「人狼 JIN−ROH」

2003年1月30日
CATVの押井守特集で放映された「人狼 JIN−ROH」を観た

一言で言うと、非常に面白かった。

いきなり余談であるが、わたし的には、神話や伝承、童話や児童文学をモチーフにした所謂普遍的な物語が好きである。
勿論そんな普遍的な物語は、人種、民族、宗教を超え、様々な人々に普遍的に受け入れられる物語である訳だから、非常に多くの人々にアピールするのは当然のことである。

例えば、ジョージ・ルーカスが「スター・ウォーズ」を製作する際、世界中の神話や伝承を調べ、普遍的な物語を目指したのは、マーケティング的に非常に正しいアプローチだったと言えると思います。
ですから「スター・ウォーズ」は、物語は古典的ですが、表現方法は新しい作品として、世界中の人達に圧倒的に受け入れられた訳です。

さて、本作「人狼 JIN−ROH」は、「赤頭巾」をモチーフとしています。
わたしは残念ながら、「赤頭巾」の原典を読んだ事はありませんので、本作に出てくる「赤頭巾」の物語が原典なのかどうか(原作に忠実なのかどうか)はわかりませんが、この「赤頭巾」の物語は非常に神話的で普遍的な物語として描写されています。

そしてこの「人狼 JIN−ROH」の物語は、その本編中の「赤頭巾」の物語と共に進行し、ある意味予定調和的な、逃れられない結末に導かれています。

ですから、この物語の結末はハッピー・エンドかどうか、という議論よりも、予定調和的で、そのエンディング以外には、考えられない結末のつけ方としての、ある意味美しいエンディングとなっている訳です。

しかしながら、この作品は「赤頭巾」の物語が、伏線になっているということではなく、完全な道しるべとなっているため、伏線のわかりづらさを求め、始終暗喩やメタファーを探し続ける観客にとっては、わかりやすすぎて、評価は下がるのではないかと思われます。
かく言う、わたし的にももう少しスマートで、もう少し隠れた伏線としての「赤頭巾」の物語で本作を構成して欲しかったような気がします。

あと、特筆すべき点はアニメーションの作画でしょう。
ある意味、従来のディフォルメからはじまるアニメーションという手法を、真っ向から否定し、登場人物をリアリティを込めて徹底的に作画しています。
例えば、登場人物の衣類をまるで衣類のように描いています。それが特に印象的に思えたのは、主人公伏一貴が穿いているチノパンがチノパンとして存在しているかのように、立体的に描かれているのだ。
また、人物の動きにも非常にリアリティがあり、爆風に煽られる機動隊隊員が手足を振るのも凄い作画だと思った。こんな描写が目白押しなのである。

ところで、大昔、押井守監督の実写映画「赤い眼鏡」という作品があったが、これと関係あるのかな?

私見ですが、押井守関連作品では「アヴァロン」とこの「人狼 JIN−ROH」が双璧ですかね。

「人狼 JIN−ROH」
1999年/日本 
制作:Production I.G
製作:バンダイビジュアル/ING
配給:バンダイビジュアル/メディアボックス
監督:沖浦啓之
原作:押井守
脚本:押井守
声の出演:藤木義勝/伏 一貴、武藤寿美/雨宮 圭、木下浩之/辺見 敦、廣田行生/室戸文明、吉田幸紘/半田 元、堀部隆一/巽 志郎、仙台エリ/阿川七生、中川謙二/安仁屋 勲、大木民夫/自治警幹部、坂口芳貞/塔部八郎

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