「あの頃ペニー・レインと」
2002年12月26日 映画「あの頃ペニー・レインと」をたまたまDVDで観ました。
で、劇場で観た際の感想を公開しますのだ。
1973年、ローリング・ストーン誌に原稿を依頼された、わずか15歳の少年ウィリアム・ミラーは、上り調子("ALMOST FAMOUS")のロックバンド(スティルウォーター)の全米ツアーに同行、密着取材を試みる。ショービジネスという大人の世界を垣間見る少年。その過程で出会うペニー・レインという名の少女と、ロックバンドのメンバーとの交流、そして少年の家族を素晴らしい音楽達と共におくる傑作。
文字通り音楽好きにはたまらない映画である。バンドとジャーナリスト(?)を描いた映画にはアラン・パーカーの「ザ・コミットメンツ」という素晴らしい映画があるし、バンドを描くという点では、オリバー・ストーンの「ザ・ドアーズ」があるが、この映画は、「ザ・コミットメンツ」や「ザ・ドアーズ」と比較して全く遜色が無いどころか、それらを凌駕する大変素晴らしい作品に仕上がっている。ところで、この映画の監督であるキャメロン・クロウであるが、実は元音楽ジャーナリストとしての経歴があり、この物語はなんと彼の自伝的な物語なのである。
そして、かつて少年少女だった人たちにとっても、これはたまらない映画であろう。「スタンド・バイ・ミー」によって、自分の少年時代を追体験することが出来た人々は、この映画で再び、かつてのロック少年だった自分に、社会に反抗していた自分に、ちょっと背伸びをしていた自分に、出会うことが出来るのだ。ノスタルジックに過ぎるきらいはあるが、この映画は楽しかったあの頃を追体験させてくれることは間違いないだろう。
保守的な家庭に生まれたウィリアムの姉が残した、ベッドの下の「自由」。そして、その「自由」のおかげで人生の第一歩を踏み出すことになる少年。この辺の描写は「リトル・ヴォイス」の父親が残した数多くのレコードに通ずるのかも知れない。そして、姉が残したこれらの「自由」は、少年に計り知れない影響を与えたのは言うまでも無い。何しろ、彼は音楽ジャーナリストにまでなってしまうのだから。姉が選び、そして少年に残した「自由」は、最良の教師であったのだろう。当時11歳の少年に与えるには、早すぎ、贅沢すぎる珠玉のレコードの数々。学校で2年飛び級をした少年は、音楽そして社会において一体いくつ飛び級をしたのであろうか。「自由」を求め、飛び立った姉の目は確かなものであったようである。
この映画の印象は、なんと言っても、ケイト・ハドソンの存在感であろう。観客の視線と心を鷲づかみにする彼女の手腕は、母親であるゴールディ・ホーン直伝なのであろう。彼女は主人公と恋愛関係にはならず、それでいて多大な影響を与える少女を好演している。今後の要チェックリスト行きである。「ウェルカム・バック・なんとか・カーマイクル」のウィノナ・ライダーのような印象を受けた。
素晴らしいシーンは沢山あるが、バスの中のエルトン・ジョンの"Tiny Dancer"の合唱は素晴らしい。若干ベタではあるが、音楽が持つ強大な力を感じさせる良いシーンである。勿論「ザ・コミットメンツ」の地下鉄の中の"Deatination Anywhere"の大合唱と通ずるものがあるのは、言うまでも無い。
また、この映画は「ザ・ドアーズ」で描かれたような、アルコールとドラッグとセックスに塗れたロック・スタァを描きながらも、明るくさわやかで退廃的で刹那的なイメージはほとんど皆無であり、1970年代当時、瀕死の状態にあったロックの輝きを、あますところなく優しく愛情を持って描いている。この映画は、監督の正に個人的な映画なのであろう。
「あの頃ペニー・レインと」
"ALMOST FAMOUS"
監督:キャメロン・クロウ
出演:ビリー・クラダップ、ケイト・ハドソン、フランシス・マクドーマンド、パトリック・フュジット、フィリップ・シーモア・ホフマン、ジェイソン・リー、ファイルーザ・バルク、アンナ・パキン
2000 / アメリカ / コロンビア映画 / ドリーム・ワークス・ピクチャーズ / ビニール・フィルムズ
