「ボーン アイデンティティー」
2003年2月9日ロバート・ラドラム原作、マット・デイモン主演「ボーン アイデンティティー」を観た。
いつだったか、「ボーン アイデンティティー」の予告編を初めて見た際、軽い誤解をしてしまいました。
その映画の予告編ではこの映画「アイデンティティー」は、ベストセラー小説の映画化をうたっていたのですが、ラドラムの名前が出てこなかったのです。(気づかなかっただけかもしれませんが・・・・。)
で、わたしは『なんだこの映画は!プロットがラドラムの「暗殺者」そのままじゃないか!ラドラムのパクリの小説が最近出版されたのか!?』と思ってしまったのです。
で、自宅に帰り、小説「暗殺者」を確認したところ、原題が"THE BOURNE IDENEIEY"だと言うことを知り「ボーン アイデンティティー」がラドラムの小説「暗殺者」の映画化だと知ったのです。
つまりわたしは、あやうく大恥をかくところだったのです。
余談ですが、わたしは所謂スパイ小説が好きです。
ジョン・ル・カレとか、レン・デイトンや、その辺から派生してブライアン・フリーマントル、ジャック・ヒギンズ、トム・クランシー等々ですね。
で、わたしはどちらかと言うと、アクション的に地味目で、緊張感溢れ、寒気のする伏線の嵐的な、非情なスパイ小説が好きなんです。映画の脚本的に例えるならば、スパイ映画という訳ではありませんが、「ユージュアル・サスペクツ」とか「スパイ・ゲーム」、「コンドル」、「追いつめられて」等でしょうか。
本作ですが、舞台背景とか雰囲気は冷戦当時を再現しているのですが、物語の時代背景は現代ということが、若干の問題ではなかったかな?と思いました。
時代背景を現代にすることで、この映画では、近代のスパイ・アクション映画になれた観客は、この程度のアクション的な盛り上がりでは納得しないのではないかと思いました。
つまり、スパイ映画とは言うものの、中途半端なアクションと、盛り上がりに欠けるラスト近辺で、映画に期待したカタルシスが得られないのではないか、ということである。
また、地味で非情なスパイ映画を望む観客には、この映画に対して頭脳戦的な期待もあったと思うのですが、頭脳戦としても残念ながら中途半端な印象を受けました。
アクション、頭脳戦ともに中途半端で、最後はラヴ・ストーリーになってしまうメロウなハリウッド・テイストのスパイ映画になってしまい、ちと残念な印象を受けました。
しかし、冷戦当時の再現的にも感じられる舞台背景(勿論時代背景は現代なのですが、選択された舞台やプロップ等の印象から)は、ヨーロッパ映画のテイストで、非常に好感を感じます。
最近では、ジョン・フランケンハイマーの「ローニン」のイメージに近いですかね。
マット・デイモンは残念ながら、ピンで観客を呼べる俳優では無いので、ちょっと厳しいですが、彼はとっても頑張ってます。地味なアクション映画ですが、緊迫感を持って演じ、良い印象を受けました。
あとはラストのブライアン・コックスの公聴会シーンがよかったですね。まるで「カサンドラ・クロス」のラストのような、寒気のするラストでした。
この人、「レッド・ドラゴン」の一回目の映画化「刑事グラハム/凍りついた欲望」の際ハンニバル・レクターを演じてますね。
クリス・クーパーは、結構良い味だしてますね。
良い悪役を演じてます。
エージェント「教授」を演じるクライヴ・オーウェンもエキセントリックなプロフェッショナルを演じ、強烈な印象を与えています。
ヒロインのフランカ・ポテンテは、ちょっとパニック映画のばかな女性的な役柄が入っていましたが、結構打算的な部分と感情に流される部分があり、面白かったです。
今後も頑張って欲しいですね。
余談ですが、ラドラムの小説の面白さを端的に現したコラムがありますので、ちよっと引用します。
=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=
「真夜中の電話」
Dr.アンソニー・ショー
1982 リーダーズ・ダイジェスト誌のコラムより
アメリカの東海岸で開かれる医学会に出席したときの話だ。飛行機の中で小説でも読もうと、ロバート・ラドラムの最新作を買い求め、いつものように、見返しに名前と住所を書き込んだ。そしてジャンボ機が離陸するとすぐさま、ラドラムのアクションと策略に満ちた世界に没頭した。
飛行機はやがてフロリダのカンパ国際空港に近づき、着陸態勢に入った。私は着陸するまでに読み切ってしまおうとがんばったが、結局、13ページ残ってしまった。すでに読み終えた522ページを持ち歩くのも面倒なので、残ったページを破り取って上着のポケットに入れ、あとは機内のシート・ポケットに突っ込んだ。そして、ホテルに向かうタクシーの中で、胸躍る最終章を夢中になって読みついだ。読み終えたときには、思わずほっとため息をついたものだ。
さて、ロサンゼルスの自宅に戻った直後のことだ。一息入れていると電話がなった。時刻は午前1時。「ショー先生ですね?」と緊迫した男の声が耳に飛び込んできた。「こんな時間にお電話して申し訳ありません。今、ニューオーリンズは午前3時です。でも、ぜひ教えていただきたいんですよ。あの本の結末がどうなったのか!」
=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=
これだよ!これ!
