スティーヴン・スピルバーグの新作「マイノリティー・リポート」を観た。
といっても、先日お話したように、実際に観たのは12月15日、マリオンの11F「日劇1」(旧「日本劇場」)の向かい側にある「朝日ホール」で行なわれた特別上映会でであった。

この映画「マイノリティー・リポート」は10年以上も前から、ヤン・デ・ボンが暖めていた企画である。
ヤン・デ・ボンはご存知のようにポール・バーホーベンとオランダ時代からコンビを組んでいた撮影監督で、数々のバーホーベンの作品をはじめとして様々な名作を撮影してきたのであるが、キアヌ・リーブス主演の「スピード」で監督デビュー、一躍時代の寵児となったが、その後の監督作品はふるわず、自らの企画「マイノリティー・リポート」の監督を希望していたのだが、制作会社からはOKが出ず制作に退き、スピルバーグに監督を譲った形の作品となっている。

またこの「マイノリティー・リポート」は、スタンリー・キューブリックの遺作となった「アイズ ワイド シャット」の制作遅延により「MI:2」が遅れ「バニラ・スカイ」が遅れ、この「マイノリティー・リポート」も遅れに遅れた、といういわくつきの映画なのである。

物語は、2054年ワシントンD.C.、プレコグと呼ばれる予知能力者が予知した未来の犯罪者を捕らえる犯罪予防局(プレ・クライム)の主任捜査官ジョン・アンダートンに、36時間以内の殺人の嫌疑がかかってしまった・・・・

さて、結果的に私見ではあるが「マイノリティー・リポート」はダメ映画であった。
まず前提としてこの映画は「マイノリティー・リポート」である必要が全くないのである。
例えば「マイノリティ・レポート」は、1950年代の警察の腐敗を題材として描いた映画としてもなんら問題がないのである。
結局はこの映画は目撃者を巡る犯罪者と捜査官のやりとりを中心にすえたサスペンス映画に過ぎないのである。

スピルバーグもその辺はわかっているらしく、前半部分は2054年のいわば近未来のヴイジュアルを圧倒的な筆致で描写し、観客の目をくらまし、後半部分はほとんど1950年代から現代が舞台といっても良いような舞台を中心としたクライム・サスペンス映画となっています。
ですから、映画の売り方の手法としてはSFXの圧倒的なイメージで客を呼び、結局はクライム・サスペンスで客を帰す映画となっているのです。

また音楽についてですが、「ジョーズ」以降のジョン・ウィリアムズとのコラボレーションにも前作の「A.I.」でもそうであったが、かげりが出てきているようである。
ジョージ・ルーカスとのコラボレーションである「スター・ウォーズ」シリーズを脇に置くと、最近のウィリアムズの作品で良いものはスピルバーグとのコンビ以外の作品に多いような気がする。たとえば「ハリー・ポッター」シリーズとか「パトリオット」とか。
スピルバーグのコンビとしては、「プライベート・ライアン」にしろ「A.I.」にしろ「マイノリティー・リポート」にしろ音楽に明確なテーマ性が感じられず、あまり記憶にも残らない。
「A.I.」は記憶に残るけどね。

「マイノリティー・リポート」を観て、物語が面白いなと感じた人たちには是非「L.A.コンフィデンシャル」を観て欲しいものだ。

「マイノリティー・リポート」
"MINORITY REPORT"
20世紀FOX映画/ドリームワークス・ピクチャーズ
2002年アメリカ作品
カラー/パナビジョン/スコープサイズ(1:2.35)/8巻
ドルビーSR・SRD・EX、DTS、SDDS
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:トム・クルーズ、コリン・ファレル、サマンサ・モートン、マックス・フォン・シドー、キャサリン・モリス、ロイス・スミス、ピーター・ストーメア、ティム・ブレイク・ネルソン
上映時間:2時間25分
日本語字幕:戸田奈津子

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tkr

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