー=ルイーズ・パーカー、フィリップ・シーモア・ホフマン、アンソニー・ヒールド、ケン・リュン、フランキー・フェイソン、タイラー・パトリック・ジョーンズ
2002年度作品/ユニヴァーサル映画/ディノ・デ・ラウレンティス・カンパニー/UIP配給/シネマスコープ/3,429m/7巻/DTS、ドルビーデジタル、SDDS:SR/上映時間:2時間5分/翻訳:戸田奈津子

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