「ボーン アイデンティティー」
"THE BOURNE IDENEIEY"
2002年/アメリカ作品/ユニヴァーサル映画提供/UIP配給/シネマスコープ/7巻:3.260m:10,704f/DTS、ドルビーデジタル、SDDS:SR/1時間59分/翻訳:戸田奈津子
監督:ダグ・リーマン
出演:マット・デイモン、フランカ・ポテンテ、クリス・クーパー、クライヴ・オーウェン、ブライアン・コックス、アドウェール・アキノエ=アグバエ
いつだったか、「ボーン アイデンティティー」の予告編を初めて見た際、軽い誤解をしてしまいました。
その映画の予告編ではこの映画「アイデンティティー」は、ベストセラー小説の映画化をうたっていたのですが、ラドラムの名前が出てこなかったのです。(気づかなかっただけかもしれませんが・・・・。)
で、わたしは『なんだこの映画は!プロットがラドラムの「暗殺者」そのままじゃないか!ラドラムのパクリの小説が最近出版されたのか!?』と思ってしまったのです。
で、自宅に帰り、小説「暗殺者」を確認したところ、原題が"THE BOURNE IDENEIEY"だと言うことを知り「ボーン アイデンティティー」がラドラムの小説「暗殺者」の映画化だと知ったのです。
つまりわたしは、あやうく大恥をかくところだったのです。
余談ですが、わたしは所謂スパイ小説が好きです。
ジョン・ル・カレとか、レン・デイトンや、その辺から派生してブライアン・フリーマントル、ジャック・ヒギンズ、トム・クランシー等々ですね。
で、わたしはどちらかと言うと、アクション的に地味目で、緊張感溢れ、寒気のする伏線の嵐的な、非情なスパイ小説が好きなんです。映画の脚本的に例えるならば、スパイ映画という訳ではありませんが、「ユージュアル・サスペクツ」とか「スパイ・ゲーム」、「コンドル」、「追いつめられて」等でしょうか。
本作ですが、舞台背景とか雰囲気は冷戦当時を再現しているのですが、物語の時代背景は現代ということが、若干の問題ではなかったかな?と思いました。
時代背景を現代にすることで、この映画では、近代のスパイ・アクション映画になれた観客は、この程度のアクション的な盛り上がりでは納得しないのではないかと思いました。
つまり、スパイ映画とは言うものの、中途半端なアクションと、盛り上がりに欠けるラスト近辺で、映画に期待したカタルシスが得られないのではないか、ということである。
また、地味で非情なスパイ映画を望む観客には、この映画に対して頭脳戦的な期待もあったと思うのですが、頭脳戦としても残念ながら中途半端な印象を受けました。
アクション、頭脳戦ともに中途半端で、最後はラヴ・ストーリーになってしまうメロウなハリウッド・テイストのスパイ映画になってしまい、ちと残念な印象を受けました。
しかし、冷戦当時の再現的にも感じられる舞台背景(勿論時代背景は現代なのですが、選択された舞台やプロップ等の印象から)は、ヨーロッパ映画のテイストで、非常に好感を感じます。
最近では、ジョン・フランケンハイマーの「ローニン」のイメージに近いですかね。
マット・デイモンは残念ながら、ピンで観客を呼べる俳優では無いので、ちょっと厳しいですが、彼はとっても頑張ってます。地味なアクション映画ですが、緊迫感を持って演じ、良い印象を受けました。
あとはラストのブライアン・コックスの公聴会シーンがよかったですね。まるで「カサンドラ・クロス」のラストのような、寒気のするラストでした。
この人、「レッド・ドラゴン」の一回目の映画化「刑事グラハム/凍りついた欲望」の際ハンニバル・レクターを演じてますね。
クリス・クーパーは、結構良い味だしてますね。
良い悪役を演じてます。
エージェント「教授」を演じるクライヴ・オーウェンもエキセントリックなプロフェッショナルを演じ、強烈な印象を与えています。
ヒロインのフランカ・ポテンテは、ちょっとパニック映画のばかな女性的な役柄が入っていましたが、結構打算的な部分と感情に流される部分があり、面白かったです。
今後も頑張って欲しいですね。
余談ですが、ラドラムの小説の面白さを端的に現したコラムがありますので、ちよっと引用します。
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「真夜中の電話」
Dr.アンソニー・ショー
1982 リーダーズ・ダイジェスト誌のコラムより
アメリカの東海岸で開かれる医学会に出席したときの話だ。飛行機の中で小説でも読もうと、ロバート・ラドラムの最新作を買い求め、いつものように、見返しに名前と住所を書き込んだ。そしてジャンボ機が離陸するとすぐさま、ラドラムのアクションと策略に満ちた世界に没頭した。
飛行機はやがてフロリダのカンパ国際空港に近づき、着陸態勢に入った。私は着陸するまでに読み切ってしまおうとがんばったが、結局、13ページ残ってしまった。すでに読み終えた522ページを持ち歩くのも面倒なので、残ったページを破り取って上着のポケットに入れ、あとは機内のシート・ポケットに突っ込んだ。そして、ホテルに向かうタクシーの中で、胸躍る最終章を夢中になって読みついだ。読み終えたときには、思わずほっとため息をついたものだ。
さて、ロサンゼルスの自宅に戻った直後のことだ。一息入れていると電話がなった。時刻は午前1時。「ショー先生ですね?」と緊迫した男の声が耳に飛び込んできた。「こんな時間にお電話して申し訳ありません。今、ニューオーリンズは午前3時です。でも、ぜひ教えていただきたいんですよ。あの本の結末がどうなったのか!」
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これだよ!これ!
「ボーン アイデンティティー」
"THE BOURNE IDENEIEY"
2002年/アメリカ作品/ユニヴァーサル映画提供/UIP配給/シネマスコープ/7巻:3.260m:10,704f/DTS、ドルビーデジタル、SDDS:SR/1時間59分/翻訳:戸田奈津子
監督:ダグ・リーマン
出演:マット・デイモン、フランカ・ポテンテ、クリス・クーパー、クライヴ・オーウェン、ブライアン・コックス、アドウェール・アキノエ=アグバエ
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