で、劇場で観た際の感想を公開しますのだ。
1973年、ローリング・ストーン誌に原稿を依頼された、わずか15歳の少年ウィリアム・ミラーは、上り調子("ALMOST FAMOUS")のロックバンド(スティルウォーター)の全米ツアーに同行、密着取材を試みる。ショービジネスという大人の世界を垣間見る少年。その過程で出会うペニー・レインという名の少女と、ロックバンドのメンバーとの交流、そして少年の家族を素晴らしい音楽達と共におくる傑作。
文字通り音楽好きにはたまらない映画である。バンドとジャーナリスト(?)を描いた映画にはアラン・パーカーの「ザ・コミットメンツ」という素晴らしい映画があるし、バンドを描くという点では、オリバー・ストーンの「ザ・ドアーズ」があるが、この映画は、「ザ・コミットメンツ」や「ザ・ドアーズ」と比較して全く遜色が無いどころか、それらを凌駕する大変素晴らしい作品に仕上がっている。ところで、この映画の監督であるキャメロン・クロウであるが、実は元音楽ジャーナリストとしての経歴があり、この物語はなんと彼の自伝的な物語なのである。
そして、かつて少年少女だった人たちにとっても、これはたまらない映画であろう。「スタンド・バイ・ミー」によって、自分の少年時代を追体験することが出来た人々は、この映画で再び、かつてのロック少年だった自分に、社会に反抗していた自分に、ちょっと背伸びをしていた自分に、出会うことが出来るのだ。ノスタルジックに過ぎるきらいはあるが、この映画は楽しかったあの頃を追体験させてくれることは間違いないだろう。
保守的な家庭に生まれたウィリアムの姉が残した、ベッドの下の「自由」。そして、その「自由」のおかげで人生の第一歩を踏み出すことになる少年。この辺の描写は「リトル・ヴォイス」の父親が残した数多くのレコードに通ずるのかも知れない。そして、姉が残したこれらの「自由」は、少年に計り知れない影響を与えたのは言うまでも無い。何しろ、彼は音楽ジャーナリストにまでなってしまうのだから。姉が選び、そして少年に残した「自由」は、最良の教師であったのだろう。当時11歳の少年に与えるには、早すぎ、贅沢すぎる珠玉のレコードの数々。学校で2年飛び級をした少年は、音楽そして社会において一体いくつ飛び級をしたのであろうか。「自由」を求め、飛び立った姉の目は確かなものであったようである。
この映画の印象は、なんと言っても、ケイト・ハドソンの存在感であろう。観客の視線と心を鷲づかみにする彼女の手腕は、母親であるゴールディ・ホーン直伝なのであろう。彼女は主人公と恋愛関係にはならず、それでいて多大な影響を与える少女を好演している。今後の要チェックリスト行きである。「ウェルカム・バック・なんとか・カーマイクル」のウィノナ・ライダーのような印象を受けた。
素晴らしいシーンは沢山あるが、バスの中のエルトン・ジョンの"Tiny Dancer"の合唱は素晴らしい。若干ベタではあるが、音楽が持つ強大な力を感じさせる良いシーンである。勿論「ザ・コミットメンツ」の地下鉄の中の"Deatination Anywhere"の大合唱と通ずるものがあるのは、言うまでも無い。
また、この映画は「ザ・ドアーズ」で描かれたような、アルコールとドラッグとセックスに塗れたロック・スタァを描きながらも、明るくさわやかで退廃的で刹那的なイメージはほとんど皆無であり、1970年代当時、瀕死の状態にあったロックの輝きを、あますところなく優しく愛情を持って描いている。この映画は、監督の正に個人的な映画なのであろう。
「あの頃ペニー・レインと」
"ALMOST FAMOUS"
監督:キャメロン・クロウ
出演:ビリー・クラダップ、ケイト・ハドソン、フランシス・マクドーマンド、パトリック・フュジット、フィリップ・シーモア・ホフマン、ジェイソン・リー、ファイルーザ・バルク、アンナ・パキン
2000 / アメリカ / コロンビア映画 / ドリーム・ワークス・ピクチャーズ / ビニール・フィルムズ
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