「世界の合言葉は森」
2002年11月30日 読書アーシュラ・K・ル・グィンの「世界の合言葉は森」を読了した。
とある掲示板で、宮崎駿がある雑誌で「指輪物語」を批判した件について、「指輪物語」ファンと宮崎駿の信奉者が討論してまして、その中で、ル・グィンの「ゲド戦記」についての話もありまして、ちょっとル・グィンの作品を読んでみようと思い「世界の合言葉は森」を手にとった。
この書籍にはル・グィンの中編2作品が収録されており、それらは表題作である「世界の合言葉は森(小尾芙佐訳)」と「アオサギの眼(小池美佐子訳)」である。
「世界の合言葉は森」
物語の舞台はとある植民星。人類はこの惑星を勝手に植民星とし、土着の種族を奴隷として使役していた。
ある事件をきっかけに、その土着の種族は人類に叛乱を企て、結果的にその惑星を制圧し、人類がその惑星を去るまでを描いている。
その種族は所謂無抵抗主義の種族で、人類にいいようにこき使われている。彼等にとって、それだからといって、特に問題はないのである。
また、彼等は現実の世界と夢の世界を同程度の確かさで生きているのである。
人類の多くはタカ派的な存在として描かれており、また女性の扱いは植民星の人類の繁殖用の女性という描写によるもので、物語の中の人類は完全な男性社会となっている。この辺が、女性作家でフェミニストであるル・グィンの作品として非常に興味深い。
女性の存在は人類の女性というより、土着の種族の女性の方の描写に力を入れているようである。
物語の主人公はその種族の女性をレイプし、その夫と乱闘を演じ、それが引き金となり、人類にとって最悪のカタストロフィーを招いてしまうのだ。
物語のモチーフとしては、南北戦争時代の黒人と白人の関係をモチーフとしているのかも知れない。
「アオサギの眼」
物語の舞台はとある流刑星。
当初、流刑星として開発された惑星に、人類は移住を始める事となった。
その惑星で数世代の時代が流れ、かつてこの惑星が流刑星であり、自分達は犯罪者の子孫かあるいは、その後の入植者達である記憶が薄れてきている中、二つの街の間で諍いが起きる。一方は新天地を目指して街を出ることを望み、他方はそれを諌めることとなり、その対立は日増しに強力になり、軍隊(?)の出動を辞さないようなところまで発展してしまう。しかしながら新天地を求める街の代表者のポリシーは無抵抗主義なのである。
無抵抗を貫き、主義思想のためなら命を落とす事をいとわず、種として、同じ思想を持つ集団として理想を持ちその成功を目指す生き方が潔く、美しく、そして共感を呼ぶ。
そして新天地を目指す集団の指導者が撲殺されることによって事態は急展開を見せるのである。
この物語では、ある女性の登場人物は、箱入り状態から、脱却し自ら考え自ら行動することを学ぶ。ある種その女性の成長物語ともとらえられる作品に仕上がっている。
この二編の中編はオーソン・スコット・カードの「エンダー」シリーズに多分の影響を与えているようである。アンシプルしかり、植物の生態しかりである。
これらの物語の舞台はSFテイストであるが、実際のところは、人類の種としての生き方を考えさせられる、ある種哲学的な物語なのかもしれないし、また、思想や宗教のために死を厭わない程の理想を掲げている人たちについて考えさせられてしまう。という一面をも持っている作品である。
とある掲示板で、宮崎駿がある雑誌で「指輪物語」を批判した件について、「指輪物語」ファンと宮崎駿の信奉者が討論してまして、その中で、ル・グィンの「ゲド戦記」についての話もありまして、ちょっとル・グィンの作品を読んでみようと思い「世界の合言葉は森」を手にとった。
この書籍にはル・グィンの中編2作品が収録されており、それらは表題作である「世界の合言葉は森(小尾芙佐訳)」と「アオサギの眼(小池美佐子訳)」である。
「世界の合言葉は森」
物語の舞台はとある植民星。人類はこの惑星を勝手に植民星とし、土着の種族を奴隷として使役していた。
ある事件をきっかけに、その土着の種族は人類に叛乱を企て、結果的にその惑星を制圧し、人類がその惑星を去るまでを描いている。
その種族は所謂無抵抗主義の種族で、人類にいいようにこき使われている。彼等にとって、それだからといって、特に問題はないのである。
また、彼等は現実の世界と夢の世界を同程度の確かさで生きているのである。
人類の多くはタカ派的な存在として描かれており、また女性の扱いは植民星の人類の繁殖用の女性という描写によるもので、物語の中の人類は完全な男性社会となっている。この辺が、女性作家でフェミニストであるル・グィンの作品として非常に興味深い。
女性の存在は人類の女性というより、土着の種族の女性の方の描写に力を入れているようである。
物語の主人公はその種族の女性をレイプし、その夫と乱闘を演じ、それが引き金となり、人類にとって最悪のカタストロフィーを招いてしまうのだ。
物語のモチーフとしては、南北戦争時代の黒人と白人の関係をモチーフとしているのかも知れない。
「アオサギの眼」
物語の舞台はとある流刑星。
当初、流刑星として開発された惑星に、人類は移住を始める事となった。
その惑星で数世代の時代が流れ、かつてこの惑星が流刑星であり、自分達は犯罪者の子孫かあるいは、その後の入植者達である記憶が薄れてきている中、二つの街の間で諍いが起きる。一方は新天地を目指して街を出ることを望み、他方はそれを諌めることとなり、その対立は日増しに強力になり、軍隊(?)の出動を辞さないようなところまで発展してしまう。しかしながら新天地を求める街の代表者のポリシーは無抵抗主義なのである。
無抵抗を貫き、主義思想のためなら命を落とす事をいとわず、種として、同じ思想を持つ集団として理想を持ちその成功を目指す生き方が潔く、美しく、そして共感を呼ぶ。
そして新天地を目指す集団の指導者が撲殺されることによって事態は急展開を見せるのである。
この物語では、ある女性の登場人物は、箱入り状態から、脱却し自ら考え自ら行動することを学ぶ。ある種その女性の成長物語ともとらえられる作品に仕上がっている。
この二編の中編はオーソン・スコット・カードの「エンダー」シリーズに多分の影響を与えているようである。アンシプルしかり、植物の生態しかりである。
これらの物語の舞台はSFテイストであるが、実際のところは、人類の種としての生き方を考えさせられる、ある種哲学的な物語なのかもしれないし、また、思想や宗教のために死を厭わない程の理想を掲げている人たちについて考えさせられてしまう。という一面をも持っている作品である。
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